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85 聞いてない

 最近の私は平和に暮らしている。結婚の準備をしつつ仕事をこなしている。


 結婚後はデーヴィ様と新居に住むことになった。てっきり私は公爵家に住むとばかり思っていたのに「両親と弟が邪魔」と断交拒否し、爵位を継ぐまでは本家へ住まないと言って聞かなかった。


 お義父様と話し合い、本家の隣の空いている土地に私達の新居を急ピッチで建てることになったのだ。「お金を遣わないでください」と言ったが「君のためではない、俺の我儘だ。金は死ぬほど稼いでるから気にしないで」と言いくるめられた。


 ちなみに結婚休暇は副団長とかなり揉めて喧嘩したらしいが、なんとか一週間もぎ取れたらしい。最初彼は二週間休ませろと言い、ニコラ様に本気でブチ切れられたと笑っていた。


 いや、笑い事ではない。副団長、すみません。


♢♢♢


「みなさんお昼ですよ」


 私の声にみんなが休憩室に集まってくる。私は話しながらご飯の給仕をしている。


「ミシェルちゃん、結婚まであと一ヶ月だね」


「えへへ、そうなんです」


「ついに人妻になるのかぁ……感慨深い」

「団長が羨ましい」

「ミシェルちゃんのドレス姿可愛いだろうね」

「色々あったけど良かったね」


 みんな私達の結婚を楽しみにしてくれているのがわかって嬉しくなる。


「式来てくださいね。後で披露宴もあるので、美味しいご飯やお酒も沢山用意してますから」


 隊員達からは「やったー!」という声が口々に聞こえる。


「でもヘンリー残念だな」

「ああ、もう少し出立日が遅ければミシェルちゃんの晴れ姿見れたのに」

「隊長、本当に北へ行っちゃうんですかね?」

「そりゃそうだ。今日もその打ち合わせだろ?」


 え?どういうこと……ヘンリーさんが北へ行く?


「あの……何の話ですか?ヘンリーさん何処かへ行っちゃうんですか?」


 私のその言葉にみんなは驚いている。


「え?ミシェルちゃん……何も知らないのか?」

「アイツなんで言ってないんだよ!団長からも聞いてない?」

「ヘンリーは一週間後に北の要塞に行くんだ。行ったら数年は帰ってこれない任務だよ」


 私はその事実を知って頭がぐらぐらする。結婚式のことを聞いた時返事をしてくれなかったのは……いないことがわかっていたから?あえて私に言わずに行くつもりだったの?


「そ、そんなこと一言も聞いてません。しかも一週間後なんてすぐ……」


 私は涙が溢れそうになるのを必死に堪える。


「悪気はないさ……ミシェルちゃんには言えなかったんだろ。話したら行く気持ちがぶれそうで。あいつの気持ちもわかってやって」


 隊員達から、ヘンリーの出発は一週間後だが準備があるためもうほとんど騎士団には来ないと教えてもらった。もうチャンスが少ないからあいつが来た時にちゃんとお別れするんだよ、と慰められた。

 出立の二日前に送別会をするから、その日は必ず来ると言われた。


 私は、デーヴィ様の執務室に走った。ノックして返事を聞いてすぐに扉を開ける。


「ミミ!今日は早いな」


 彼は呑気に笑顔で私を出迎えてくれるが、私は怒っている。


「ヘンリーさんが北の要塞に行くこと、なんで私に黙っていたんですか」


 私は彼にぐいっと迫り、怒りを露わにする。


「ど、どこで知ったんだ?」


「みなさんが休憩室で話されていました。私が知らなかったことに皆さん驚かれてましたよ!」


「……悪かった。ただ、ヘンリーが君に黙っていて欲しいと。あいつの気持ちわかるだろ?」


「わかりません!貴方は当日まで言わないつもりだったんでしょ?酷い」


 私はそれだけ言って執務室を飛び出した。

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