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【デーヴィド視点】騎士のお姫様

 ウェディングドレスの相談の日なのに、俺は仕事だ。日を変更したかったが、ミミも楽しみにしていたしデザイナーも人気なので別日で調整がつかなかった。くそ……


 帰ってくるとミミが客間で母上と話していた。ドレスが無事決まったようで、とても嬉しそうにしていた。


「早くミミと結婚したいな」


 これは俺の本当の気持ちだ。一日でも早く彼女の夫になりたい。


 そんな時に、フェリクスがだらしない格好で姿を現す。こいつは全くどうしようもないやつだな。


 しかも、ミミの指からお菓子を食べやがった!こいつわざと!!俺だってまだ食べさせてもらったことないのに。それにドレスの試着も覗いていたようで……許せない。


 嫉妬心でまた心がざわざわしてくるが、彼女の素直さを目の当たりにして自分の醜い心がすっと落ち着いてくる。

 いいさ……誰が彼女を好きになろうが、彼女が好きなのは俺なのだから。


 そして、初めて彼女を自室に案内した。昨日部屋を片付けに来たからどこを見られても恥ずかしくないはず――そう思っていたのに、あれを隠すのをすっかり忘れていた。


「……ご、ごめん」


 俺は彼女の肖像画を急いで隠した。十五歳の時の彼女を許可もなく描かせて絵を大事に持っているなど、気持ち悪いと思われないだろうかと冷や汗をかく。


「その絵本、私が好きだったものです」


 そう、しかもこの本は初めて会った時に八歳の君が騎士の絵本を読んだと言っていたのを思い出して買ったのだ。子ども向けの騎士が出てくる本などほとんどないため、おそらく一番有名なこれだろうと目星をつけて選んだ。


「君と初めて会った時、絵本の騎士が格好良かったと言ってたからどんなのかなと思って」


 あの時のミミが憧れた騎士になれたら、胸を張って君の前に立てるかと思ったんだ。


 本の騎士は、旅をしながら村の民を救うため魔物を倒していく。そしてたくさんの人を救い、みんなから感謝されるが力が強くなりすぎてみんなから一目置かれるようになり、心はどんどん孤独になって心を閉ざしていく。

 その騎士の心を癒し助けるのが、美しいお姫様。英雄の彼を一人の普通の男性として接し、笑ったり怒ったり、泣いたりしながら毎日楽しく暮らしていく。その暮らしの中で、彼は孤独ではなくなり最後は彼女にプロポーズし二人は結ばれる。そして彼はまた騎士として活躍してみんなを守りながら、彼女と幸せに暮らしました。


 と、いうものだ。


「私、小さい頃この本のお姫様になりたかったんです」


 ふふふ、と彼女は少し恥ずかしそうに笑った。


「もうなってるよ。英雄騎士の心を癒すのは、君しかしない。ね、俺だけのお姫様?」


「恥ずかしいわ。でもまさか、子どもの頃の夢が叶うなんて思いませんでした。ありがとうございます」


 彼女は照れつつも嬉しそうにしてくれている。


「肖像画も……とても綺麗に描いてくださっていますね」


 肖像画のことはスルーしてくれないかなと祈っていたけどやっぱり無理か。


「俺……三年前にミミに一目惚れしたけど、なかなか会えないから秘密で絵の上手い友人に描いてもらったんだ。勝手にごめん」


「いえ、ご友人は絵お上手ですね」


「そうだな」


 ん?特に絵を持っていたことは何とも思っていないのかな。


「あの、好きな人の絵を持つのは普通のことですか?」


 彼女の真っ直ぐな質問が俺の心をえぐる。


「え……っと、ん――……普通ではないかも。君の許可なく勝手に描くのは……気持ち悪かったよね?すまない」


「いえ、気持ち悪くはないですが……いつ描かれていたのかと。あの、これ一枚だけですか?」


「全部で四枚……毎年一枚ずつある」


 俺は観念して全て白状した。

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