83 ウェディングドレス選び
今日はウェディングドレスのデザイン相談と採寸のため、メクレンブルグ家に来ている。
デーヴィ様はこの国で一番有名なドレスショップのデザイナーさんを呼んでくださっていた。私なんかに勿体ない限りだ。
「まあ、ミシェル様お美しい。これはドレスの作り甲斐がありますわね」
「そうなの!綺麗で可愛いでしょう?費用はいくらかけてもかまわないから、娘に似合う最高のドレスにしてちょうだい」
お義母のドレスにかける情熱がすごい。娘ができたら好きに着飾りたかったそうなのだ。
「シルエットはどうする?Aライン?でもプリンセスラインも可愛いわよね」
「迷いますね、お義母さまはどれになさったのですか?」
「私はマーメイドにしたわ。この形は貴族令嬢には珍しいけど、私の魅力が最大に活かせると思ったから」
確かに、マーメイドラインならメリハリある美しいボディーのお義母様の素晴らしさが映えそうだ。
「きっとお似合いでしたでしょうね。でも、私にマーメイドは似合わなさそうなので……やはりAラインにします」
「背が高いからマーメイドも似合うわよ!でもね……たぶんデーヴィドが体のラインが出すぎとか言って文句言ってくると思うのよね」
「もちろんオーダーメイドで作りますが、雰囲気を感じていただくためにサンプルご用意しておりますよ。形を決めるために何着か着てみてください」
そう言っていただけたので、試しにマーメイドラインも着てみる。
「うん!大人っぽくて似合ってるわ」
鏡で見ると……背が高いので見栄えはしているが、胸も大きめに開いておりお尻のラインも強調されて恥ずかしい。
「で、でも……ラインが出過ぎて、やっぱり私には少し恥ずかしいです」
「うーん、あるものを出し惜しみするのももったいないけど……若いからこそ着れる可愛いデザインもあるものね。次の着てみましょう!」
その時に扉のノック音がし、お母様が返事をした。
「ただいま帰りました。シェルちゃんが来てるって聞いたから挨拶に……」
フェリクス様は私を見て大きく目を見開いた。
「あら、フェリクス帰り早いわね?」
「ごめん。まだドレスを合わせてるとは思わず入ってしまった。昨日仕事で徹夜だったから、今日は早上がりなんだよ」
フェリクス様は視線を下げ、なるべくこちらを見ないようにしている。
「そうなのね。あ!ねぇ?男目線の意見も聞かせなさいよ。シェルちゃんマーメイドラインも素敵だと思わない?」
私はお義母様にぐいっとフェリクス様の前に押し出される。何故か顔が赤い彼とバチッと目が合い、ドレスをじっと見つめられる。
「こんなセクシーなドレスシェルちゃんには似合わないよ。母上、自分の趣味じゃなくてもっと肌が隠れて清楚で可愛らしいのをすすめなよ!兄上だってきっとそう言うから!」
じゃあ、俺は寝ると怒り気味にバンと扉を閉めて出て行った。
「はあ……つまり、私にはセクシーさが足りないと言うことですね」
自分でもわかってはいたが、フェリクス様の言葉にショックを受け肩を落とす。
その言葉にお義母様も、ドレスショップやデザイナーさんもくすくすと笑っている。
「今のはミシェルちゃんが素敵で、息子が照れただけだから気にしないで」
うふふ、と笑いさあ続きをしましょうとドレス選びを再開した。