表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/139

79 シャルル殿下②

「先程はありがとうございました。シャルル殿下は本当はとても賢い方なのですが、その……少々周囲が甘やかしておりまして」


 殿下の従者の方が私にこそっとお礼を言われる。


「不敬なことを申し上げました。こんなに可愛いのですもの、甘やかしたくもなりますわ」


 私は軽く頭を下げ部屋を後にしようとした。


「ミシェル、次はいつ会えるの?」


 殿下は私の服をぎゅっと掴み、首を傾げて聞いてくる。


「殿下、女性をいきなり掴んではいけませんよ。私は今日は代わりに王宮に来ただけなので、もうここには来ません」


「えっ……」


 殿下は哀しそうな顔をするが、本当のことなので嘘をつくわけにはいかない。


「じゃあ、ミシェル僕のお嫁さんになって!お父様とお母様はずっと一緒に住んでるもの。これなら僕と一緒にいれるでしょ?」


 まさかのプロポーズに驚いた。子どもの話だと「結婚しましょう」と頷くべきなのかもしれないが、聡明な殿下にはしっかり事実を伝えた方が良いだろう。


「殿下、そのように仰っていただいてありがとうございます。でも、私は婚約者がおりましてもうすぐ結婚するのです」


「嫌だ!僕ミシェルのことが好きになったもん」


「殿下……」


 私は殿下の目線までしゃがんで、もう一度ちゃんと話そうとすると、頬にちゅーっとキスをされた。


「ミシェルは僕の!」


 そう言って殿下は部屋を出て行った……うーん、スマートなキスで小さくてもちゃんと王子だな、と変に感心してしまう。可愛いけどこれは問題な気がする。従者の方を見ると「困りましたね」と苦笑いをしていた。


♢♢♢


「ミミ、迎えに来た」


 デーヴィ様が怖い顔でお父様の執務室に現れた。


「王宮までどうされたのですか?」


「陛下に呼び出されたんだ。ミミを王宮付きの治癒士(ヒーラー)にする気はないかと」


「ええ?でも王宮には父がいますし、二人は必要ないかと」


「だろ?すぐに断った。しかし、シャルル殿下の希望だと言われて……意味がわからない」


 ムーっと不機嫌な顔を隠さず、デーヴィ様はイライラしている。おお、さすがは殿下。王族は仕事が早いですね……


「あの実は、今日殿下にプロポーズされまして」


「ど、どういうことなんだ?」


「殿下が我儘を言っていらっしゃったので、嗜めたのです。じゃあ、なぜか好かれまして」


「知ってはいたが……君は相変わらずの人たらしだな」


 彼ははぁーっとため息をつき、頭を抱えている。


「まあ、殿下は幼い。おそらく、姉を慕うような気持ちだろう」


「ええ、そう思いますわ」


 私達はこの考えが甘かったことを後々知ることになる。王族というものはしつこい……その上権力もあるので、断りにくいという大問題があることを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ