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77 図書館

「ミシェルちゃん、ちゃんと団長と仲直りしたんだね。あの人のご機嫌な顔見てすぐわかったよ。良かったね」


「はい、みんなにご迷惑をおかけしてすみません」


 ヘンリーさんは「ミミって呼ばれてるんだ、可愛いね」と小声で揶揄ってくるので焦ってしまう。


「なっ……なぜその愛称を?」


「団長が普通にそう呼んでたけど?」


 私は恥ずかしさで言葉が出なくなる。


「はは、いいじゃん?結婚するんだし愛称で呼ぶなんて普通でしょ。恥ずかしがらずに許してあげなよ」


「はい……」


 納得はしていないが、とりあえず頷く。


「とっても綺麗だろうなぁ、ミシェルちゃんのウェディングドレス姿」


 ヘンリーさんは目を細めて遠い場所を眺めながらそう呟いた。


「あの、お嫌でなければ結婚式参加してくださいね。ヘンリーさんは私にとって大事な方ですから」


 振った相手に言うのはどうかと一瞬悩んだが、彼に来て欲しいのは本当なので素直な気持ちを伝えた。


「……ありがとう」


 彼は切なげに私から視線を外した後、ゆっくり微笑み私の髪の毛をぐしゃぐしゃっと撫でた。


「やめて下さいっ!髪の毛崩れちゃう」


「ふっ、急に意地悪したくなっちゃった」


「酷いっ!」


 くくくっ、ごめんと笑って彼は去って行った。結局ヘンリーさんは結婚式に参加するとも、しないとも言ってはくれなかった……


♢♢♢


 私は、今お父様に呼ばれて王宮に来ている。父は現在は王宮所属の治癒士(ヒーラー)及び、この国の治癒士(ヒーラー)全ての取りまとめをしている。


 午後からお父様が用事で外に出るため、私が王宮待機することになったのだ。陛下にもしものことがあると困るため誰か一人は治癒士(ヒーラー)を置いている。

 お兄様も叔父様も今日は魔物討伐に行っており、私しか残っていないからだ。


「ミシェル、急にすまないね。みんなこんなに仕事が重なるとは。この執務室好きに使っていいから。何もないとは思うが、陛下のこと頼むよ」


 お父様は私の額にキスをして「行ってくる」と部屋を出て行った。


 特に何も起こることはなく、暇なので護衛の方に声をかけ何かあれば呼んでもらうように伝えて王宮の図書室に向かう。


 わぁー……久しぶりにきたけどやっぱりすごい蔵書量だわ。私は本が好きなので嬉しくなり、気になるものをペラペラとめくり読み進めていく。


「シェル……ちゃん?」


 私はその声に顔を上げると、なんとフェリクス様がそこにいらっしゃった。こんな偶然あるのか。


 私は笑顔で手をひらひらと振った。それを見て、彼は何故か頬を染め、手で口を押さえている。

 近付いてきた彼は「何してるんですか?」と聞いてきたため、何故ここにいるのかを簡単に話した。


「フェリクス様は何を?」


「ああ、法務の仕事でわからぬ点がありましたのでいくつか調べ物をしていたのです」


 彼は難しそうな法律書を何冊も持っている。ご実家では軽そうにされていたが、本来の彼はきっと真面目なのだろう。


「そうですか。ひとつひとつ丁寧なお仕事をされていて素晴らしいです」


「そ、そんなこと初めて言われたよ。法務官としては当たり前のことだから」


 彼の方が年上だが、照れているようで可愛らしい。デーヴィ様がお若いとこんな感じなのだろうか?

 おお!そしてこれはもしや……私、お姉さんっぽいのではないだろうか?


 私は、ぽんぽんと彼の頭を撫でて「当たり前のことをきちんとできる人はとても偉いです」と言った。


 彼は大きく目を見開き、驚いた顔をしていた。

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