【デーヴィド視点】長い道のり
今日はミミが俺の実家に来てくれている。この愛称は可愛くて気に入っている。ずっと呼びたくても呼べなかったのでとても嬉しい。
少し緊張した彼女を家にエスコートする。
両親はずっと結婚を拒否してた俺が、ミミと結ばれたと知り大喜びだった。失礼な話だが、ミミが俺に振り向くとは思っておらず、もう結婚しないだろうなと諦めていたらしい。
アルシャ帝国王のこともあったし、それより何よりミミの気持ちが変わらないうちに話を進めたいという俺の下心と我儘から強引に婚約を結んだ。
本当なら事前の挨拶とか、婚約式とか色々してからになるが全部すっ飛ばしたのだ。
まさか、ミミが両親の挨拶前に婚約したことをこんなに気にしているとは思ってもいなかった。両親からしたら、彼女を認めるどころか「こちらからお願いしたい」くらいの存在なのに。
そして、父上に彼女以外と結婚しないと三年間も言い張っていたことをバラされた。は、恥ずかしいし、重くて気持ち悪い男と思われていないか心配だ……
十五歳のミミに一目惚れし、自分の妻は彼女以外いないと思った俺は、すぐに父に直談判しに行った。その当時、すでに結婚適齢期だった俺は釣書が山ほど来ていたがどの女性にも心惹かれなかった。
「お前、何を言っている。成人していない少女を妻にしたいなど……おかしいとは思わないか」
「思いますよ。でも、彼女が良いのです。もちろん、結婚は成人するまで待ちます」
「待ったところで、彼女がお前を好きになるとは限らん」
「とりあえずは政略結婚でも構いません。後で好かれる努力をしますから。誰かの物になる前に、父上からロレーヌ伯爵に話をつけてはいただけませんか?」
「ロバートが溺愛している娘を手放すとでも?あいつは地位や金などには全く興味がない。公爵家だからと喜んで娘を差し出す男ではないし、娘は愛する人と結ばれて欲しいと言っていた」
「わかっていますが、彼女が良いのです」
「だめだ。釣書から近い年齢の好みの女性を選べ。それならば私はいくらでも協力しよう」
「一応、他に目を向ける努力はしてみますが恐らく無理です。彼女と結婚できなければ、俺は一生独身だと思っておいてください!」
このやりとりが約三年続くのだ。父上は俺の本気に心が折れミミが成人した年に、婚約の打診をしてくれたことがあった。
「なんでうちの可愛いミシェルをデーヴィドに嫁がせる必要がある?我が家は伯爵家だが、金持ちでね。私も治癒士としての確固たる地位があるし、政略結婚で得たいものなど何もない。十歳も上のただの第一騎士副団長(当時)にやるメリットがあったら教えて欲しいな?」
と、笑顔で一刀両断された。父上は「私が言った通りだろ?」と言ったが、俺は諦めなかった。
必死に騎士団長まで上がり、出来る仕事は全て引き受け、強い魔物が出たら先頭に立って倒しに行った。そして、その戦果が認められ英雄と言われるようになったのである。
そして、やっとロバート様に認められて「娘が気に入れば」という条件で、あのお見合いをしてもらえたのである……すぐに振られることになるが。
ああ、道のりは長かったが彼女とようやく結婚できる。
だが、油断はできない。そう……フェリクスは俺と感性が似ているため絶対に彼女が好みだと思っていた。だからあえて会わせないでいたのだ。歳が近いため、もしかすると彼女と意気投合して気が付けば弟の嫁になっていたなど、悔やんでも悔やみきれないと思ったから。下手すれば骨肉の争いになる。
例え弟であっても絶対にミミに近付けさせないと心に誓った。
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