10 団長の部屋
いきなり団長の部屋に来いと言われて驚いたが、話をちゃんと聞くとシャワーを貸してくれるという意味だった。宿舎の最上階は団長の部屋しかないらしい。
「風呂に鍵もかかるし、他の隊員の目も気にしなくていい。共用のシャワーより安全だろう」
私は自分の更衣室から新しい隊服だけさっと取って持ってきた。その後すぐにキッチリ整理整頓された団長の部屋に連れて行かれ、これは洗ってあるからとふかふかのタオルを渡される。
「私は部屋で仕事をしているから、終わったら声をかけなさい。こちらのことは気にせず、ゆっくり入ればいいから」
「ありがとうございます」
男性の部屋に入るのは初めてなので、少し緊張してしまう。
ザァーァー……
髪や顔をしっかり洗い、キュッとシャワーの蛇口を閉めた。はあ、今まで血だらけだったからさっぱりした。置いてあったシャンプーとかボディーソープ勝手に使っちゃったけど良かったかな?いいよね。さすが、団長!高級な物を使っていらっしゃるようでとってもいい匂いがした。
「暑い」
お風呂を出て髪の毛を拭く。髪が長いので完全に乾かすのは無理だろう。とりあえず、団長を待たせないためにささっと水気を取るだけにする。
上着を着るのはさすがに暑いため、シャツと隊服のパンツのみ履きタオルを首からかけたまま風呂場を出た。
「シャワーありがとうございました、助かりました」
部屋で書類の処理をしている団長にそっと声をかける。
「ああ、入れた……か」
振り向いた団長は私の姿を見て赤面した。そしてあからさまに目線を外す。どうしてそんな恥ずかしそうな顔をするんだろう。
「な……なぜシャツだけで出てきたんだ?」
「え?シャワー後すぐは暑くて。また汗かいちゃだめだと思いまして」
「そ、そんな濡れた髪では風邪をひくぞ」
「長いからなかなか乾かないんです」
私をじっと眺めた後、団長は無言で後ろにまわりタオルで髪を強めにガシガシとこすりだした。
「ぎゃあ、痛いからやめて下さいっ」
「うるさい、風邪をひくよりはましだろう」
抵抗しても無駄だとわかり、そのまま身を任せ数分されるがままガシガシされていた。だいぶ髪が乾いてきた気がする。
「ミシェルは今後絶対に共用のシャワー室は使わないように。絶対にだ」
しばらく無言でいると、返事は?とまた怒ったような声が聞こえたため、慌てて「わかりました」と返事をした。
最近の団長はすぐ怒るから怖い。出会った頃は、いつも無表情な人だと思っていたのに、最近の彼は表情が豊かだ。