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1 憧れの御令嬢

「キャ――ッ、ミシェル様よ」


 騎士団の訓練場を後にし家に帰ろうとすると、可愛いらしい御令嬢方から黄色い悲鳴が上がる。

 私は笑顔でスッと手を振りその場を去る――


 今の私は騎士団の隊服に身を包み、長い髪を一つに束ねているため男性のような格好だ。


「女性とわかっていてもやっぱり素敵ね」

「目の保養よ。会えて良かったわ」

「ああ、男性より格好良くて困りますわね」


 そんな声が聞こえてくるが、これは日常の光景なのでもう気にも留めなくなってきた。


 私、ミシェル・ド・ロレーヌは伯爵令嬢である。そう……令嬢。私は正真正銘女なのだ。

 しかし、なぜか御令嬢達から大変な人気がある。それは私の能力と見た目からだろう。


私はこの国唯一の女性の治癒士(ヒーラー)。この国では治癒士(ヒーラー)自体も珍しいが、女性の治癒士(ヒーラー)は私だけ。


 女性は治癒士(ヒーラー)の能力を受け継がないと言われていたのに、なぜか引き継いでしまった異端児。

 この能力があるせいで、伯爵令嬢であるのに騎士団の隊服に身を包み戦場にも行っている。その上治癒士(ヒーラー)は高給取りであるため、自分自身でかなりお金も稼いでいる。


 見た目は美丈夫なお父様に似ているし、女性にしては高身長。哀しいことに小さくて可愛らしいお母様には全く似ていないのだ。


 そんな私は御令嬢方の憧れの的。学生の頃はファンクラブもあったらしい。


「生まれてくる性別を間違えたわ!もういっそのこと、可愛らしい御令嬢にお嫁さんに来てもらおうかしら?きっと選びたい放題よね」


「お嬢様、ご冗談はおやめください」


「だって、私の稼ぎなら充分養えると思うわ…こんな私を好きになってくれる奇特な男性もいないだろうし」


「お嬢様は女性としてとても魅力的ですよ」


 侍女のユリアは微笑みながら褒めてくれるが、私は知っている……十八歳の結婚適齢期だというのに、婚約の話が全くきていないことを。私は釣書など今まで一つも見た事もない。


 伯爵家の御令嬢など本来なら引くて数多な高物件のはずなのだが、私は男性に全くもてない。


 男顔な上に高身長、戦場にも出て行く危険な仕事をしている上に男性より沢山稼いでくる……そんな私を奥さんにしたい人はいないだろう。

 貴族の奥様は社交をし、子を産み、家を守る役目がある。私には向いていないことばかりなのだ。


 私は一生独り身でも構わない。ありがたいことにこの治癒魔法(ヒール)の力のおかげでお金は稼げているし、養われないと生きていけないわけではない。


 ただ……年相応の令嬢らしく一度くらい誰かを好きになり、誰かに自分を好きになって欲しいなと思う気持ちはあった。だが、こんな自分には過ぎた望みだと諦めていた。

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