プロローグ1
桜が舞う季節。俺は春風を身に浴び、うららかな気分でいた。入学式からもう5日も過ぎたというのに、いまだにワクワクを感じている。友達はできるかな? とか、彼女なんかできたりして、とか期待に胸が膨らませていた。実のところ俺はまだひとりも友達ができてない。誰かとは仲良くなりたいとは思っている。
現在、学校の敷地ではたくさんの生徒たちで賑わっていた。その多くは部活動の勧誘。ここ、青鴎学園は部活動が盛んなことで有名な学校だ。部活の数はなんと100以上もある。自由な校風で、生徒の自主性によって様々な部活動をおこなっているようだ。なので、この学校での部活勧誘は一種の大きなイベントとなっているらしい。
俺も部活に入ってみようとは思っているが、これといってやりたい部活があるわけでもない。とりあえず色々と見てまわっているのだがしっくりくる部活はまだ見つかっていない。なにかパッとした才能でもあればいいのだが、残念ながらそんな才能は俺にはない。それどころか俺は小さい頃からどれをとっても普通。容姿平凡だし、成績も平均、運動もまったくもって普通。
その為、小中学校ではよく皆に基準されていて、ついたあだ名は『アブノーマルなノーマル』『普通・ザ・普通』『ある意味世界の中心的存在』その他諸々。ちょっとひどいと思うのだが、その通りなので何も言い返せない。最近は一つだけ人より優れたものができたけど、それでも少しコンプレックスだったりする。
「はぁ、ほんと部活動しようかなぁ」
最初は運動部に入ろうかとも思ったが、俺じゃ無理そうだし、別に毎日スポーツをしたいわけでもない。となるとやっぱ文化部か。文化部の方はまだ見てない部活が多いからそっちを回ってみようかな。
そう思って文化部がある文化棟の方に向かおうとしたところでいきなり声をかけられた。
「そこの君、ちょっといいか?」
振り向くとそこには美人な先輩がいた。背は俺よりも高くモデルと言わんばかりの背丈だった。顔立ちは凛々しく、肩までかかる髪は艶やかで綺麗な女の先輩だった。男装をしたら白馬王子様間違いなしのカッコよさも秘めた人だった。
「俺ですか?」
「ああ、君だ」
こんな先輩が俺みたいなどこにでもいるような普通の生徒になんのようだろう?
「えーと、なんでしょう」
先輩はに肩を掴まれる。ち、近い! しかも、メチャクチャいい匂いがする。
「私はさっき見た時から君が気になってね。こうして話しかけてみたんだ」
そう言われて脈拍がドクンと跳ね上がる。まさか一目惚れってやつでしょうか。こんなごく普通の俺がこんな美人な先輩と付き合えるなんて……ふふふ、ついに俺にも来ちゃったかなモテ期! いや~これから学校生活がバラ色だな~。先輩と一緒に弁当たべたり、手をつないだり、その他、あんなことやこんなことも……!
「君はもう部活に入ってたりするかい?」
「い、いえ、まだ決めてなくて」
先輩の目がきらりと輝く。
「よし、ならちょうどいい。君、派遣部にはいらないか? まだ部員がいなくて困っているんだ」
派遣部というのがどういう部活なのか知らないけど、こんな美人な先輩と二人きりになれるかも知れないチャンス逃すわけにはいかないっ!
「俺でよければ、ぜひ入らせてもらいます!」
こうして俺の青春ともいえるべき部活動が始まった。