インターハイ・デスゲーム
『……これで7人全員スキルを選び終えたな』
――やっぱりか。さっきは時間に余裕が無いから考えないようにしたが、これを同時に選んでる人がいるという事は彼らと何かしらあると思っていた。
『実は今、平行して来月のインターハイに出場する選手の中からお主を含めて7人、同時にスキルを選んでもらったのじゃ。
そしてこの7人で争い、試合に負けた者はこのスキルとスキルに関する記憶を没収される。最期まで勝ち抜き優勝した者のみインターハイ終了後も報酬としてこのスキルを使い続けれる事を許されるんじゃ。
そう! すなわちインターハイ・デスゲームじゃ!!』
「インターハイ・デスゲームだとぉ!?」
結局デスゲームするんかい!
でも実際死ぬ訳じゃないけどデスゲームなのか? いや、負けたら能力を奪われ、選手として死ぬと言う意味ではデスゲームなのかもしれない。
『まぁ、いちいち説明するよりも実際に見た方が早いじゃろ。まずはご対面といこうかのう』
――パチン!
神様はまた指を鳴らすと突然ピカッと強く光り、ワタルはあまりの眩しさに反射的に目を閉じた。
急に何するんだ!? と内心毒づきながら目を開けると、そこには6人の少年が立っていた。皆眩しそうに顔を歪ませている。多分ワタルと同じ強い光を食らったのだろう。
歪んだ顔で元の顔が分かりにくくなってるが、ワタルは6人の内3人を知っていた。いや、サッカー選手を目指す人で知らない方が珍しいだろう。
「青森山本高校のエース、小金井 廻。大阪梢院高校の鬼良 バリアン。千葉船山高校の司令塔、司馬 彰……
マジかよ……U-18日本代表が3人もいるのかよ……」
日本トップクラスの同級生に会い、ワタルはレギュラー入り出来ず無名な自分が恥ずかしくなった。もしここが現実世界なら迷わずサインをお願いしてただろう。
残り3人の顔はどこかで見たことある気はするが、名前までは知らなかった。しかしインターハイに出場する強敵である事には間違えないと思う。
「そう言う君は中学の時にスリーアローズ広島にいた吉城 渡君だね?」
青森山本の小金井 廻は端正な顔に垂れた金色の前髪をイジりながらワタルを見て言った。
「え!? あの小金井君が俺の事を知ってくれてるんだ!」
ワタルはU-18日本代表の小金井 廻と言う有名人に知ってもらえて喜んだ。
「そりゃ覚えてるよ。中学の時、君の出したパスで大暴れする【三本の矢】に何度も苦しめられたからね……今は仙台育米だっけ? 同じ東北地方同士仲良くしようよ! よろしくワタル君。僕の事はマワルと呼んでくれ」
「モチロンだ。よろしくマワル君!」
「ところでワタル君はどのスキルを選んだんだい? 僕はスキルを上手く使いこなせるか不安でね……」
「ああ、俺が選んだのはラ……」
「――待ちなぁ!!」
有名人と話せてテンションが上がったワタルは世間話の感覚で選んだスキルを話そうとしたが、【ラプラスの魔眼】と言いかけた時、それを遮るように隣にいた同じくU-18日本代表の鬼良 バリアンが叫んだ。
「全く、マワルちゃんは油断も隙もあらへんなぁ……
ホンマ可愛い顔してるクセに、勝利の為に手段を選らんばん悪魔みたいな性格をしよって……
この悪魔に騙されちゃいかんでワタルちゃん」
鬼良 バリアン。彼はブラジルから日本に帰化した元日本代表サッカー選手の父と日本人の母を持つハーフだ。
浅黒い肌にブラジル人に近い見た目だが、産まれも育ちも大阪でコテコテの関西弁を話す。身長が2mもある事から浪速の巨人の愛称で有名だ。
「え?」
ワタルはなんで初対面のバリアンに注意されたのか全く理解出来なかった。今世間話するのがそんなに悪い事なのか?
「そう言うバリアン君だってあえて一文字目を言わせてから、遮ったんでしょ? ワタル君の味方ぶるのは良くないよ。
まぁ、でもおかげでワタル君が選んだスキルが分かったよ。ラから始まるスキルは【ラプラスの魔眼】だけだからね。
なるほど、仙台育米は【ラプラスの魔眼】を主軸においたプレーをして来ると言う事だね。
教えてくれてありがとうワタル君。残された一ヶ月で十分な対策が出来るよ」
小金井はニヤリと黒い笑を浮かべ、ワタルをあざ笑うかのように言った。
「そう言う訳や、吉城ちゃん。一本取られたな」
――しまった! やられた。
もうインターハイ・デスゲームは始まってるのか。ワタルは対戦相手全員に選んだスキルをバラされた。だと言うのにこっちは誰がどのスキルを選らんだのか全く分からない。
いきなり遅れをとってしまった。
皆さんでしたらどのスキルを選んで、バロンドールを目指したいですか?よければ感想欄で教えてください