((5))
「これはこれは……」
「とりあえず、亀裂を調べてみようよ」
「ああ」
二人は光の照らす場所へと近づいて行く。
辿り着くと互いに思い思いに調べ始めた。
「暗視能力が手に入るってことは多分だが……」
「うん……暗闇の中、この建物の中に入るってことのような気がするね」
意見が合致する。
そう、恐らくだがこの建物の内部に下層部への入り口が、もしくはこの建物自体が下層部への入り口となっている可能性が高いだろう。
そうなってくると、何か隠された入り口を開ける仕組みのようなものがあるのかもしれない。
「……手探りでいくしかないな」
「そうだね……」
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「どうだ?」
二手に分かれ、壁を押してみたり、雑草を抜いてみたり、適当に呪文を唱えてみたりと思いつく限りのそれらしい手段で周囲を調べていたセイゴ。
もう既に一時間は経つの頃ではないだろうか。
何か収穫はあったかとセイゴがテルアキに尋ねる。
――――残念ながら、あちらもダメだったようだ。
昼の時刻は過ぎ、辺りを照らす光の量も7割ぐらいは減ってきてしまっている。さらに時間が経過すれば、裏路地らしく陰にこの建物は隠れてしまうこと間違いないだろう。
「……あと一歩だと思うんだけどなぁ」
テルアキの何気なく呟いた独り言が裏路地の陰に消えてゆく。
そう、あと少しのはずなのだが、進展を迎えるには何かが足りないらしい。少なくとも自分には皆目見当がつかない。……
「ふぅ……」
目的を完遂できそうだと気持ちが高ぶっていた分、落胆も大きい。そのせいもあっての事だろうが、体に疲労を感じる。
思わず、そのまま近くの亀裂は入った壁にもたれ掛かろうとし、右腕を壁に押し当てると――――
「うおぁッ!?」
「ええッ!?」
先ほど力を込めてもうんともすんとも言わなかった壁がいとも容易く崩れてしまったのだった。
危うく、内部に倒れ込むこととなる寸前だったのだ。
……いや、どうやら倒れ込むだけではすまないらしい
崩れた先を見ると地下に続くかのような階段が見受けられる。先の見えぬ階段。馬鹿げた例えだが、ここを仮に転げ落ちようとするならばさぞかし勇気がいることだろう。
灯りが泣ければそうそう、先には進めぬ場所のようだ。
だが、今回の目的はこれで……
驚き一瞬動きが止まるセイゴを横目に建物の内部に入ったテルアキは松明のようなものをバッグから取り出し、階段を下ってみよう、とセイゴに提案をする。その後を追うような形で彼も続く。
先ほども述べた通りに、階段には光が差し込まない為、先が見えず必然的に恐る恐る降りる羽目になる。
だが、降り始めて直ぐの事だが、二人に通知が届く。
『 目標達成 帰還なさいますか? 残り時間 02:30 』
「これで終わりか……」
「そうだね……どう?暗視能力の方は」
「いや、まだそれは……『報酬の取得を完了しました。特殊条件下のため能力の発動を致します』……おお!! 凄いなよく見えてるぞ!!」
松明のみが闇を見渡す為の唯一の光あった彼らに新な手段が加わる。
能力を得た彼が、先に降りるテルアキよりも前に出て前方を確認する。
すると、この先もかなりの段数の階段が進んでいるが奥で何やら模様が描かれた壁があるのを確認できる。
――――これからどうしたものか、一先ずテルアキに見えた光景を伝えてみる。
少し考える素振りの後、彼からは帰還の旨を伝えられる。
確かに、そろそろ一度は帰って落ち着きたいものだ。こちらもそれに同意の旨を伝えた後、互いに別れを告げる。
そうして二人は自室にへと帰還していく。
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23-42地点下層部。
二人が帰還し再び闇に包まれた階段。
セイゴが暗視能力で確認した通りに模様が描かれた壁で行き止まりとなっている。……そう見えるだけなのだが。
そう、この壁は所謂幻なのだ。
では、一体誰が、一体何故と疑問に思うかもしれない。
「「「オ……ォオォオォオオオオ……」」」
誰もいない設定ではある。
だが、正体不明の声が、嘆きが下層部を満たす。空気が震えるたびにまるで呼応するかのような波動が、波が壁を走る。
「オオォ……オオ%('#{+`Pdgoie*@5'("$Y&42da87%%)fhf!!!!!」
近頃は特に影響力が強まり始めた。
これは非常に危険なことなのだ。
彼とこれらが接触してしまうのは余りにも危険なのだ。
増やしてはならない。これ以上は世界の根幹に関わる。
今のままでは悪化の一歩だ。
抵抗を求める。
存続を求める。
対策を求める。
修正を求める。
そう、修正が必要なのだ。
『下層部解放条件: 特定付近での一時間以上の調査』




