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少々多忙な日を送ることになりそうなので更新頻度が次回より落ちてしまいます。私としましては週に一回以上は更新の方をしていきたいと考えております。話しのストックを準備しておらず、大変申し訳ございません。
晴れ晴れとした天気、少しばかり古さを感じられる西洋の建築物が建て並ぶ街の大通りで、人々が行き交う中、通りの端でこそこそと周囲を確認する者がいる。
「……うん、いないかな」
何かを警戒するかの様なその振る舞いを事情を知らぬ第三者の目には、妙な動きをする少年に見えることもあるだろう。
その怪しい少年こそ神崎清吾その人である。
彼は前日とは異なりコートと丈夫そうな軍用靴に近い靴を身に着けている。これらはどちらも新たに購入した物であり、商品の説明によると、ダメージ軽減等の効力を持つらしいのだ。
そんな新たな装備を身に着けた今の彼の目線の先は街の中央役所、その屋上だ。
辺りを見回して、警戒すべき相手が少なくともこの付近にはいなさそうだと結論を出すと、その場で目を瞑り意識を集中させ始めた。
「――」
『目標 : 23-42地点、下層部への移動』
すると、彼の脳裏に目標、またはミッション内容が浮かび上がる。
ちなみにA23-42地点とはこの街近辺を指す。この目標を完遂するために彼は自室からこの地点に転移してきたのだ。
「さて……」
彼は自分の新しいコートの内ポケットに右手を伸ばし、そして銃口の広い拳銃のようなものと切符のようなものを取り出す。
前者は所謂、鳥もちを発射するための物であり、装弾数は3発。後者は自室に帰還する事のできる、使い切りの消耗品だ。
ただ、前者はコートや靴と同様に購入した物になるのだが、後者は自室の壁に勝手に設置されていた拡張箱という箱の中に一枚入っていた物である。……初心者の自分を歓迎でもしているのだろうか?
疑問は残るがとりあえず、これらが今回、又はこれからの旅路に必要になると、ガイドのアドバイスを受けた彼なりに見越して揃えてきた装備となる。
「……そうは言ってもな」
やはり同郷の先人達には敵わないだろう。出来る限り早く出会って、早く教わりたいものだ。
所持品の確認を済ませた彼は、目的の完遂のために思考を割き始める。
……捕らぬ狸の皮算用と言われるかもしれないが、このミッションを受けた大きな理由がある。
「暗視能力…」
つまるところ、特殊能力の獲得だ。
報酬のポイントは少なかったが、幸いまだ余裕がある。もしかするとまだ自分には手に入れる段階では無いのかもしれないが、余裕があるうちに挑戦をしておこうという算段なのだ。
それに、暗視能力があれば夜間に活動をしなくてはならなかった際にも、昼間と同様の視界で索敵が出来るのだ。うん、悪くない。
「しかし、下層部か」
だだ、目標を完遂させなければ、先ほど述べた通りに捕らぬ狸の皮算用となる。
そうはならないためにも、下層部とやらに行かなくてなならないのだが……よく分からない。
目標の詳細には報酬/以外全くと言っても良いほど、説明が無い。あるのは『裏路地』という一言だけだ。
ガイドが言い分によるとそういった説明は、ある時とない時があるとの事だ。
……まぁ、教えて貰った場所に行くだけで能力が得られるというのは流石に虫のいい話なのだろう。他の目標では何やら戦うこともあるようだが、今回はそれは無いはずだ。地道に探すとしよう。
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「マジでどこなんだ……」
捜索開始から既に4時間が経過した。裏路地にある地下への入り口らしい場所を虱潰しのように探したり聞き込みもしてみるが、手掛かりすらつかめない状態にある。今は昼時だ。少し休憩でも取りたい。
彼は物陰にある段差に座り込み、持ち込んでいたペットボトルで水分を取る。何とか今日中に終わらせたいものだが……
「うん?」
「――っ ――? ――ッ」
そのようなことを考えていると、チェックのシャツに大きなショルダーバッグを背負った、細身のメガネをかけた男が何かを呟きながら通り過ぎている。年齢も身長もあまり変わらないだろうか?
いや、それよりもだ。可笑しい表現かもしれないが、何と言った方がいいのか……そう、自分と同じ気配がするのだ。
「ちょっと待ってくれ!!」
「――ッ ――ッ ――――うぇっ!? へッ?」
ある推測に至ったセイゴが少年に声を掛ける。
声を掛けられた少年は、自身の近場に人はいないものと思い込んでいた為に非常に驚く。
「今、大丈夫か?」
「お、おお。 ああ……うん」
「もしかして君って……」
この世界の人間じゃないよな?
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「俺のところによると裏路地にあるって話だな」
「うん……。え? それだけ?」
という事があり、彼らは今こうして行動を共にしているのだ。
さらに偶然なのだが、両者共に同じ目標らしく、互いに自己紹介を済ませた後に目標に関する情報を交換している最中なのだが……明らかにセイゴから出せる情報が無い。
「こっちの世界の時間で大体昼時に丁度、大通りからこっちの方向の裏路地に光が差し込む場所があるからそこを調べろって話だったよ」
「……へぇ」
彼、廣幡輝明 の情報に圧倒された神崎清吾はもはや相槌を打つことしか出来ない。
「でもいいなぁ……暗視能力を手に入れられるなんて。こっちの報酬はポイントだけなんだ」
「報酬にも個人差があるって話か……」
「説明が少なくて、難しい分だけ報酬が弾むんだろうね」
「……すまない」
「ああ、いいよ。そんなの気にしないから」
自分は他人に寄りかかる形でより良い報酬を得ようとしている訳だ、そうは言ってもらえても申し訳ない。
「そうだ、今度何かあったら手伝わせてくれないか?」
「え?」
「まぁ、まぁ。いいから」
「……そこまで言ってくれるって話なら」
「おお、頼んでくれ」
今の自分で出来るのはこれくらいだろう。初対面なので人となりは分からないが、無理難題を吹っかけてくるようには思えない。これくらい言っても大丈夫なはずだ。
一瞬そう考えてると、何か書かれた紙を持ちながら歩いていたテルアキの足が急に止まる。
何事かと尋ねようとする前に目線を上げると……陰の多い裏路地に一つの光が差し込んでいる。
「多分ここだね」
「そうみたいだな」
その光が照らすは古びた建物、光の当たる中心部には大きな割れ目が確認できたのだった。




