表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

((8))




 古びた門の合間から、一つの車両が猛スピードで出現する。

 その車両はやがてスピードを落としながら、開けた道を進んで行く……


 車内の3人は何度も後方を警戒していた。奴は追って来ないかと。そして、もう追手が居ない事を確認すると……

 


「「「助かった(なぁ)(な)……」」」



 盛大に息を吐く。

 当然の事だろう。残機があるとはいえ、彼らは皆生きた心地がしなかった。張り詰めた空気等々からようやく解放され余裕が戻ってくる。



「しっかし驚いたなぁ!! アレ、何だよおい、セイゴ、何か知ってるか? 最初から見えてたんだろ?」


「俺にも分からないです……何で最初から見えていたのかも同様ですね」


「僕やタカヒデさん達が前に行った時も見えて居なかっただけで、アイツらいたのかな……」


「ハハハ!! 怖い事言うねぇ!! テルアキイ、今度もう一回行ってみるか!!」


「ヒィ……勘弁して下さいよお。それに橋だって壊れたじゃないですか」



 そうあの橋は壊れてしまった、火薬も原因として挙げられるだろうが、あの巨体こそがまず一番の原因だ。正体は黒いアイツと同様に不明。……しかしこうも何故、異常事態に巻き込まれてしまうのだろう。前世で悪い事でもしたと言うのだろうか。



「ま、色々あったが取り敢えずは俺たちの勝ちってもんよ、着いたらあいつらに自慢してやろうや!! ハハハハハ!!」


「はははは……」



 この時のテルアキの疲れ果てた笑い声が印象的であった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 つい先ほどの事だが、目的地に到達した。

 車は地下駐車場への入り口のような場所を通り、車を止める分には苦労しないサイズのスペースに出る。ぶら下がっている内の幾つかの照明が付いたり光ったリして、あまり長居していると目がチカチカしてきそうだ。



「あ――、後で取り替えなきゃな。こりゃ。」


「それより、タカヒデさん、もう待っているみたいですよ」



 テルアキの言葉を聞き、車内から見て左方向にある金属制のドアと手すりの方を見やる。

 すると、自分と年齢は大差はないように思える、何処か青っぽい黒色でボブカットのを少女が手すりの上に座り腕を組みながら、こちらを見ている。――――見事な眼光だ。恐れ入る。

 その少女が車が止まった事を確認すると、つかつかと運転席の隣の窓の近くに歩み寄る。




「メイちゃんごめん。ちょっと僕達、楽しく鬼ごっごしてt「30分遅いですよ、寄り道、してましたよね?」…うん」



 開口一番にタカヒデへの文句が飛んでくる。

 地下に入る直前にタカヒデに聞いたことだが、あの橋への道を通らずともここには来ることができるようだ。つまるところ寄り道。彼女の言葉は否定できない。



「このやり取り前もやりましたよね? せめて、人を待たせるときは寄り道しないように釘を刺したつもりでしたが……どうやら、足りなかったみたいですね……!!」


「ひゃあ……そう、それはいけない事だね!! 良く知ってるよ。ただ、これでもホントは直ぐに向かうつもりだったんだよ? でも、テルアキ君がトイレに行きたいっていうから……」


「シジョウさん、タカヒデさんが海の見える橋に連れ出しました」


「テルアキィ……お前……」

 


 ただ真実を。ただ冷酷に言い放つテルアキ。



「またあの橋……。あそこは確かに綺麗で素敵な場所だとおっしゃるのも分かりますけど、明らかに平原から繋がるのは可笑しいじゃないですか。もしかしたら危険かもしれないって……この話も何回かしましたね……」


「いやいやいや、分かってない、君はな――――んにも分かってない!! いいか? 仮にそういう危険があるとしてもだ、そういうものを追いかけるってのもいい経験になるんだよお!! そうだろお前ら!! 今度もまた行ってやろうじゃないか!! ええ!? ……ってあり? ……何で誰も首振らないの……?」



 タカヒデさんがどう思っているのか本心は分からないが、少なくともまた行きたいかと聞かれて答える者はここには居ない。アレと一緒に倒壊し始めた橋の上で鬼ごっこは残機があるとはいえ、もう御免だ。


 タカヒデの言い訳に一つため息をついたメイという名の少女が、その目を自分に向ける。

 

「まぁ、良いです。それよりも……その後ろに座っている貴方、名前はコウザキで合ってる?」


「ああ、合ってるよ……」


「そう、さっそくで悪いとは思うんだけど幾つか聞きたい事があるの。まずは、部屋を変えましょうここはなんだか陰気臭いもの」


 そう言い放った彼女に連れられ、照明を取り換えると言って残るタカヒデ以外の全員が地下を後にする。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 地下から階段を2階層分登り、その先の廊下を歩いていると前方から一人、こちらも同年代くらいの少女が歩いてくる。



「おやおや、二人の下々を連れて、一体どこに行く気かな――? メイちゃん?」


「あまり人をからかっちゃダメよ、ただの事情徴収なのだから」



 事情徴収と言われると、何か自分が悪い事を彼女らにした気分になるのだが……



「あはは、そうかそうか。えーっと、そこの君――? 正直に言わないとこっぴどくやられちゃうから気を付けてね――」


 

 そう言ってこちらに手を振りながら立ち去ろうとする少女。彼女に今度はメイと呼ばれる子が一つため息をついた後に声を掛ける。



「そう言う貴方こそどこに行くつもりなの?」


「ちょっとね……散歩しにいくとこ。そういう訳でまた後でねメイちゃんと下々諸君――」


「下々……」


「真に受けなくていいと思うよ」


「そうして」



 彼女は自身の言う通り今度こそ立ち去って行った。その様を見届ける3人。彼女についてメイに聞いてみるが、話が終わってから、と言われ拒否されてしまう。

 不快にはならないのだが、どうやら彼女は自分に対しての警戒感を持っているらしい。

 ……先の二人の善意に助けられた自分が言うのもお門違いなのだが、初対面の人間に対しての彼女の反応こそが一般的な反応に該当すると個人的に思う。道中の不幸に見舞われたとはいえ、彼らに会えた事は幸運だったのかもしれない――――


 

「着いたわ。この部屋に入って」



 思考に浸っていた頭が彼女の言葉で現実に戻ってくる。……ここが現実なのかは未だに疑問だが。

 とりあえず、彼女に促され部屋に入る。

 その部屋には窓が無い。が、何処からか換気扇のような音が聞こえてくる。

 部屋の中央には木製の長机に、その机を取り囲むように置かれた、ボロくはないが新しくもないソファー。そのソファーに一人座っている男がいる。これまた、自分と年齢は大差ないようだ。その人物を見た彼女は一瞬驚いた表情をしたが……ちゃんと知り合いの様だ。

 その知り合いらしい人物がこちらを、主に自分を見て何か納得したかのような動作をする。



「なるどほどなー、新入りって君の事か」


「まだ、味方になり得ると決まった訳ではないわ、早合点し過ぎよ」


「へいへい、了解」



 諭された少年は机に置かれたお茶に手を付け始める。

 それを確認した彼女にソファーに座るようにと言われ、自分とテルアキは言葉に従う。

 そして、最後に彼女が座るような形となって、ようやく話が始まったのだった――――



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ありがとう……今回で、初めての情報を多く手に入れられた」



 彼女から聞かれた内容は多岐にわたった。

 いつこの世界にやって来ていたのか、このゲームについて何か知っているか、この世界に来る前に何か前兆みたいなものは無かったか、などなどだ。

 

 一応、自分だけが知っている内容も幾つかあったようで、彼女らにとって何か役立てそうなのであれば、タカヒデさんやテルアキから情報を貰ってばかりで内心申し訳なく思っていた気持ちが多少楽になる。



「改めて名乗るわ。私はクルミメイ。時折こうしてまた、情報共有したいと思っています。よろしくお願いしますね」


「あ、はい。コウザキセイゴです」



 とりあえず、認めてくれた? という事なのだろうか。改めて挨拶すると、メイの隣で座っていた年齢の近い男が、重要そうなこちらの話が終わったと判断したのか、会話に乗っかってくる。



「うん、大丈夫そうだな。こっちも名乗るが、カキサワシュウジって名だ。よろしくな」



 一瞬じろりと見られたが、納得したような表情の後で挨拶をしてくる。

 それに彼女の時と同様の返事をするのだった。



 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ