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2. ルシンダ、二年生になる


 4月、始まりの季節。

 ルシンダは二年生に進級した。


 進級して初めての朝のホームルーム。担任教師はまたレイだった。嬉しいけれど、ユージーンの賄賂……ではなくて、寄付金が効いてるのだろうか。


 レイから生徒たちに連絡事項が伝えられる。


「残念ながら、アンナ・モネがご家庭の事情で転校することになった」


 アンナはルシンダの隣の席だった女子生徒だ。スイーツに詳しくて、よく美味しいスイーツの話で盛り上がっていたので寂しい。

 春休みの前は転校の話はしていなかったので、きっと急に決まったことなのだろう。きちんと挨拶できなかったのが残念だが仕方がない。


(次の席替えがあるまで、隣の席は空いたままかな)


 そんなことを考えていると、レイが次の連絡を伝え始めた。


「あー、クラスメイトが減った代わりという訳じゃないが、今日から仲間が一人増える。……入ってきてくれ」


 レイが教室の外に声をかけると、すぐに扉が開いて一人の生徒が入ってきた。


 色白の肌に紺色の髪、青紫の瞳の男子生徒。繊細な美貌の顔に浮かべた笑顔はとても優美で、思わず目を奪われる。

 クラスの女子たちがほうっと溜め息を吐くのが聞こえた。


「エリアス・マレ・シュクラバルです。隣国のマレ王国から留学に来ました。今日からよろしくお願いします」


 エリアスが自己紹介すると、教室中がざわめいた。

 レイが咳払いをして生徒たちを見回す。


「静かに。……名前から分かったと思うが、エリアスはマレ王国の王子殿下でいらっしゃる。ただ、本人が特別扱いを望んでいないので、そんなに畏まる必要はない。まあ、このクラスにはアーロンもいるから、接し方は全員心得ているとは思うが」

「レイ先生の仰るとおりです。ぜひみなさんと仲良くしたいと思っているので、遠慮なく接してください」


 エリアスが柔らかな笑顔を浮かべたまま、クラスメイトたちに語りかける。


「よし、じゃあ今日の連絡は以上だ。エリアスは、あそこの空いている席に座ってくれるか」


 レイがルシンダの隣の席を指差す。

 エリアスは「はい」と返事をして、ルシンダの隣の席に腰を下ろした。


「よろしくね」


 エリアスが小さな声でルシンダに挨拶する。


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 少し緊張しながら挨拶を返すと、エリアスが嬉しそうに目を細めた。



◇◇◇



「うーん、久しぶりだから疲れた〜」

「早く帰って休みましょ」


 初日の授業は半日で終わり。

 クラスメイトたちは久々の授業で疲れてしまったようで、あっという間に帰り支度を整えて教室を出ていく。


 ルシンダも教科書を鞄にしまっていると、エリアスが話しかけてきた。


「ねぇ、ルシンダ嬢。よかったら放課後──」

「ルシンダ、これから生徒会室に行くのでしょう? みんなで一緒に行きましょう」


 エリアスが言い終わる前にアーロンが声をかけてきた。ライルとミアもいる。


「アーロン、そうですね。一緒に行きましょう。……えっと、すみません、エリアス殿下。今なんて仰って……?」


 ルシンダが尋ねると、アーロンがわざとらしくはっとした表情をして謝る。


「お話のところを邪魔してしまったようで失礼しました」

「……いや、気にしてないよ」

「そういえば、まだご挨拶していませんでしたね。ラス王国第一王子のアーロン・ラス・ハイランドです」


 アーロンが名乗ると、ライルとミアも同じように自己紹介をした。


「エリアス王子が我が国に留学に来てくださって光栄です。もっと色々お話をしたいところですが、これから生徒会メンバーで集まらなければなりませんので失礼しますね」

「……そういうことなら仕方ないね。ルシンダ嬢、また明日」


 笑顔で手を振るエリアスに挨拶をして、ルシンダたちは教室を出た。



◇◇◇



 生徒会室に集まると、留学生の話になった。

 アーロンが公務で隣国を訪れた際に会ったことがあるという。マレ王国は側妃がたくさんいて、エリアスは第六王子らしい。


「私が国王だったら側妃なんて絶対に取りませんけどね」


 アーロンがルシンダを見つめて微笑む。


「それにしても、エリアス王子はラス王国に興味があるような感じはしなかったから、留学しに来るのは意外ですね」


 首を捻るアーロンにライルが返事をする。


「次期国王の指名が間近と噂されているから、案外ピリピリした空気が嫌で留学に来たのかもしれないな」


 ルシンダは隣国の情勢など全く知らなかったが、ライルはさすが宰相の息子だけあって、多少通じているらしい。


「……あの国はお国柄で、やたらとスキンシップしようとしてくるから気をつけるんだぞ」


 ユージーンがそんなことを言うので、もう隣の席になってしまったと答えると、クリスが顔をしかめた。


(なんだか、みんなエリアス殿下にいい印象を抱いていないみたい……)


 たしかに、他国の人と接するなんて初めてだし、王族ということもあって少し緊張するけれど、色々話を聞いてみたいなとも思う。


 マレ王国はラス王国と似た気候風土らしいが、マレ王国よりも北に位置しているせいか、冬は王国中が雪と氷で覆われてしまうという。


(マレ王国かぁ……冬の季節に行ってみたいな)


 前世でも、ゲームで雪と氷の国が出てくるとテンションが上がったものだった。

 風景ががらりと変化するのはもちろん、BGMもしんしんと降り積もる雪やきらきらと光を反射する氷を思わせる幻想的な曲に変わって、「ああ、別世界にやって来たんだな」とワクワクした気持ちになるのだ。


(やっぱり今度マレ王国のことについて、エリアス殿下に聞いてみよう)


 エリアスとはあまり仲良くしないよう注意するユージーンを曖昧な笑顔でかわしながら、ルシンダは生徒会の仕事に手をつけ始めたのだった。


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