Epilogue
第一章、完
もう十二月も終わりかけの木曜日。季節外れな温かさで、「今年は季節外ればかりですね」なんてテレビのコメンテーターは言っていた。
「まるで秋晴れね」
この天気に負けず劣らず晴れやかな表情をしたカナは、空を見上げて大きく伸びをした。
あの夜に約束してからしばらく、私たちは例の自然公園へ来ていた。
いつも見ていたオフィスカジュアルと違って、今日はジーンズにブルゾンと、スポーティな印象だ。
「あっちの方に確かベンチがあるから、そこに行こう」
駐車場を出て、遊歩道を進んでいく。
明るい小道で並んで歩くのは、なんだか妙に恥ずかしい。
そんな私の気持ちは全くもって関係ないカナは、きょろきょろと辺りを見渡しては気持ちが良さそうに腕を振って歩く。
楽しげな様子を見ていると、自分が緊張しているのが馬鹿らしく思えてくる。しばらく歩くと記憶の通りベンチが見つかった。二人で腰を掛け、一息つく。
「やっぱこういう日に昼間から出かけると、いいね。今日は日差しも温かいし」
「そうね」
人間、ついつい話に困ると天気の話が出てしまう。かといってあの後旦那と、いや元旦那とどうなったのか、こちらから聞くのは気が引けた。
躊躇いを察してか、カナが安心させるように口を開く。
「全部片付いたし、やっぱ気分がいいわ」
「……そっか」
いつかの夜のように、カナは足をぶらぶらと揺する。子供みたいだ。
私の知っている彼女らしさを感じて、安心する。何を臆していたのか、今日ここに二人で来られたことが答えじゃないか。私は聞きたいことを聞いていいのだ、そう言い聞かす。
「思ってたこと、言えた?」
カナはゆっくり深呼吸をした。
「ええ、ぜーんぶ……それにね、最後に言ってやったの。『お幸せに』ってね。あの鳩が豆鉄砲を食ったみたいな顔、瀬戸ちゃんにも見せてあげたかった。隠し撮りでもしとけば良かったわ」
けらけらと可笑しそうに笑うカナに釣られて、思わず笑ってしまう。
「やっぱり、買い被りなんかじゃないよ」
「え?」
私の思っていたよりも、きちんとしてて、どこか強かで。すごい人だと素直に思った。
どういう意味、と説明を求めるカナを窘める。今日はその他にも聞いてほしい話が沢山あった。
この前できなかった田所の話。
彼に言われた通り、私がもうちょっと頑張ろうとしていること。
近所の噂好きの山中さんに気を付けて、とか。
そういった他愛もない話が、ただただしたかった。
冬空と秋晴れの間の子のような気持ちよさに背中を押され、何処までも行けるような気すらする。
そういう一日を彼女と始める。
ちゅーぐらいしてくれよと心の百合豚は叫びますが、この二人はスローペースで幸せへ向かう予定です。
飽きずにこれからもよろしくお願いします。
ちなみに最後の一文はPrologueと対比といいますか、そんな感じです。
いくつかの間話を挟んだのちに第二章へ突入予定です。




