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75話 護るもの



ーーー連なる連合軍の中からアレクが引き剥がされる。先輩として守護隊長として、ノヴァはアレクの援護へ向かおうと足を踏み出す。最初彼を見た時、強い男だと思った、だから仲間になってほしいと思った、しかしそれと同時に危うい奴だとも思った。自分を見失ったら、本当の悪と相対したら、投げ捨ててしまうのではないかとーーー。


「僕は大丈夫です!」


ーーー小さな英雄の怒号が飛び、ノヴァは足を止める。キングが頷き、一匹の狼が友の為に走り出す。アレクはもう一人前なのだとノヴァは思った、もう大丈夫だと。足の向きを翻し、キングの号令を聞く。


「進行を開始せよ!」


「いきましょう、リナリア。」


「うん。」


 キングの叫び声と共に、各自バラけて向かっていく。ノヴァとリナリアも敵軍に向かって走っていく。目標はブラックリスト、どれも凶悪な犯罪者で、殺人鬼で、平和な人々から大切なものを奪うもの達。


「どこにいるんでしょうか?目標の人物達は。」


「うーん、やっぱ悪い奴だから。悪魔と一緒にいるのかな?」


 褐色の肌を振り乱しながら走るリナリアは、周りを見渡しながら言う。


「そうですね、サイモン博士の道具を使って探しましょう。」


 二人は胸元につけたUARDに意識を集中させる。するといくつかのモヤが見え、そのモヤに向かって仲間達が接近していくのが見える。


「皆んな、向かってくれているようですね。僕達も相手を見つけないと……?」


「どうしたの?」


 ノヴァは素早く動かしていた足を急に止め、暗闇が待ち受ける森の中を見つめる。

 森から何やら不穏な空気を感じとったらしいノヴァは、警戒の表情を浮かべながらゆっくりと森へ近づいていく。


「確証はありませんが、森の中に何かいます。誘われているのかもしれませんが行ってみましょう。」


「分かった。」


 チヴェッタを肩に乗せながら森の中を進んでいくノヴァの後ろを、リナリアは二丁の愛銃を構えながらぴったりとついていく。


 森の奥へと入っていくと、先程まで日が全てを照らして明るかった二人の視界も、木々によって暗く閉ざされていく。


「気をつけてくださいね、敵がいつ襲ってくるかも分かりませんから。」


「うん、慎重に行こう。」


 二人は互いの、死角を背中合わせで補いながら、木の隙間から溢れる日の光を頼りに進んでいく。ざわざわと木々が擦れ合う音と、森の中に住む鳥達の声だけが聞こえて来る。


 しばらく続いた緊張感の中、またもノヴァの足取りが止まり、リナリアとノヴァの背中が合わさる。


「やはり、来てくれましたねぇ。アルトリオ家のおぼっちゃま?」


「「……!」」


 二人の前に現れたのは、銀のフレームの眼鏡をかけ、左右非対称の髪をなびかせた、細長い男だった。


「誰だ!」


「ふっふっふっ、ワタクシを知らないなぁんて、意外と世間知らずなんですねぇ。いいでしょう教えてあげます。ワタクシはアルベロ・アルボル、貴方を殺す男です。」


 アルベロはニヤリと笑い、ノヴァに指をさす。ねっとりとしたその視線と喋り方は、アルベロが自己陶酔者であることをまざまざとノヴァ達に見せつけていた。


「いやーな感じ、そんなの私がさせるわけないよ!」


 リナリアは嫌悪感を隠そうともせず表情に出して、アルベロの言葉を否定する。アルベロはその嫌悪感を全く意に返さず、平然と言葉を返した。


「ふっふっふっ、ただの一般人は黙っていなさい。それとも貴方を先に殺してあげましょうかぁ?」


「……御託はもう良い、もう貴様に誰も殺させない。僕が今から貴様を倒すだけだ!」


 アルベロはノヴァの言葉にねっとりと笑うと、眼鏡を左手で抑える。


「ふっふっふっ、良いですねぇ。ワタクシは傷つくのも傷付けるのも大好きなんですよねぇえ。まぁ最後に勝つのはワタクシですがねぇ!!」「ちょっと、俺っちにも話させてよ。」


 不敵に笑うアルベロの上から、黒いモヤがゆっくりと降りて来る。ノヴァとリナリアはその声の口調からアクアホルンでの戦闘を思い出していた。


「貴様、ストラスだな。」


「ふぅ〜さすがノヴァ君。相変わらず話が早いねぇ。お姫様も久しぶり。」


「……私、君の事嫌い。」


 リナリアは苦虫を噛み潰したような顔をして、ふんとアルベロとストラスから顔をそっぽに向ける。


「あらら、嫌われちゃった。でもまぁ、無理にでも戦ってもらうけどね。」


 ストラスがぐるぐるとアルベロの周りに纏わりつく。アルベロは、ストラスによって段々と姿が見えなくなっていく。


「ふっふっふっ。では始めましょうか、貴方の最後争闘を……ストラス!」「よっしゃ、俺っちは翠鳥(すいちょう)君主(モナーク) ストラス!!さぁ、戦いの中で語ろう……。」


[クロスデーモン] 君主(モナーク) ストラス


「「……ッ!」」


 ストラスがアルベロと魂を重ねた。辺り一面に風を放ってから、ストラスのモヤがアルベロから消える。


 ノヴァとリナリアは、その風圧に耐えきれず手で顔を覆うが、すぐに風は止み二人は再びアルベロを見つめ直す。


「それが本当の力だというのか……ストラス。」


 ノヴァは、自分の目の前で綺麗に足を揃えて立ち、右手には木で出来たレイピアを持つ、羽の生えた鳥の怪物に驚きながら言う。


「そうだよ、ノヴァ君。これは迅速の翠鳥[ファウストフォーゲル]ていうんだ。まぁ、見た目は見せかけだけどね。」「ふっふっふっ、どうですノヴァ!この美しい羽!強靭たる武器!!あぁぁ、実に素晴らしいですよねぇえ!!」


 ノヴァの言葉に正確に返すストラスとは裏腹に、アルベロは自分の姿に酔いしれ、鳥頭になっても分かるほどにまともな表情ではなかった。


「全然美しくないよ。君、趣味悪いね。やっつけよう、ノヴァ、チヴェッタ!」


「えぇ、もちろんです!チヴェッタ!!」「ホォォウ!」  


 リナリアは、アルベロに強固たる嫌悪感を示しながら二丁の拳銃を鳥の怪物に向ける。ノヴァはリナリアの言葉に応えるように、チヴェッタはノヴァの言葉に応えるように動き出し、チヴェッタが翼を大きく広げながらノヴァが突きだした右手の前へと飛び出す。


[クロスソウル] 獣機 チヴェッタ


 チヴェッタは形を変えていき、ノヴァの右手へと吸い込まれていく。やがてノヴァの右手には刀身に白色のエネルギーを纏った、細長いサーベルが握られる。


「よし、私も!!」


[ソウルオーバー] 百発百中の目[インファラブルアイ]


 リナリアの目にはエネルギーが集まる。普段は見られない鋭い目つきをしたリナリアは、アルベロに向けて速攻で二丁拳銃による射撃を開始する。


バンバン!!


「……‥行くぞ!」


 リナリアが放った弾丸へ追随する様に、ノヴァもアルベロへと突撃していく。しかし、弾丸はアルベロへとは届かず、ノヴァもその足を止めた。


「ふっふっふっ、甘いですねぇえ?」


「何だと。」


 アルベロの前には、左右から伸びた太い木の枝が現れ、アルベロの体を守っていた。


「どう?これが俺っちの能力さ。」


「えぇー、そんなのあり?」


「厄介な能力だな。」


 リナリアは不機嫌そうに驚き、ノヴァは冷静にアルベロとの間合いを取ろうとする。


「ふっふっふっ、それじゃあ今度はワタクシから!!」


 アルベロはノヴァを逃さまいと、木のレイピアによってノヴァの体めがけて刺突を繰り出す。


「ハァッ!」


「……!!」


 ノヴァは驚きながらも、アルベロの刺突を体を華麗に右側に翻して避け、サーベルでレイピアを弾き返す。


 キンという音ともに跳ね上がるアルベロの右手とレイピア。その隙を見逃さなかったノヴァは、そのまま流れるように刺突を繰り出す。


 しかしノヴァが放ったサーベルの切っ先は、アルベロが操って盾のようにした太い枝に突き刺さる。


「ふっふっふっ、通りませんねぇえ!!」


「……くそッ!」


 今度はアルベロが木々を操り、ノヴァへ攻撃を仕掛ける。

 うねりながら迫る木枝をノヴァは、太い枝からすぐさま抜いたサーベルで斬り伏せる。


「まだまだですよぉ!!」


 シュッ……シュッ……シュッ!!


「クッ……。」


 迫る木枝を破壊していくノヴァへ、アルベロは追撃のように刺突を繰り出していく。ノヴァは木枝を丁寧に破壊しながら、刺突を避けるかその刀身を弾き返していく。


「ふぅ〜、やるねぇノヴァ君!」


 そんな一進一退の攻防を繰り広げていく二人の隙間を狙い、アルベロへ向けてリナリアは銃弾を放つ。


「私だって!!」


 バンバン!!


「チッ……邪魔をするな!一般人め!」


 横から飛んでくる銃弾を防ぐために、アルベロは木枝と意識をそちらへと向ける。


「ナイスです、リナリア……ハァァ!ロールチャージ!!」


「来るよ、アルベロ!」「……ぬぅ!!」


 隙ができたアルベロに向けて、ノヴァはエネルギーを集中させたサーベルによって刺突を繰り出す。

 何とか木のレイピアの側面で受け止めるアルベロだったが、その威力は凄まじく、全ての力は流しきれない。


「ガッ……!」


「ハァァ!!」


 体が揺らめいたアルベロへとノヴァは追撃の斬撃を繰り出す。アルベロの体左上から斜め下に、右上から斜め下に、右横から一直線、華麗にくるりと回ってからの左横から一直線。


キンッ…キンッ…キンッ……ガハッ!!


 何とか、最初の三撃を受け止めていたアルベロだが、左横からの斬撃をモロに喰らう。


「まだだ!イクスブレード!!」


 しかし、ノヴァは攻撃の手を緩めない。ノヴァはサーベルでアルベロを素早く二回クロスの形で斬りつける。


「グフっ……!」「アルベロ!!」


 白色のエネルギーの刃によって斬られたアルベロは、背後の木の根元へと吹き飛ぶ。木に思い切り叩きつけられる、アルベロ。


「大丈夫、アルベロ?」


 ストラスの心配をよそに、血を吐きながら、ゆっくり立ち上がるアルベロは、ニヤリと笑っていた。


「えぇ、大丈夫です。ですが、ふっふっふっ……素晴らしい。アルトリオ家がここまで強いとは。」


「………。」


 アルベロのその言葉に、ノヴァは端正な顔立ちを歪ませて、睨みつける。


「アルトリオじゃない、ノヴァが強いんだよ。」


 遠くから銃を構え続けるリナリアは、怒りを露わにしながら、そう否定した。


「貴方の意見など聞いていません一般人……。あぁ素晴らしい、こんなに強いアルトリオ家の次期当主を殺したとあればワタクシの評価は鰻登り、アルトリオ家の名も廃り、多くの人達が傷つく。なんて素晴らしきこと!!」


 アルベロの言葉にノヴァの顔の歪みは増していく。


「おい、貴様はそこまで人を殺し、貶し、傷つけたいのか?」


「ふっふっふっ、もちろんです。人が傷つく瞬間、それを見ることがワタクシの幸せ!!」


「そうか……ならば、傷つけてみろ。僕が……僕達が全てを護りぬく。」


 怒りの表情のまま、ノヴァはサーベルをアルベロへと向ける。それを見て嬉しそうにアルベロもレイピアを構える。


「ふっふっふっ、いいでしょう。本気でいきますよ!ストラス!」「熱くなってきたねぇ……任せてよ!」


「「ハァァ!!」」


 両者、刺突の構えのまま走り出す。アルベロはリナリアの銃弾を木々で弾きながら突き進み、木のレイピアを細く鋭くしていく。


 ノヴァもエネルギーをサーベルへと集め、そのエネルギーの刃の切っ先を鋭く尖らせていく。


 そして近づいていく両者の切っ先同士がついに、衝突する。



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