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7話 不安の予兆

 キングファミリアのホームの地下には牢屋が存在する。


 階段を降りると広く長い廊下が現れ、左右には鉄格子で囲まれた部屋がいくつも並んでいる。

 その部屋の中は薄っぺらい布団が置かれ、衝立で分かれた手洗い、小さなテーブルが置いてあるだけの粗末なものだ。その牢獄の中に、先日の騒動の犯人達がいた。


「親分は何処に居るんだ!ここから出しやがれ!」


 レイと呼ばれている男は、地下中に声が響き渡る程の大声で叫び、鉄格子を力強く握っている。その側には黒髪の女性が立っていた。


「此処にはいないですよ!いい加減、静かにしてください!」


  何度も説明を繰り返しても納得せず、一夜中叫び続けるレイに女は辟易してうなだれている。

 しかし彼女は、任された仕事を一度受けたらやり遂げるまで投げ出さない事を流儀としている。


 するとそこへ、背は高いが細身の黒髪の男が地下へと降りる階段から現れた。

 その男は、頬と顎に刀傷があり、一見暴力的なように見えるが男が纏うオーラは落ち着いていて、大人の信頼感が出ている。


「リナリア、様子はどうだ?」


「師匠… 全然ダメです。何度言っても親分を出せの一点張り… ウチが親分とやらを捕らえてるなんて情報、何処で仕込まれたんでしょう?」


「分からんな…こいつらから、引き出せなかったのか?」


「ダメです。情報源の事になると一切話さなくなります」


 ケンは茶筅髷(ちゃせんまげ)にした長い髪を振って悩みこむ。


「マリーちゃんに聞いてみますか?」


「あぁそうだな。呼んでこよう…」


もうしばらく頼むと労いの言葉をかけ、ケンは狭く細い階段を上がっていく。

 階段を上り切ると、頑丈に施錠された扉があり、ケンは持っていた鍵で開けた。


 外に出るとギラギラと光る太陽の光がファミリアのホーム全体を照らしていた。


 牢屋への入り口は敷地の端にあるので、ケンは歩いて三階建ての拠点へ向かう。

 拠点の入り口の前には小さな広場があり、そこではクマ、オオカミ、シカ、フクロウが遊んでいた。動物達は爪を隠し牙を隠し、傷をつけないよう互いに気を配りながら戯れている。

 運動会をしているような広場を抜けたケンは、ホームへと入っていく。


 中に入ると、広い一部屋がありいくつかのテーブルとイス、お立ち台のようなものも置いてありここで、作戦の会議や食事をするためだ。

 その部屋の奥には、扉がありそこから出ると廊下と階段が続いていた。


 ケンはその階段を上がると、二階の目的の部屋へと向かう。医務室である。


「入るぞ…マリーはいるか?」


「ケンさん!いつもノックしてくれっていってるじゃないですか。」


 すまないと平謝りするケンに、少々の怒りと呆れを感じるマリーであったが、ケンに小言をいっても無駄だと分かっているので心の中に沈めておいた。


「どうしたんです?急に来て。」


「昨日の悪党達なんだが、どうやら洗脳か何かをされているみたいなんだ…来てくれないか?」


 マリーはカルテを見ながら、ケンの話を聞いていた。


「全く、アレ君だけじゃなく。キクノちゃんの手当てまでしてその上、キングに報告しなきゃいけなくて、忙しいのに!」


「二人が無事でよかった。君のおかげだマリー」


「もう! キングに報告したら行きますので、さっきに戻っていてください。」

 

 ケンは、頷きだけを返して医務室をあとにする。


「どうだ?マリー?」


(ソウル)の力で、洗脳されてるわ。でも誰が…」


 ボスへの報告を終えたマリーは、牢獄へと赴いた。そこで見たレイたちには、洗脳が掛けられており、マリー達は、姿みえぬ敵に頭を悩ましていた。


「キングに相談しよう… 俺が伝えてくる、二人はもう少し調べていてくれ。」


 ケンはリナリアとマリーに、レイ達のことを任せると足早にキングの元へ向かった。


 そして、キングの号令のもとに家族(ファミリー)全員が、ホームの一階の大部屋へ集まった。


 


  

 


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