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6話 キング

 僕はギルさんに連れられて、医務室を後にした。

 医務室を出ると長い廊下が続いており、廊下の窓からは太陽の暖かな光が差し込んでいる。

 廊下の一番奥には階段があり上下に行けるようだ。


「キングは、建物の三階にいるが、あまり緊張しなくて良いぞ。」


「緊張しますよ、大都市エルドラの守護神とも呼ばれた、あのキング・エスカロードですよね?」

 

 ガハハと高笑いをして、ギルさんは先に三階への階段を上がって行った。僕は少し痛む足を必死に上げて、階段を上りついて行った。


 三階に上がると大きな扉の部屋が一つだけあった。


「さぁ、着いたぜ。深呼吸しときな、お前今にも倒れそうだからな。ガハハ!」


僕は深呼吸をして扉の前に立った。扉をノックし、声を上げる。


「アレク・ルチアーノです! 入ってもよろしいでしょうか!」


「いいですよ〜」


 中からは、優しく包み込むような、女性の声が聞こえ、少々驚いたがギルさんに、背中を叩かれ扉を開ける。


 部屋の中に入ると、背丈は低くニュートラルブラウンの髪の女性が紅茶をカップに注いでいた。

 その奥には、大きな回転式の座椅子に座っている、ワインレッドの髪をした大男が居た。

 

「君がアレクか。まずは、花屋の娘を救ってくれた礼を言おう。助かったありがとう。」


「いえ、僕の方こそ彼女には助けられました」


 キングのお礼の言葉に、咄嗟に頭を下げてしまう。


「アレク、君が(ソウル)の力を使ったのは、初めてなんだな?」


「はい、そうです。」


「そうか…君の狼も?」


「はい、ずっと一緒に暮らしてきましたから。」


 キングは手元の資料を見ながら、話を進める。


「君と狼の、(ソウル)の力は、とても強いものだ。証拠に君が、一撃放っただけで倒れてしまったようにね。」


「面目ないです…」


キングに痛いところを突かれ、少しうなだれる。


「いや、気にする事はない。人は成長できる生き物だからな。そこでだがうちに入って、強くなる気はないか?」


「良いんですか!?僕なんかが入っても?」


「あまり、自分を卑下するんじゃない。自分が一番だと思わないと成長できんぞ?」


 キングは表情一つ変えず淡々と言葉を発する。彼はそれだけの意思の強さを持っているのだろう。


「是非、入れてください!このファミリアに!」


「そうか…では、よろしく頼むぞ、アレク!」


「はい!」


 最後に笑みをこぼしたキングからは、父親の様な優しさを感じた。


 握手を交わし部屋を後にした僕は、廊下で待っていたギルさんとこれからの挨拶を交わす。


 ギルさんはこれからはアニキと思って良いんだぞと大声で笑い、僕の緊張をほぐしてくれた。

 ついでにギル兄と呼んで良いんだぞと念押ししてきたので、これからギル兄と呼ばせて貰うことにした。






 資料を睨みつけるキングのそばには、マリーが紅茶を飲みながら座っていた。


「マリー、狼の様子はどうだ?」


「ガルムです、キング。ガルちゃんですが目立った外傷は無く、内臓他精神にも異常は見られませんでした。」


「つまり?」


「ガルちゃんは初めて、(ソウル)の力を使ったにも関わらず何の異常もない、それどころかまだ力に余力すら残っている。相当、(ソウル)の器がデカいです。」


「アレクの方は?」


「全身筋肉痛に加え、少々の記憶の欠如、精神は問題ないです。アーマー型なので体全身が、ついていけてません」


 双方情報だけを淡々と語り、感情は薄く事実だけを捉えていたが、ここでマリーが少し動揺しながら喋りだす。


「ですが彼、サイモン博士の情報によるともう一つあるみたいなんです…」


「何がだ?」


「魂です…」


 感情を出さないキングだが、椅子から立ち上がり声を上げる。


「何!?」


「ですが、サイモン博士も何なのか見当も付かず。全く動き出す気配も無いと。」


「そうか…では引き続き観察を頼む。」


「分かりました。キング。」






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