5話 初めの一歩
僕が目を覚ますと、真っ白なベッドに横たわっていた。
横を向くと、キクノも隣のベッドで眠っている、良かった…守れたんだ。その側では白衣を着た女性がカルテを見つめている。
「あら起きたのね、おはようアレ君。」
「おはようございます?」
誰だ、どこだ? 全身が軋み、ろくに動けない。そうだガルムは……!
「すいません、ガルムはどこに?」
「ガルちゃんはもう元気に走り回ってるわ、皆んなと一緒にね?」
「良かったぁ、……っとすいません貴方は?」
「私はマリー・ハート、マリー、マリーちゃん好きな方で呼んでいいわ。」
彼女は、プラチナブロンドの髪で背は少し高めのようだ。それでいて胸がとても強調されており今の僕には、ほんの少しだけ本当に少しだけ刺激が強い…
「マリーここは?」
「ここはキングファミリアの拠点にある、医務室よ。君は力を使った後倒れてここに運ばれたってわけ。」
「キクノに怪我は?」
「大丈夫よ、かすり傷程度だから。」
良かった、僕は前に一歩進めたのだ。魂の力を使うことが出来たんだ。倒れたけど…
「ノヴァちゃんが運んできてくれたのよ。あとでお礼を言っておきなさいね。」
「ノヴァちゃん?」
遠くからドスドスと歩いてくる音が近づいてくる、その音は部屋の前で止まった。
ドンドンとノックの音が部屋に響き、追って漢らしい声が聞こえてくる。
「ギルだ!入って良いか?」
声が聞こえた途端、マリーはソワソワし出し、髪の毛を整え、姿勢を正した。
「どうぞ、ギル様」
「ギル様?」
「オウ!邪魔するぜ!」
入ってきた瞬間に分かるデカさ。190近くはあるじゃないかと思う背の高さに、服の上からでも分かる筋肉量。ブラウンの髪の漢が近づいてきた。
「オウ、マリー今日も綺麗だな。」
「いえ、そんなことは!」
マリーは露骨に照れていた。
「どうだ、坊主。体の調子は?」
「全身が痛いです…」
「ハッハッハ!そりゃそうだ、魂を重ねるのは初めてだったんだろ?」
「はい…すいません、失礼ですが貴方は?」
「そうだな自己紹介がまだだったな。俺はギル・ヴォルフ、ファミリアの兄貴だ!ギル、ギル兄、好きに呼んでくれ」
ギルさんから感じる安心感は心地よく、それ以上に自分より数段も格上だと力強く伝わって来る。
「マリー、アレクをもう少し楽にしてやれないか?」
「ハイ、少しお待ちを。エルクを連れてきますわ。」
「オウ!」
マリーは急いで部屋を飛び出して行った。ギルさんはもう少し待ってろよと笑い、ついでに僕の話を色々と聞きたがった。
「お待たせ…」
「ヒィーイーン」
部屋に入ってきたマリーの後ろには、僕の半分ぐらいの大きさの茶色いシカがいた。
「紹介するわ、私のパートナーのエルクよ。」
「ヒィーーン」
シカはコチラを見ると小さな尾をチョコチョコと動かしている。マリーは、はやくしなければと急いで心を落ち着かせた。
[クロスソウル] 獣機 エルク
マリーの身体はなんの変化もないように見える。
「そうね、本当は輸血が良いんだけれど。アレ君には出来ないのごめんなさいね」
そういうと彼女は彼女の血を抜き取り何かをしている。その間にシカの能力を教えてもらった。
毎年生え変わり、何キロにもなる角を支える部分の細胞は、再生能力が非常に高く、その力を使わせてもらってると言う事らしい?
そうこうしている内に塗りぐすりを渡してくれた。
「その薬を手や足に一か所ずつ塗ってもらえる?」
「ハイ!塗りました。」
「後は、私が触っておわり。」
そう言って、彼女が僕の体を触り始めた。診察が終えると痛みはほとんどなくなった。
「歩けるか、坊主?」
「はい、歩けそうです。」
「じゃあ行こうか、俺たちのキングの所へ!」