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27話 水の都アクアホルン


 長かった道のりも、終わりが見えてきた。

 先程から見え始めた水の都アクアホルンは、夜のライトアップによって、美しい輝きを乱反射させて街全体が光っていた。


 いよいよアクアホルンの街に入ると、街全体に水が流れていて、噴水や水のオブジェさらには小さな滝までもが町中に点在していた。


「今日はもう夜も遅いですから、宿に泊まってパッチーノファミリアには、明日の朝出向くとしましょう。」


「そうだね。お疲れ、ノヴァ!」


 馬車を見つけた宿屋の空き地へと止めて、少々疲れている様子で降りてきたノヴァに対し、リナリアはまた頭をくしゃくしゃと撫でていた。

 その様子を僕がニヤニヤしてみていると、ノヴァにお前はあとで説教だ… と脅された。


 宿屋で部屋をふたつ取り、ノヴァと僕で一部屋。リナリアで一部屋とる。部屋の窓から外を眺めると、水が彩る綺麗な景色が目に飛び込んでくる。


「流石、水の都アクアホルン。何処を切り取っても綺麗な街並みだな。」


「うん、ガルムもチヴェッタも自然が多いから嬉しそうだよ。」


 ガルムとチヴェッタも窓辺に寄り添い、外の景色を眺めている。

 やはり動物達は自然が好きなのだろうか、エルドラでは感じられない喜びが二匹から滲み出ていた。


 宿の水も綺麗な水が使われており、宿のシャワーはいつもより気持ちがいいような気がした。

 アクアホルンは人気観光地としても有名らしいのだが、こういう所が人気の理由なのだろう。


「さて、明日に備えて寝るとするか。」


「そうですね。」


 外の水が流れる音を子守唄に僕は眠りについた。



 翌朝、僕達は準備を整えて、宿屋からパッチーノファミリアのホームへと向かう。


 外へ出ると、昨夜のライトアップされた街並みもとても綺麗だったが、それに匹敵するほどに、優雅な光景を、朝日に照らされた水流達が作り出していた。


「ノヴァ、パッチーノファミリアのホームは何処にあるの?」


「そうですね、アクアホルンの上段ですね。」


「上段?」


「あぁ、そもそもアクアホルンの構造から話しますか。」


 リナリアの問いかけに、ノヴァは即対応する。やはりリナリアの事をよく理解しているようだ。


 アクアホルンの構造としては、都市が円形になっており、中心には湧き水が噴き出る、巨大な噴水が設置されている。

 そこから流れ出る水は、四方八方へと流れて、町中に水を運んでいる。

 

 さらに下段と上段に区画が分かれており。下段はお店や宿屋などが建ち並び、観光客が主に訪れる場所になっている。


 上段は、住宅地になっていてアクアホルンに住む人達が暮らしている。そこにパッチーノファミリアのホームも存在しているらしい。

 上段へは巨大な階段が街中に点在しているのでそこから上がれるようだ。


「あっ! あったよ階段!」


 リナリアは、階段を見つけるや否や駆け上がっていく。そこへガルムとチヴェッタもついて行った。

 一番上まで上がったリナリアは、手を振って僕とノヴァを呼ぶ。


「全く… あの人は…」


 悪態を小声で囁くノヴァだったが、その表情は柔らかい笑顔だった。


 上段へと上がったノヴァはあたりを見回す。


「ホームは見ればわかるって話なんですけど……」


「ないねぇ?」


「そうですね。」


 ノヴァに続いてリナリアと僕もあたりを見回す。それをガルムとチヴェッタも真似していた。しかしそれらしき建物は見つからない。


「ねぇ!! あれ!!!」


 リナリアは突然声を上げて、指を指す。リナリアの指した先には、巨大な噴水があった。


「何を言ってるんですか、リナリア… あの巨大噴水はずっと見えてたじゃないですか…」


「ちゃんと見てよ! 噴水の中!」


「「え?」」


「バウ?」 「ホゥ?」


 僕達は、リナリアに言われた通り噴水を凝視する。すると噴水の中に建物らしき物体が見えてきた。


「「…!!」」


「ほらね、あるでしょ! 私、目はいいんだから!」


 驚いて固まっている僕達に対して、リナリアはしたり顔で抗議してくる。


「灯台下暗しだったな。」


「うん、全然気づかなかったよ。」


 リナリアはガルム、チヴェッタと一緒に意気揚々と前を歩いていく。僕達は驚きを隠せないまま後ろをついていった。


 噴水の下へとたどり着くと、池のように水が溜まっていて、その上に建物へと続く白い橋が掛かっていた。


「よし行こう! ゴー!ゴー!」


「待ってください、リナリア!」


「そうですよ! 一人で行かないでください!」


 先へと、手を振ってどんどん進むリナリアに、僕達はついて行くので精一杯だった。

 リナリアはこの中で一番年上なのだが、少し自由すぎる気がする。まぁそこもリナリアの魅力なのだろう。


 いよいよパッチーノファミリアのホームへと辿り着いた。

 宿屋からは見えなかったが、湧き水は頂点から流れホームの後ろ半分を覆い被さっていた。前面はホームの全体が見える。


「でかいなぁ。」


 ホームはレンガ造りになっており、見上げるほどの高さがある。バルコニーがいくつか飛び出ており、花やツタが絡み付いていた。


「行くぞ! アレク!」


 僕が上を見上げて唖然としていると、ノヴァに呼び寄せられる。


リン!リン!


 ノヴァはドアの横に取り付けられた、金色の大きなドアベルを鳴らす。


ガチャ


「お待ちしておりました。キングファミリーの皆様。」


 大きな扉から出てきたのは、礼儀正しいこれまた大きな中年の男だった。

 男は、肌が黒く、白髪を綺麗な坊主にしており、背はキングより大きく感じる、また両の腕や肩から張り出た肉の塊により、よほど筋肉質な事がわかる。


「こちらが、チーノ様のお部屋です。」


 螺旋状の階段を登り、男に案内された先はホームの一番上の部屋だった。ボス達は一番上が好きなのだろうか?


「チーノ様! キングファミリーの皆様がおいでになりました!」


「あら、いいですわ。通してください。」


 中からは低く落ち着いていて、艶めかしい女性の声が聞こえてくる。


ガチャ


 ドアを開けると、海のように青く腰まである髪をなびかせて振り返る女性がいた。その光景はさながら水辺に横たわるウンディーネを見ているかのようだった。


 さらにその左右には、青髪の男の子と女の子が立っていた。


「よくおいでくださいました、キングファミリーの皆さん。」


「こちらこそ、お呼びいただきありがとうございます。」


 ノヴァの紳士的なお辞儀を見て、僕達も後に続いた。


「どうぞ、おかけになって?」


 パッチーノに促されて僕達は、パッチーノの前の椅子へと座る。


「みなさんお若いですね、初めて見る方ばかりだわ。それにワンちゃんとフクロウちゃんもね?」


「すいません! 紹介が遅れました。」


 僕達は順番に自己紹介をした。


「ありがとう。次は、ワタクシ達の番ね。」


 するとパッチーノはおもむろに立ち上がった。


「ワタクシは、パッチーノのファミリアの女王(ミストレス)。パッチーノ・オーデエスですわ、気軽にチーノと呼んでくださいませ。」


 よろしくね? とパッチーノは右手を出し、僕達に握手を求める。僕達は順番に握手を交わした。


「では、次は私が。」


 次に声を上げたのは、僕達の後ろへ立っていた男性で、先程案内してくれた人だ。


「私の名前は、クロウズ・ハウル。外のバルコニーで日に当たっているのが、私の獣機ギュスターでございます。」


 とても丁寧な口調で、クロウズは紹介をする。クロウズが指したバルコニーを見ると、大きなワニが心地良さそうに日光浴をしていた。


「次は俺様だ!」


 声を高らかに上げ、注目を集めたのは青髪の少年だった。背丈は僕よりも低く、隣にいる女の子と大差ない、少年の口調からは傲慢さが垣間見える。


「俺様の名前は、ベネツィオ・アクアーノ! ベネツィオ様と呼ぶんだな!」


 何処か既視感が… そうか、ベネツィオはハイドに似ている。


「コラ! ベネツィオ! そんな態度じゃダメでしょ! すいません皆様、失礼いたしました。」


 隣の女の子がベネツィオを叱りつけ、そのまま僕達にお辞儀をした。


「私はベネツィア・アクアーノ。ベネツィオの双子の姉ですわ。」


「俺様が、兄貴だ!」


「もう、ベネツィオは静かにしててよ!」


 言い争う二人の腰には、一般的な剣がぶら下がっていた。


「ほら、静かになさい。お客様の前ですよ。」


 チーノの鶴の一声で、二人の喧嘩は呆気なく沈静化する。チーノは、自己紹介はこの辺にと今日の本題に切り込む。


「今回お呼び致したのには、理由がありますわ。」


「チーノの能力で、何か見えたのですよね?」


 ノヴァが僕達が知っている情報をもとに問いかけをする。


「えぇ、その通りですわ。その内容なのですが、断片的にしか見えてないので詳しくは分かりませんけれど、各地で悪魔の力を使い町を襲うファミリア達、強大な力で世界を滅ぼそうとする人々が見えましたわ。このままではまた大戦争が起きてしまいますわ!」


「悪魔ですか!? 悪魔というのはもう何年も前に討ち滅ぼされて封印されているのでは?」


 チーノの言葉に、動揺を隠せないノヴァは、必死に問いかける。


「いえ、確かに魔王ディアボロは封印され、大多数の悪魔達も魔界へと帰ったとされています。しかし、少数ながらも人間界に悪魔達が残っているという噂も囁かれていますわ。」


 ノヴァは考え込むように、頭を抱えた。


「今回、ワタクシの力で見えたのは、悪魔の力を使っているファミリア達でしたわ。」


「誰が悪魔と手を組んでいるか、分からないという事ですね?」


 僕の問いかけに、チーノは無言で頷いた。


「だから今回は、信頼できるファミリアだけとつながるために、あなた方を直接派遣してもらったのです。」


 急に悪魔が現れただの大戦争が起きるだの言われてもピンとは来なかったが、僕とノヴァは思いのほか暗い話で一気に落ち込んでしまう。


「実は、黙ってて申し訳ないのですが、見えたものはもう一つありまして。」


「何が見えたんです?」


 リナリアは興味津々で聞いた。


「実は、ここへ………」


ドガァーン!!!


「「「……!?」」」


 外からとてつもない爆発音がして、全員が一斉に窓の外を見る。外には、大量の水飛沫が上へと上がっていた。


「皆様! 急いで外へ!」


 チーノの掛け声によって、全員で階段を駆け下り、ホームの外へと出る。


 すると、さっきまで何もなかった噴水の受け皿に、巨大な岩が二つ落ちていた。

 その様子を、ホームから掛かっている橋の上で、眺めている男性がいた。


「誰だ、お前は!」

「バウ!」


 僕とガルムが声を上げると、その男性はこちらを向いた。


「おや? 皆様お揃いで!」


 男性は両手を広げて、こちらへとゆっくり歩いてくる。


 まだ戦闘経験も少ない僕でも分かった、その男からはとてつもない威圧感と強者のオーラが滲み出ており、近づいてこられるだけで冷や汗が出てくる。


「初めまして! 私は、 [悪魔教団 アドヴェントドグマ]の宣教師をしております! バーロック・アルカナンと申します!」


 バーロックは、ホワイトスーツを着こなし、頭には白い中折ハットをかぶっていた。

 そのハットを外すと金髪の髪が現れる。そのままバーロックは、紳士的なお辞儀である、ボウ・アンド・スクレープの形をとった。


「以後お見知り置きを…」


 バーロックはニヤリと笑った。

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