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2話 情報屋ハイド


 地図のゴール地点にたどり着くと、赤煉瓦のこじんまりとした建物があった。その建物には、大きく店名のハングリーと書かれた看板と時計がかかっていた。時計は一時五十分をさしている。


 ガルムを外で待たせ中に入ると、白い髭を蓄えて歳の割には、ガッチリとした肉体のマスターがいた。

 その他は客がまばらにいるだけで、情報屋らしき人物は見当たらない。


 入り口で辺りを見渡しているとマスターが声を掛けてきた。


「食事しに来たんなら、好きな席座っていいよ。」


  優しい声色のマスターに諭され、僕は長いカウンターの左端に座った。

 カウンターには僕一人しかおらず、目の前でマスターが洗い物をしているだけだ。


 静けさのなかに、何人かいる客の話し声が聞こえてくる。僕にとってはとても居心地の良い場所に感じた。


 ふと時計を見ると二時を少し過ぎていた。慌てて僕はマスターに注文する。キクノに教えてもらったメニューを復唱する。


「マスター、オムライスとイチゴミルクをアイツに奢ってくれ。」


「あいよ。」


 マスターは黙々と調理を始める。

 マスターが調理を始めて、ものの10分ぐらいだろうか、誰もいないはずの隣の席にマスターが料理をおく。


「はい、お待たせ。」


 トロトロの卵に包まれたチキンライスの上には、ケチャップが程よくかけられている。

 見ているととても美味しそうでついよだれがでてくる。そういえば村を出てからロクな食事をしていない事を思い出す。

 一緒に出てきたイチゴミルクは、ビールジョッキになみなみに注がれて出された。


「これこれ〜! これが世界中で一番上手い!」

  

 僕は、驚きで声を出せなかった。なんの前ぶりもなく、音もなく、気配もなく、誰もいなかったはずのカウンター席。


 僕の隣にベリーショートで、真っ黒の髪をした、僕より少し背の低い男がいた。

 僕は手を震わせながら、彼に指を向け問いかける。


「誰だ‥君は?」


「お前が呼んだんだろ? 俺は情報屋のハイドってんだ。よろしくな! なにが聞きたい? なんでもいいぞ! 俺の知ってることは対価をくれればそれなりに話すぜ。」


 すごい速度で喋る彼は、オムライスを吟味している。


「いつ? どうやってここに?」


「なんだそれは質問か? じゃあ対価を払いな。そしたら答えてやる。」


オムライスをほうばりながら、おちゃらけて話す彼はとても情報屋には見えなかった。

 ビールジョッキに注がれていたイチゴミルクもいつのまにかなくなっていた。


「いや、今はどうしても聞きたいことがあるんだ!」


 僕は、ようやくたどり着いた蜘蛛の糸に興奮しながら喋り、前のめりになりながらハイドにきいた。

 

「僕は、この大都市の守護をしているキングファミリアに、どうしても入りたいんだ! どうにかして入る方法を知らないか?」


「いいぜ、教えてやる。その代わりに何か対価を払いな!金、情報、宝なんでもいいぞ。それに見合った事を教えてやる。」


 僕はすっかり忘れていた、ちっぽけな村から出てきた奴が金も情報も沢山持っているわけがないのだ。


「2000マルクなら…」


「アホか! そんなの1日の食事代じゃねぇか。悪りぃがそれなら教えられねぇぞ。」


 それは困るぞ。どうにかして情報を教えてもらわないと。


 僕はパニックで冷静さを失っていたが、ふとキクノとの最後の会話を思い出した。


「その… 実は花屋のキクノから紹介してもらったんだけど…」


「!? なんだよ、それを早く言えよ」


 オムライスをほうばり続けていたハイドだったが、キクノの名前を聞くと、飛び上がってこちらを見た。


「キクノさんの紹介だったらしょうがねぇ! 1回目は対価なしで教えてやる。次からはなんか持ってこいよな?」


「よろしく頼む!」


 何故、キクノに対してそこまでの信頼があるのかは分からないが、どうやら教えてもらえるらしいのでよしとしよう。


「いいか、まず最初にキングファミリアってのは…」


 さっきまで、子供のように食事に夢中だったハイドは、顔つきを変え情報屋の名にふさわしい量の言葉を喋った。


 教えてもらった物をまとめるとキングファミリアは、ボスであるキング・エスカロードを中心に多くのファミリーがおり、この大都市エルドラを守っている。

 

 主要メンバーはキングの右腕である、ケン・レッドメイン。若きエース、ノヴァ・アルトリオ。暴れんぼうの特攻隊長ギル・ヴォルフなど武闘派の人物が多くまさに大都市を守る警備隊である。


 キングの印象がとても強いが実際にファミリーを指揮しているのは女王(ミストレス)であるドルチェ・エスカロードであるとの噂も……?


 僕はとにかくファミリアに入ることだけを考えておりこんな情報も知らなかった。

 知る努力が足りなかったと落ち込みかけていると、ハイドがここからが本番だと空気を入れ替えて喋り出した。


「それで、そんなキングファミリアに入る方法だが。自力では無理だ、スカウト方式だからな。あと(ソウル)の力を使えることが入れる条件だ。」


「そんな… 」



 僕は落胆した。スカウト方式に(ソウル)の力だって? それなら僕は入れないじゃないか……。

 

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