5 自己紹介
入学式後、
僕は先生方に呼び出され、説教を受けた。
「代表挨拶を断っておいてこれは何だっ!」
と・・・。
理由は・・・わかりますね・・・。
でも事情を説明すると、
「・・・まあ、なんだ・・・その・・・強く生きてくれ・・・。」
なぜかとは言わないが、励まされてしまった。
「・・・・・・。」
そして肝心の姉には先生も姉の方には特に言うことはないといった風だった。
ただ姉が視界に入ったとき、
生徒指導の彼女にはどこか哀愁が漂っていた気がした。
・・・これは気のせいだと思いたいですね・・・。
・・・本当にあの姉は何なのでしょう・・・?
教室に戻り、
自分の席に着くと、
「おや?
さっきの親切な方?」
「み、美咲さまっ!
お、同じクラスになれて、あのその・・・。」
「落ち着いてください。」
「は、はいっ!」
・・・なんでしょう・・・なんかさっき不穏な言葉があったような・・・。
それはそうと、
「さっきはいなかったようですが、どこかに行っていたので?」
「う、うん。
お姉ちゃんに手伝ってって言われて写真撮ってたの。」
「なるほど・・・お疲れ様です。」
「あ、ありがとう・・・。」
それにしても何か忘れているような・・・ん?写真?
・・・そういえば・・・
「話は変わりますが、
親切な方、さっきは写真ありがとうございました。」
「い、いえ、と、当然のことですからっ!」
・・・やっぱり優しい方ですね・・・。
「わ、私の方こそ…ありがとうございますというか・・・その・・・。」
えっ・・・よくわかりませんね・・・。
「まあ何はともあれ、これからよろしくお願いします。」
・・・名前は知っているようですので不要ですね・・・。
「こ、こちらこそっ!
わ、私は湯坂 南って言います。
よ、よろしくお願いします。」
「ええ。仲良くしましょう。」
こうして親切な人の名前を知った。
すると、ほどなくして、担任が副担任の自己紹介が終わった後、
生徒の自己紹介の時間になった。
・・・来てしまいましたか・・・
・・・今、自己紹介なんてしたらどうなるかわかってますよね・・・
当然、平穏な生活なんて無理ですよ・・・。
「次は・・・美咲優くん、自己紹介お願いできるかな?」
なら当然・・・
「パス。」
「はいじゃあ次の・・・って・・・えっ?」
「先生、どうかしたんですか?」
「いや、えっと・・・気のせいかしら?」
「なにがです?」
「今パスって・。」
「気のせいですよ。」
僕は答える。
「・・・本当に?」
「ええ。」
僕はできる限りの笑顔を贈ることにした。
すると、女性陣からは顔を反らされる。
ん?
「そ、そうよね。ありがとう、美咲くん。」
すると、
「・・・小野先生・・・。」
副担任の無表情の女性が声を掛ける。
「うっ・・・美咲くん・・・自己紹介・・・。」
「・・・仕方ありません。
僕は美咲優。
以上です。」
「おい、美咲優って・・・。」
「さっきの・・・。」
・・・だから嫌だったのですよ・・・まったく・・・。
僕は再び本に目を落とす。
無表情だった方の先生の顔がやっちゃったみたいな顔になっていたが、無視した。
・・・さて、今日の昼はどうしましょうか・・・?
久々にちゃんとした料理でも作りましょうか?