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どうして泣くだけで済んでるの?!

 光の矢が僕の前に飛んでくる。そして、僕の前で爆発した。…そう、僕には当たらず、真ん前で爆発したのである。


「…え?」


 周りが煙でよく見えない。ただ、何かが、おそらく人間っぽい何かが僕の前に立ちふさがっている。両手を横に広げて僕をかばっている?


「ウワーン!痛いん…です!酷いんです!虐めなんです!死んじゃう…んです!」


 なんか、目の前にいるよくわからない何かが叫んでいる件。何がどうなっているの?!


 視界が開けてくると全貌がわかってきた。倒れている僕の前に、1人の女の子が立って背を向けている。髪は緑で、肩ぐらいまである。大分暗くなってきていたので服装は曖昧だけど、おそらく緑に黄緑のチェックが入ったジャンバースカートを来ている。スカートの丈が短いので倒れている僕が顔をあげれば中が見えてしまいそうである。見ないからね!


「何だ?誰だそこにいるのは?あ?」

「誰よ!今、化け物処理中よ?あんた、それを邪魔するっていうの?」

「ゴメン。急にくるものだから、魔法が当たっちゃったかな?泣かなくて平気だよ?ほら、そこを退いて?」

「ダメなんです!殺しちゃいけないんです!喧嘩はダメなんです!」

「はぁ?何言ってっんの?邪魔っていう言葉聞こえない?!」

「死んじゃうんです!辞めるんです!」

「おいおい、俺らに楯突くってどういうことだ?」


 マコトさんと呼ばれていた不良っぽい青年が球体の炎魔法を飛ばす。少女は僕を庇っている…、避けて!怪我する!


「ギャー!痛いん…です!熱いんです!ウワーーーン!」


 見事に攻撃が的中して、女の子は悲鳴をあげて大泣きしている。だ、大丈夫?逃げて…。僕なんて放っておいて逃げて!


「化け物を庇うなんてこのガキも頭がおかしいのよ。ちゃんと教育をした方がいいわね。悪い子には痛い目を見てもらうわ!土弾丸!」

「ウワーン!誰か助けて…下さいなん…です!酷い…んです!虐めなんで…す!」

「生憎ここは人通りが少ないからね。別に誰も君を攻撃したいわけじゃないよ?ただ僕たちはそこの子と楽しく勉強していただなんだよ。退いてもらえないかな?」

「だ、ダメなん…です!喧嘩…は良くないんです!話…し合うんです!」


 話し合えるんだったらこんなことになっていないよ!


「コウヘイ?大丈夫よ。見たところ弱そうだし、軽く吹き飛ばして目標達成よ!」


 今度は風魔法が飛んでくる。こいつら一体なんなの?!別に僕に攻撃するのは構わない。だって僕は化け物で人外で存在意義なんてなくて、裏切られて当然の立場みたいだから…。


 だけど、この子はただボコボコにされている人外…一応僕は見かけは人間のはずなんだけど…を助けようとしただけのはずなのに…、どうしてこの子を半殺しにしようとしているの?!


「い、痛いんです…!酷いんです!う…ウェーン…!」

「ほら分かった?貴女のしていることは間違っているのよ?分かったらどきなさいガキ!」

「ダメなん…です!喧嘩…はダメなんです!死…んじゃうん…です!守るんです!」

「退けって言ってんだろうがクソガキよお!!」


 不良青年っぽいマコトがそこいらにあった石を投げつけた。僕の記憶ではこれは魔法の練習のはずである。僕が魔法のマト役。だけど、いよいよ投石まで始まってしまった件。しかも、対象は人権がない僕ではなく僕を体を張って守っている女の子。倒れているから良く分からないけど…多分あの子の頭に当たった様な音がしたよ?


「痛いんで…す!酷…いんです!ウワーン!」

「ほら痛いなら早く退け!」

「この子の親はちゃんと教育しているの?全く、最近の子供はダメね。」

「この2人は君のことを思って心を鬼にして攻撃しているんだよ?本当は君にはこんなことはしたくないんだ。ほら、別にそこの奴隷を守る必要はないんだから退いた方が良いよ。君のお母さんだってその方がよいって言ってくれるって。」

「ダメなん…です!守るっ…て決め…たんで…す!もう、悲し…いお別…れは嫌なんで…す!」

「クソガキが一々うるさいわよ!」

「痛い…んで…す!ワーン!」


 女の子は、マコトさんとアヤさんが打つ投石や炎、風、土、他様々な魔法を体を張って受けている。僕なんかを守るために…。コウヘイ君は攻撃はせず、説得をして退けようと試みているみたい。アカネさんは傍観である。


 一応誰も突っ込まないみたいだから僕が突っ込むけど、あの女の子…固すぎじゃない?投石やら様々な魔法をモロ受けしているし、大泣きしているけど…どんなに彼女の前で爆発が起きても…逆に泣いているだけ。普通に考えれば泣くだけでは済まないよね?倒れるよね?気絶するよね?!それとも、僕の感覚が間違っているだけ?

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