僕の学生時代です
なんとなく、過去のことが思い浮かぶ。多分、僕は死期を察しているんだと思う。思い浮かべてみると…碌なことがなかった。ぶっちゃけ、どうして僕はまだ生きているんだろう。なぜ自殺しなかったんだろう、いやそれは分かる。僕が結局弱かったから…弱すぎる僕は自殺すら出来なかった。それだけである。
思い出した過去について…僕は、気付いた時には孤児院にいた。話によるとそれこそそこらへんに転がっていた唯の女の子だった様である。だから、誕生日も拾われた日らしいし、年齢も不詳である。ただ、見た目だけである程度の年齢が推測されてそれに誘導されるかの様に幼稚園や学校に通うことになった。
孤児だったこともあって、しかもよりにもよって僕の代には孤児院に同級生が全くいなかったこともあって学校に行っても知っている学生なんて誰もいるわけもなく…もともと読書が好きだったのが原因で、逆に友達を作ることができなかった。
だって、本好きが原因で孤児院中も殆ど本ばっかり読んでいて誰かと話す方法が全く分からなかったから。と言うより、本の中のキャラクターに憧れていたから。誰かと会話するよりそれこそ勉強していた方が面白かったから。
そんな中、10歳ぐらいの時に自分は周りと違うんじゃないかと思い始めた。別に当時、本の読みすぎとか中二病になったわけじゃないからね?何かと言うと…うーん、簡単に言えば相手の知識というか能力というか、技術というか力というか…この世界には一応魔力や魔法が存在するけどその魔力というか…を他人からいい意味で言えば借りることが、悪い意味で言えば奪えることがわかってきたのである。
いや、そういうのが出来るのはもっと昔から知っていたし、逆に言えば誰でも出来ると思っていた。だから、僕は幼い頃からその力を奪うという能力を使って色んなことをしてきた。試験の時は皆んなの知識を収集し、多数決や高確率な答えを試験用紙に書いてきた。体育の時は技術や力を奪って陸上科目は全て首席かそこいら。魔法の授業も魔力や呪文を周りから借りて酷使しまくった。
勿論、じゃあ普段からグータラしていたかと言えば違う。当時の僕はまだ、力を奪うと言ってもどうすれば効率よく採取できるか、またはどうすれば沢山保持できるのか常に考えて行動に起こしていた。だって、どんなに奪う対象が身の回りに腐るほどあっても、その力を保持できる量が少なければ結局意味がないし…長時間かけないと奪えない様では不意に先生から問題の答えを言うよう指名が来た時対応できないから。また、他人の力を保持し続けると苦しくなってくるし…返却も重要なのである。
今になっては、奪える量も対象に出来る規模もそのスピードも格段に実践で使える様になっているけど…返却効率だけはまだ若干効率が悪い気がする。と言うより返却する場合は、自然に持ち主に戻るのを待っている感じかな?誰かから奪うのは簡単でも、誰に返却するのかを指定するのは難しいのである。特に多数の場合はね!
それで、誰でも使えると思っていたからこそどんどん学校で使って行き、常に成績は優秀で…きっと皆んなも同じ様に力を好き勝手にやっているんだろうと思って、より良い力の回収効率を皆んなに聴きまっくった結果…10代初頭から地獄を見ることになってしまった。
まず、僕の相談に応答してくれる同級生は誰もいなかった。とは言え、研究熱心だった僕に対して初めて友達になってくれた子がいた。それが、アカネさん。一応言っておくけど僕は女の子だからね?!だから、女子と友達になっても問題ないからね。
アカネさんは結構無口な子だけど、その分僕の話はしっかり聞いてくれたし、僕の質問にも分からないながら一緒に図書館で探してくれた。答えは見つからなかったけどそれでも唯一協力してくれて、今でも学校で縁がある女の子である。はずなのに…なぜ?
ただ、大抵の同級生はそんなことはなかった。小説では特別な力を持っているとチヤホヤされる様だけど、そんなの絶対嘘だ!現実は絶対僕みたいな運命を辿る!!
まあ、大抵はそれこそ無視である。いや、それならそれでいい。無視の方がまだ可愛かった。驚異の力を僕が持っていると理解したその日から皆の態度が変わっていってしまった。
学校へ行って見ると、急に皆んなが僕のそばに寄らなくなった。そばに寄らないならまだいい。教室内を通ると皆んな揃って、机を避けるのである。僕が触ったものを受け取ると目の前で雑巾で拭き始めたり、あたかも僕が触った所にウイルスがついたかの様にそのウイルスを皆んなで擦りつけ合う。
僕の机には大きく「お前は人間じゃない!化け物だ!消えちゃえ!」って、定期的に描かれることになる。…わかってるよ、皆んなが力を取ったり出来ないことを理解し始めた頃から僕は人間じゃなくってそれこそ化け物だってわかり始めていたんだよ…。であれば、親もいなくてそこらへんに急に現れるはずないじゃないか…!だからってそれを、知っていることをわざわざ僕の机に毎回の様に書く必要なんてないじゃないか…!!
仕舞いには、「ミズハに触られると、ミズハ菌がついて化け物になる。」という言葉までまるで流行語の様に流行り始めた。もっとも、既にバイ菌扱いされていたこともあり、どちらが先に始まったのかは今となっては分からない。
実際、先生にも相談したが、初めのうちは対応してくれたものの規模が多すぎ解決には至らなかった。集団虐めに苦しんだ僕は虐めに対する本を買ってなんとか対処法を探そうとしたら、その本の中に…
「虐めは虐められる子が悪い。その子が周りとは異なる行動をするが故に出る杭となり皆から叩かれる。虐められたくなければ、虐められっ子自身が目立たない様な性格になる様努力するべきだ。」
と解釈出来る内容の本に巡り合ったこともあり、完全に心が死んでしまった。愛すべき書籍にすら見捨てられてしまったから…。いや、わかるの。言いたいことはわかるの。でも、じゃあ何故それで集団虐めに逢わなければいけないの?!僕は一体誰に迷惑をかけたの?誰かを僕は苦しめたの?!
今になって冷静になれば、虐めていた奴らはアカネさん以外全員なはずがないことぐらいはわかる。少なくとも大抵は傍観者かそこいら…もしくは冗談半分だったかもしれない。だけど、当時のまだ10代始めの僕は学校の生徒全員に…いや、碌に対応してくれなかった大人たちを含めそれこそ全員にこの世にいることの存在否定を受け続けることになった。しかも、その環境が4年間続くことになる。何故、僕はこの時に自殺しなかったのであろう…。この時死んでいれば、それこそ小説の様に転生して幸せになれたんではなかろうか…?