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その説得方法は卑怯です

 まあ、アマミちゃんが移動してくれたので立ち上がる。うん?立ち上がれる?体が軽い…え?怪我が治っている?!下を見ると…確かに僕の流血痕が残っているのにどういうこと?


「何があったんですか?!血まみれだったんです!治療したんです!」


 どうやらこの子が回復魔法か何かで治してくれたらしい。だけど、本当にこれで良かったのか…。確かに僕はこの子を助けた、それは良い。だけど、本来はそのまま僕もお終いのはずだった。どうせ死ぬなら巻き添えにと思って鬼畜魔法を放ってまでして…。だけど結果僕は生き延びてしまった!しかも4人同時に殺した。しかも最悪の方法で。警察も僕を捕まえに来ない。何せ存在がないものが被害者なのである。僕を捕まえる理由がない。


「ありがとう。…うん。」

「どうかしたんですか!まだどこか怪我しているんですか?!言ってください!治療するんです!」

「べ…別に…」

「嘘です!顔に辛いって書いてあるんです!言うんです!」

「だ…だけど…」

「ムー、言ってくれないと…言ってくれないと…!」


 言葉に詰まってるよ?!


「そ、そうなんです!言わないと今ここで私は裸になって踊るんです!それが嫌なら言うんです!」


 なんだそりゃ?!訳分からないよ?唯の変態さんだよ?これって僕がNG出したら本当にそうするつもりなの?!…とは言っても、本当にそんなことされるとたまった物じゃないので、言うことにする。少なくとも僕の過去よりこの子の何かを守る方が優先である。と言うよりなんかもう脱ぎ始めてない?!


「わ、わかった…わかったから。…言うから…だからちゃんと服を着て!」

「わかったんです!ちゃんと言ってくれるんです!でも、若干暑かったので脱ぎたかったんです!」


 やめろー!女の子が裏山とはいえ外で脱いじゃダメ!!とはいえ、何をいえばいいんだろう…やっぱり経緯なのかな。


「うーん?アマミちゃんだよね?アマミちゃんは化け物がこの街にいるって話は聞いたことある?」

「化け物ってなんですか?!わかんないんです!」

「そう。…皆んなは僕のことを化け物って呼ぶんだ。元々僕は唯の孤児でちょっと周りが出来無いことが出来ちゃっただけだったんだけど、それだけで化け物呼ばわり。

 さっきまで、そこに穴が空いていたでしょ?あれも僕がやったの…そして僕は、いよいよ本当に人を殺してしまったの…アマミちゃんは分からないかもしれないけど…殺しちゃったの!本当に化け物になっちゃったの…!僕はこれからどうすればいいの…!どう生きればいいの?!

 アマミちゃんだって、さっきの戦い少な…くとも僕が魔法を使って粉々にしちゃったことを見た…でしょ!そうだよ、僕は化け…物なんだよ!アマミちゃんも僕のこ…とそう思っ…ているん…でしょ!だっ…たら早…くどっか…行ってよ!二度と…僕と関…わら…ない…でよ!早…くど…っか…行っ…て!!」


 もう最後の方は、泣きながらだったので舌すらろくに回らなかった。立つこともままならないのでそこで座り込む。…もうこりごりである。裏切られるのも叩かれるのもボコボコにされるのも散々である。このまま首でも釣ろうかなと考えている…ここで僕が死ねば少なくともここで何かがあったとは誰かが気づいてくれるはず。


 …いや、結局唯の自殺処理で終わるだけかもしれない。その後、いじめ問題云々で学校側は摘発されるのかもしれないけど死んだ者は帰ってこない。会見かなんかで謝罪があってそれだけ。他の学校はちょっとは気にしても他人事。そして、バレると面倒臭いので隠蔽してまた死んでの繰り返し。被害者が命をかけて訴えても所詮はその程度である。こんな腐った世界になんで明日のために生きなければならないの?


「アマ…ミちゃ…ん。どっ…か行っ…てよ!結…局そうな…んでし…ょ!もう僕はこり…ごりな…」

「よく分からないんです!化け物ってなんですか!化け物って誰のことを言ってるんですか!」

「そ、それは僕で…」

「化け物って名前なんですか!そんなの名前じゃないんです!名前を言うんです!」

「え…名前?」

「私はアマミっていう名前なんです!お姉ちゃんの名前はなんですか!」

「ぼ、僕は…ミズハだけど…お姉ちゃ…ん?お兄ちゃんじゃ…なくて…?」

「どう見てもお姉ちゃんなんです!綺麗な青色の長髪なんです!女性にしか見えないんです!」


 え?ぼ、僕は男装をしていて基本バレるはずは…って、帽子が知らないうちに地面に転がっている件。幾度か吹っ飛ばされた時に落ちたのだろうか…。ああ、この子には性別までバレてしまった。もう今日は人生最悪な1日である。中途半端に生き延びてそれでいてより生きる苦しみが悪化してしまって…。


「ミズハさんなんです!ミズハさんなんです!化け物って名前じゃないんです!」

「そ…そうだけど…皆んながそう呼んで…」

「だからなんですか!ミズハさんなんです!ミズハさんはミズハさんっていう名前なんです!皆んなって誰ですか!知ったこっちゃないんです!ミズハさんを決めるのはミズハさんなんです!」

「だ、だけど…もう皆んな僕を化け物だって…僕だって、こんな変な能力を持っているから化け物だって…人間じゃなくってただの化け物って…」

「人間じゃなければ化け物なんですか!じゃあ、そこで鳴いている鳥さんやフクロウさんも化け物なんですか!どうして人間だけ特別扱いなんですか!

 なんなら、魔女っていう私も化け物扱いですか!ふざけるんじゃないんです!私は人間さんとも友達になるんです!容姿も一緒なんです!私だって人間なんです!魔女というレッテルがあるだけなんです!それだけでなんで化け物扱いされなければいけないんですか!どうなんですか!」

「そんな、…アマミちゃんは化け物とかじゃなくてちゃんとした女の子で…だけど僕は…みんなから化け物扱いを何年も…」

「わかったんです!ミズハさんはミズハさんって決めるんです!私が断言します!ミズハさんは化け物じゃないです!れっきとした人間です!」

「だ、だけど…人間が使えないような力があって…」

「だから…それがなんだっていうんですかあぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」


 う…、この子は一生懸命僕を認めようとしてくれている…。痛いほどわかってくる…。だけど僕は自身のことなのに僕自身で自身を認めようとすることすら出来ない。もう情けなさすぎる。涙が止まらない。この子の方が10歳行くか行かないかのような雰囲気なのに僕より大人びて見える。


「何があったか覚えていないですけど、私がさっき虐められていた時守ってくれたじゃないですか!身体中血だらけで今にも気絶しそうだったのにそれでも守ってくれたじゃない…ですか!私の盾に…なってくれたじゃ…ないですか!

 そこのどこに…化け物要素があるんで…すか!むしろ、そこまでボロボロでも立…ち塞がってくれる人間さんは…それこそ英雄さ…んなんです!誰にも真似できるもの…ではないんです!私にとって…英雄さんなんです!化け物じゃないんです!いいですか、化け物…じゃないん…です!!!」


 身体中を震わせてしゃがんで泣いている僕に泣きじゃくった女の子が後ろから抱きついてくる。なんだか、それだけでものすごく安堵感がある。不思議なものである。僕はもう既に誰も信用しないって決めた。誰とも関わらないと決めた。碌なことにならないから。だけど、この子だけは例外で良い気がする。ここまで腐った僕に対してもここまで接っしてくれて…僕が化け物云々言っても逃げるんじゃなくて説得してくれて…この子は一体なんなんだろうか?わかっているのは魔女ということだけである。

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