9017列車 -41.2℃
初音橋の看板を写真に収めてから、道道293号を走る。国道239号に豪州紙、そのまま幌加内方面へと走る。森林というか、湿原っぽいような場所を走っている感じである。背丈のあまり高くない草が生えている光景というものはそう言う印象を引き立てているのかもしれない。
時速75キロから80キロで走る。遠くをもやっている光景を見るとライトを付けたくなる。
しかし・・・。
「前から車が来ない・・・。」
国道239号だよね、ここ・・・。
車を幌加内町へと走らせるとちょうどカントリーサインが見えてくる。ここだけは他のカントリーサインとは異質だな。カントリーサインは大体マスコットキャラクターみたいなものを描いているものがあるのだが・・・。ここは数字だ。
「-41.2℃」
これの持つ意味が分かるとゾッとする。
「ここで記録された最低気温なんだよね。」
今治が言う。
「・・・。」
想像も出来ない数字に僕は呆気にとられた。確かに、日本一低い気温を記録したのは旭川とか北海道の内陸部だったとは記憶している。それがここだったのか・・・。この辺りは日本有数の豪雪地帯。昔、幌加内町を通っていた深名線という鉄道線は豪雪地帯であるが故に廃止を見送られた前例がある。すなわち、鉄道以外の交通機関が全てまともに機能しなくなるのだ。
(それだけの場所がここか。)
峠道を車は走る。
さっきのカントリーサインを通り過ぎてから、車はずっとスピードを維持したままだ。行く手には信号一つ現れはしない。時折、反対側から対向車が走ってくるだけだ。それも数は多くない。一台が猛スピードで走って行ったかと思うと、次に来る車はもういないのだ。
久々に信号のある交差点を通過し、道なりに走る。何十分か経ってから街が見えてくる。小さい街だが、士別市街を抜けてから久しぶりに見る人の生活感のある場所だ。政和という場所らしい・・・。
「政和って温泉あったよねぇ。確か、枯渇したとかなんかで温泉は結局なくなっちゃったって話だったと思ったけど。」
僕が言うと
「温泉が枯渇ってここじゃなかったと思ったけどなぁ。」
と今治。高槻は何言ってるのか分かってなさそうだ。
「あれ、そうだっけ・・・。」
(記憶違いだったかな・・・。)
後で調べてみることにするか。
街を越えると道の駅森と湖の里ほろかないに到着。今治はカントリーサインを購入すると、時間はお昼になっている。道の駅から幌加内の待ちに抜けるにもまだ時間がかかるが、お蕎麦を食べようと言うため、道の駅から幌加内の市街へと進む。
道の駅森と湖の里ほろかない→あじよし食堂
カーナビを設定すると今まで来た道をさらに進んでいくことになる。
道の駅を出て右に曲がるとすぐさま峠道に入る。坂を駆け上り、前の視界が開けたとき前に鉄橋が現れた。
「おっ、なんだこれ。」
僕にはそれがなんの鉄橋なのかはすぐに分かった。しかし、こんなに人の手が入っていないような場所に突如として現れる人の建造物がなんとも不釣り合いだ。
「第三雨竜川橋梁かぁ・・・。こんな所にあったんだな・・・。」
今治が言う。
僕たちの車は第三雨竜川橋梁の脇を通り過ぎ、幌加内町へと急いだ。