9021列車 文明から遠い道
「サロベツ」の出発と天北銭の資料館を見てから今治は道の駅おといねっぷにカントリーサインを買いに行った。しかし、すぐに戻ってくる。
「やってなかったのけ。」
そう聞くと、
「ううん。カントリーサインは反対のお店で売ってるって言ってた。」
ああ。そう言うところもあるのね・・・。
北海道旅客鉄道宗谷本線音威子府駅→道の駅ピンネシリ
再び国道275号線を走る。走っている間にふと左の風景を見ると一定の高さを保って伸びる場所がある。多分あの場所が天北銭の通っていた場所だろう。鉄道ファンにはなんとなくだが、往年の姿というものを想像できるスキルがある。それは今治も同じである。
「あの辺り通ってたんだろ。」
今治のそういう声も耳に入ってくる。
辺りが暗くなり始めた頃、今日の最後の立ち寄り地道の駅ピンネシリに到着する。ピンネシリで今治がカントリーサインを狩った後、車を少しだけ動かして近くのピンネシリ駅跡を見る。と言っても石碑と駅名標くらいしかそれを伝えるものは残っていないけどね。
「さて、晩ご飯は音威子府蕎麦でも食べる。」
今治が言った。泊まるホテルは決まったものの晩ご飯は時間的に無理とホテル側から断られたためだ。その為、夕食は自分たちで確保しなければならない。そこで候補に挙がったのが音威子府の蕎麦だ。
「それはいいけど、食べられる場所ある。」
「午後7時まで食べられるところがあるからそこ行こう。」
そういった瞬間僕はどの店のことを言っているのか分かった。あれだ。音威子府村に入って最初に目に入ったあのお蕎麦屋さんだ。
「あれ、今日やってないような気がしたけど。張り紙とかしてあったし。」
「マジで。まぁ、行ってみればいいだろ。やってなかったらセイコーマートでいいら。」
と言うわけで確認もかねて音威子府に戻ることにした。カーナビはそのまま北に進み、天塩中川を北側からアプローチするように案内していたが、音威子府経由とすることになる。
道の駅ピンネシリ→一路食堂
結果は残念。お店はやっていたものの食事は出来ないと言うことだった。まぁ、食事が出来ないだけで何かしら売ってはいたみたいだけど・・・。というわけでそのまま天塩中川に向かうことになった。
一路食堂→ポンピラ・アクア・リズイング
国道40号線を走り、天塩中川へと急ぐ。ほぼほぼ視界の効かなくなったものの国道40号の対岸を走る宗谷本線は目をこらせば見ることが出来る。
「・・・なぁ・・・。」
高槻が口を開いた。
「んっ。」
「さっきから前の車がメッチャ告白してくるんだけど。」
と言った。
そう言われた前の車を見てみる。高槻の言うとおり結構な頻度でブレーキを踏んでいる。その旅に三つ赤いライトが点灯する。
「・・・。」
「また踏んだ・・・。あっ、また踏んだ。・・・まただ・・・。」
スピードの調節下手なのかな・・・。というよりスピードを調節するだけならアクセルで出来る。わざわざブレーキを踏む必要は無い。
「これ、後ろ走っていたくないなぁ・・・。」
僕は少々嫌な予感がする。
高槻は前から車が来ないことを確認して、その車を抜いた。この場合はこの方が安全だ・・・。
それにしても・・・。
「前から車来ないなぁ・・・。後ろに車がいるだけまだましだけど。」
「こんなところで壊れたり、インキーしたりしたら嫌どころの騒ぎじゃないな・・・。」
「ところで、晩ご飯はセイコーマートで買うのけ。」
「ああ。セイコーマートはこの道沿いにあるから、進んでけば分かるよ。」
道沿いねぇ・・・。
しばらく進むと天塩中川の街明かりが見えてくる。国道40号線はかなり離れた位置を走る。街と国道40号線の間には天塩川が流れている。天塩中川に案内するカーナビが橋を渡るように指示していたものの、セイコーマートに寄るために通過する。しかし、対岸の天塩中川の街明かりが後ろに通り過ぎた後もセイコーマートはいっこうに現れない。
「・・・セイコーマートってこんなに先にあるか。」
「あるだろ。」
「いや、どう考えてもないだろ。天塩中川のセイコーマートってもっと街中にあったぞ。」
僕はそう言った。今日泊まるはずだったキャンプ地はセイコーマートのすぐ近くと聞いていたためだ。その為、天塩中川のセイコーマートが街中にあったこと、キャンプ地は思っていたほど近くではない(と言うよりもどこか分かっていない)と言うところまで分かっている。こんな風になってしまってはセイコーマートなんて次の街に行くぐらいまで無いぞ。問寒別とか、幌延とか・・・。
「そう。」
「とりあえず、カーナビに従っていけば。」
カーナビに従って次の左に曲がれと指示する場所で左に曲がる。すると・・・。
「うわっ、暗ッ。」
そこには明かりが無く、文明とはほど遠いあるファスト道路が暗闇に向かって続いていた。
「こえぇ・・・。」