第9話(ようやく町が見えてきた)
こうして俺は、ミカと一緒に街を目指すことになった。
確かこちらの方に大きい街があったと事前に調べておいた……調べさせられた、のも今考えるとよかった……素直にそうは思えないが、よかったのだろう。
そう思いながら途中、幾つか分岐する道を歩いていくこと一時間と少し。
途中馬車等にいくつも追い越されながら土の道を歩いていく。
しばらく晴天が続いていたのだろう、道が乾いていて歩きやすい。
これが雨上がりの時など、アスファルトの舗装された道路が恋しく郷愁を感じてしまうほどに歩きにくくなる。
だから常に泥などが服に跳ねないように魔法を展開する羽目になるのだ。
それ用の魔法も知っていたからよかったものの、そうでなければ洗濯から何から、日々の生活が更に大変になる所だった。
といった内容を俺は思い出しながら歩いていくとミカが、
「そういえば、異世界ってどんな所なの? “まんが”といった娯楽や“メイド喫茶”というコスプレの飲食店? というものがあるらしいと聞いたけれど」
「……異世界にきて真っ先にこれを広めた人間に俺は一言何か言いたい気がするが、そういったものも“ある”だけで、それ以外は……うん、お店などは、そこまでこの世界と違わない」
「そうなの? 遠距離の人と一瞬で会話したり、魔法を使わずに早く移動を出来る乗り物があるとかなんとか」
「そんな話も出回っているのか。そうだぞ」
「“魔法”を使わなくてもそんな事が出来るなんて、“理想的”な世界ね」
そのミカの言葉を聞いて俺は、そんなに“理想的”か? と首を傾げた。
だが、もしかしたなら“当たり前”のように享受しているものは、失ってはじめて気づくような“青い鳥”の寓話のように、すぐそばにある“幸運”のようなものなのかもしれない。
こんなところで自分の恵まれた状況を再確認する羽目になるとは思わなかったなと思いながらも、
「そんな風に“理想的”に見えても“不満”はどこにでもあるものなんだよな」
「そうなの?」
「ミカは城でお姫様をしている時に、“不満”はなかったのか?」
「あったわね。それを解消するために、城をこっそり抜け出していたわけだし」
「……状況を受け入れるだけじゃないってことか」
「そうよ。“不満”があればどう解消するか、考えて“変えていくわ”」
そう言い切ったミカに俺は、そうだよな、現状を甘受するだけじゃだめだよなと思う。
そして怒りに任せたとはいえ、それが受け入れられなかったから俺は今はこうして一人……現在は、ミカと二人になったのだ。
とりあえずはこれからは、ぜひ“スローライフ”を俺はしたいと思う。
やっぱり“スローライフ”はあこがれるよな、でも生活費はそこそこ稼がないといけないから、
「町の入り口の門番の人にギルドの場所なども聞いておくか。生活費も必要だし。ミカはこれから向かう“ロウドの町”は詳しくないだろう?」
「それは、来たことがないから……」
「うん。じゃあいつものように門番の人に聞くか。……ついでに安くてよさそうな宿や、治安の悪そうな地域についても話を聞いておくか」
といってミカと話して数分後、町の入り口付近が見えてきたのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。