第7話(お礼を体でしてくれるらしい)
どうやらこのミカというお姫様は、城に戻る気はないらしい。
もう問題はある程度解決したし、戻っても問題ないと俺は思う。だから、
「別に俺にとって大した事はしていないから、そんなお礼とか考えなくてもいいぞ?」
「いえ! この結界は私たちの国にとって大切な物。しかも強化までしてくれる……見ず知らずの私に、これだけのことをしてくれたのなら、返すべきだわ」
「え……あ……」
そう顔を近づけて言うミカ。
キスするくらいの距離に美少女のアップがあるこの状況。
こうされると俺は言葉に詰まる。
だって年齢イコール彼女がいない、を地で今まで来たのだ。
確かにそれっぽいイベントはあったが、友達以上恋人未満で全部終わっている。
だからその……こう……異性にこういったことをされると……・などと俺が悩んでいると接続した空間から、ミカの父の声がした。
「うちのミカがここまで素直なのは珍しいので、受け入れてやっていただけないでしょうか?」
「そう……なのですか?」
「ええ。よく“ツンデレ”と呼ばれていますから。親の目から見て、というと親ばかに思えるかもしれませんが、根はいい子なので……特にタイはないと思います。それにこんな風に自分からしたいと言い出しましたし、我々もここまでの事をしていただいたので、何らかの形でお礼をしたいのです」
「お礼なんて……」
「好意を素直に受け取っていただきたいです。もっともミカのお手伝いだけではアレですので後程何らかのお礼はこちらからもさせていただきます」
と、ミカの父である王はそう言いだした。
お礼とかなんとか、別にそういうのはいいのに。
それよりも俺は一人ゆっくり自由な時間を取りたい。
スローライフ。
素晴らしい響きのある言葉である。
やはりお断りしようと俺が思っていると、
「この世界の事には、異世界人であるリクよりも私の方が詳しいはず! 私は役に立つわ」
「……お姫様でしたよね?」
「昔から城を抜け出していたから町の事には詳しいわよ」
などと言われてしまった。
お姫様だからで断れないかと思ったが、どうもそれでは無理らしい。
だが、それならば、
「じゃあお願いするが、嫌になったらいつでもすぐ帰っていいからな?」
「わかったわ!」
そういった元気のいい答えを聞きながら俺は、早く音を上げないかなと思いつつ接続を切ってそこで気づいた。
「そういえば、謎の強そうな魔物に狙われていたが、あれは、ミカの侍従が関係しているのか?」
「……多分。破片を持って城から逃げた私を……消して、全部真相は闇の中、といった形にしようとしているのだと思う」
「すべての黒幕はミカという話にしたかったのか。そうなると結界を回復させたから、意味はなくなった。むしろここでミカが死んだら不自然……となると襲われることはないか」
「おそらくは」
そう話をして、とりあえずは無理やりミカを城に追い返すのを俺はこの時点では止めた。
後になって考えればこの時点で、スローライフどころではなくなった選択をしたような気がする。
だが俺はこの時は何も気づいておらず、
「さて、暗くなる前に町を目指すか」
「はい、リク……じゃなくて、“ご主人様”」
「……え?」
「だって私、リクの侍従として、お礼をしようと思っているし」
そう、ミカが奇妙なことを言い出したのだった。
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