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第58話(見ている分には簡単そうだった)

 見ている分には簡単そうだった。

 色々な場面んでよくある話である。

 慣れている人間にとってはそれこそ短時間でできるし……世の中明らかにその……いい意味で、おかしいくらいに“できる”人間がいる。


 才能という意味では、オリンピックに出る選手たちから始まって、ネットで“神”などと呼ばれている人たちまでと幅広い多種多様な人たちがいるが……それらを集めると一見沢山いるように見えるが、実はほんの少数派なのだ。

 ただそういった人達が目立つだけで、実際にできる人は少ない方であったりする。


 他に勘違いする要素はどういったものがあるだろう?

 一部分だけ見ると簡単そうではあるが、それが出来るまでの知識であったり練習であったり、といった部分に膨大な時間がかかってしまっているのに気づかないのは、その人が“知らない”からか、それとも“知らないから気づかない”のか、そもそも“考えもしないのか”、あるいはそのどれかの合わせ技なのだろうか?

 一時期俺も悩んだことがある。


 だが、実の所、『見ている分には簡単そうだった』といった彼らが、自分本位になってしまうのはある意味仕方がない部分もある。

 何しろ自分は他人ににはなれない。

 経験することはおろか、それができるまでにどれほど時間がかかっているのか自体も全く知らないのである。


 だから無神経にそう言ってしまうこともあるだろう。

 もっとも、世の中には他人の“財産”……“知識”、“能力”、“得られた収穫”だったりするものを、あたかも自分の物として盗んだり利用したりする馬鹿もいる。

 しかも質が悪いことに、時にその人物が同じようにできた気になっていたり自分だってできるんだと思い込んだりするので、場合によっては甘い考えは捨てるべきだとは思うが。

 ちなみにそういった人物はいた。


 要するに手柄の横取りである。

 本来得られる利益をかすめ取る人物で、実の所そういったことはこの世界でも禁止されている。

 禁止されているからと言って“やらない”とは限らないのが、人間である。

 もっとも一応、そういったものにもペナルティ(罰則)はこの世界にある。


 そうだ、後でギルドの方にその件も報告しておかないとなと俺は思った。

 だって俺、被害者だしな。

 言わなければ、加害者が得するだけなのだから。

 ちなみにその人物たちに苦情を申し入れた後、開き直った彼らが言った言葉の一つが『見ている分には簡単そうだった』というそれだった。


 あの勇者パーティは、本当に“厄”かった。

 そう思うと同時に俺の中でその時の出来事がまざまざと思いだされて、怒りが膨れ上がる。

 これは自分の中にため込まない方がいいタイプの怒りだ。


 全部ぶつけて綺麗さっぱり忘れよう。

 そう、ちょうどいい目の前に“敵”もいることだからな……。

 俺はそう心の中で呟いて目の前の魔族に向かって、


「“終焉を迎える業火”」


 手をかざしそう呟いた。

 その魔族は間の抜けた声を上げた気がするが、すぐにその魔族の足元から青い炎が噴き出し一瞬にしてその魔族は消滅した。

 少しだけ俺の気分が晴れた。と、そこで、


「な、何だ今のは! 一瞬にして我々の仲間が……」

「な、なに、油断していただけだ。我々ならば、大丈夫だ」


 そんなことを残り魔族が言い出して、俺は更に攻撃を加えようとしたところでミカが、


「ここは、今回貰った新しい杖の出番ね。早速使わせてもらうわ! “氷結の剣”」


 そこで、俺が次は何をしようかな~、と暗く考えていた所、ミカに獲物を横取りされて……巨大な氷攻撃が発動し、猫のような魔物以外は全員倒されてしまったのだった。


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