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第51話(森の中の戦闘)

 その森のような場所の中で、あの“猫?”のような魔物を最短で追いかけるルートをセリアに先導してもらうことになった。

 ただ、一つ俺が考え損ねていた部分があった。

 つまりセリアは風の精霊であり、空を飛べる。


 というわけで実質的な意味での“直線距離”になるのだ。

 おかげで追いかけていく最中にぬかるんでいる場所や小川、ちょっとした崖などがあって大変だった。

 一応はセリアのサポートもあり、大きく育った木などではない限り、それらを風が吹くように退けてくれているので俺達には当たらない。


 だから現れてくる“魔物”を倒すのに集中できる。

 目の前に現れた魔物……この世界ではそこそこ強い部類に入っていたはずだが、この程度は大して俺には問題にならない。

 それに俺と一緒にいる人物たちも全く問題がない。

 

 ラグドやミシャはもちろんの事、ミカは……お姫様なのにどこでこう言ったものを覚えてきたのか、もしや勝手に冒険によく出かけていたのだろうか? という疑惑を持つレベルである。

 それを考えるとこの中で一番弱いが、ある意味“普通”な冒険者なのはレーニアだろう。

 だが、彼女が先ほどから使っている“ボーガン”のようなものがなかなか高威力で使い勝手がよさそうだ。


 だが使った後、矢を毎回できる限り涙目で回収している気がする。

 ……変わった形なので手づくりかオーダーメイドなのかもしれない。

 それとも財宝探検者トレジャーハンター独特のものなのだろうか?


 いずれにせよ強力な武器なので、


「よし、レーニアの武器を“複製”して量産するか?」

「! こ、これ手に入れるまですっごく大変だったのでやめてくださいいいい」


 どうやらこれを手に入れるには大変な思いをレーニアはしたらしい。

 だからそんな気軽に複製されるのは嫌であるようだ。

 いい武器を量産すると生き残る率が高くなれるのだが、感情的なものもあるのだろう。


 他にも強力な武器があるのでこれに俺は固執する必要はないため、それ以上レーニアには言わない。

 だがそこでまた一つ矢を回収している様子を見た俺は、


「その矢の部分を一個くれたら、“複製コピー”するぞ」

「! 本当ですか!? こ、じょれで使った後回収しようとして探し回らなくて済む! で、でも本体は……」

「手に入れるのが大変だったみたいだからいいぞ」

「……ありがとうございます」

「何なら今一つ貰えれば数十個複製するぞ?」

「ええ! でも戦闘中……」

「これくらいの魔物なら問題ない」


 そう俺が返すとレーニアは沈黙した。

 ぶつぶつと小さく、『流石はSSSランク、この魔物をこの程度と……』と言っているのが聞こえたが、俺は聞かなかったことにしてレーニアから矢を受け取る。

 一時的に魔物達を倒し切って周囲からいなくなると同時に特殊能力チートを使って“矢”を解析アナライズして再生する。


 数十個と言っていたので20個程度作ってレーニアに渡すと、


「私が苦労していたものがこんなに簡単に……ありがとうございます」

「いえいえ」


 そう返して俺は目の前の魔物をまた倒していく。

 本当にここにはウサギのような形をした物やら蛇、鳥のような形をした者やらバラエティに富んでいる。

 そして倒した魔物の魔石は放置していると、セリアが勝手に集めてくれている。


 後でこれらを換金すればそこそこいいお値段になりそうな気がする。

 などと思いながら進んでいくとそこでミカが、


「ね、ねえ、そんな簡単に“複製”出来るなら、何か強そうな武器を頂戴。魔族との戦闘もあるかもだから」

「ん? 欲しいのか? ……ミカだからいいか。じゃあ、適当に“伝説の杖”で」

「……“伝説の杖”が適当に……いえ、この際、贅沢は言えないわ。ありがとう」


 そうお礼を言ってミカがその杖を受け取る。

 そうしているうちに、俺達は森のような場所を抜けたのだった。


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