第50話(庭園のような場所)
セリアが告げた通り、途中曲がらさせられた道の先には、建物の中とは思えないような“庭園”が広がっていた。
草木が生い茂る場所にたどり着く。
風のようなものが吹いていて、一瞬外に出たのだろうかと思うくらいに空気もすんでいて涼しい。
けれど天井を見ればすぐにここが屋内だということがよく分かる。
白い柱がいくつも空に伸びて天井は一面、太陽光のように白く輝いている。
あの光が太陽光の代わりをしているのかもしれない。
また、どこからともなくさらさらと水の流れる音が聞こえる。
どこかに小川のようなものがあるのかもしれない。
こういった昔の魔法文明の遺跡にはところどころ“環境”が内部で変化しているらしい。
それはこの世界の“環境”に“似た”物なのだそうだ。
そしてそれらの変化は、魔力の通じているダンジョンに酷似しているらしい。
どんな風に“似ているのか”というと、ダンジョン内といった場所にしか生息しない草木がこういった場所にあるらしい。
まるで何かの“実験”でもするために特別な区画を作り、“環境”を作り出しているように見える場所。
実は古代の魔法文明の時代には現存していたもので、それを“保存”する役割があった……もしくは、ここやダンジョンに存在する動植物は過去の人間によって“改良”されたものだったのだ……。
といった話があったら面白いので、そのあたりも後でソニアに聞いてみてもいいかもしれない。
今の俺たちに必要なのは、敵がどの程度いるのかと、先ほど逃げたあの“猫のような怪物”がどこに行ったのか、だ。
他にあるとするなら、
「こ、これは貴重な薬草……“マタレ草”。こんな場所に生えていたなんて」
「ミシャ、今はそれどころじゃないだろう」
「でも、こんな沢山は見かけない……ああ!」
ミシャとラグドがそんな話をしていた所で俺は、風の刃でその周辺の草を切り裂いた。
みぎゃあああああ
といった不気味な鳴き声がして、地面から顔を出した大きな、俺の膝ぐらいのモグラのような怪物が倒されて地面に緑の石が落ちる。
魔石だ。
つまり今の場所には魔物がいたわけだが、そこでミシャが、
「今のは全然気づかなかったわ」
「俺もだ……」
そう言って周りを気にし始めている二人を見ながら俺は、
「レーニア、こちらの方の部屋は、財宝探究者としてどうなんだ?」
「い、一番危険なルートで……確か、気づかずに魔物に襲われて死んでしまう冒険者が多いと言われている危険エリアがここだった気がしますです」
俺の問いかけにレーニアが即座に答えて、そして俺は、
「ミカは魔物の様子は感じられるか?」
「う、うっすらと。でも注意しないときづかないくらい微弱で、さっきの草むらの魔物だってあんな地面に落ちて大きな音がするくらいの大きさの魔石を持つ魔物がいるなんて、全然気づかなかった」
ミカが衝撃を受けたようにつぶやく。
それを見ながら今度は震えているレーニアは置いておいて、
「セリアはどうだ?」
『だいたいは分かっていましたよ~。今も私が何かしようとしたらリクが魔法を先に使って魔物を倒してしまったので出番はありませんでしたが』
「そうか。となるとAランクでもかかるような“認識阻害”系の魔法がかかっていて……セリアはいったいどのあたりのランクだろうなって俺は思ったが、それは後で聞くとして……その“猫のような魔物”はどこに行ったか分かるか?」
『もちろん追跡済みです』
「じゃあ最短ルートを案内してくれ。そして、とりあえず俺達周辺の“認識阻害”を解除する。……集団での行動になれていないからつ、自分が分かるから問題ないと考えもしなかったりするんだよな……今後俺、気を付けよう」
そう俺は自分自身に言い聞かせてからそして、特殊能力を使う。
俺自身の位置を中心として同心円上の範囲の空間に使われている“認識操作”と思しき魔法を組み替えて、魔法として機能しないようにする。と、
「ちょ、え、なにこれ」
「がくがくブルブル」
「これはすごい」
「こ、こんなに」
初めの二つはミカとレーニアで、後の二つはラグドとミシャだ。
どちらも絶句をしたように呟いているが、
「驚いているところ悪いが、そろそろ追いかけないとまた放されてしまう」
そう俺は声をかけて、ミシャが魔石と草を少し拾ってから走り出したのだった。
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