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第41話(彼女の特殊能力(チート))

 “蒼天を撃つ鏡の迷宮”、という古代魔法文明の遺跡でこの青い石を拾ったらしい。

 しかも“魔族”が出入りしているのだとか。

 きな臭くなってきたが、どうにかするしかないだろう、と俺は思う。

 

 早い段階での処置が、楽にそれを処理できる時期なのだから。

 そう俺は思いながら後は何を知っておくべきだったかなと思いつつ、思い出す。


「そうだ、ミカの特殊能力チートって何なんだ?」

「私? 私の能力は……見せた方がいいわね。こんな感じ」


 ミカそういうと同時にやかんが勝手に動き出して、水道に向かったかと思うと器用に蛇口をひねって水を入れて止める。

 それからコンロに火をつけて、そのままお湯を沸かす位置にまでやってきて大人しくなる。

 確かにやかん周辺に魔力の動きがあるが、それらは緻密な魔法を構成している。


 特殊能力チートと言われるものでも、かなり高い品質のものだ。

 特殊能力チートは基本的に超高度な魔法を“瞬時”に行えるものが多い。

 それが魔法の種類に偏りがあるにしろ、魔法を使う“過程”が省略されている。


 いわば個人個人、唯一の魔法を引き起こす特別な……魔力を発動する魔道具のような状態なのだ。

 もしかしたなら、俺たちの存在そのものが特殊能力チートであるのかもしれない。

 異世界人であればその、この世界では予想もつかないような“違う”何かを持っているからこそ、特殊能力チートが出てくるのかもしれない。


 それとも……こういった特殊能力チートを抑えられるから、俺たち異世界人は、あの元の世界で生存を約束されているのだろうか? とふと考えてしまうことがある。

 それだけ異世界人の持つ特殊能力チートが異世界のパワーバランスを崩しかねないほど巨大なのだ。

 だが、それを考えるとこの世界の現地の人が持つ特殊能力チートは……などと俺が考えているとミカが、


「ある程度お願いも聞いてくれるのだけれど、私が特殊能力チートを使うと、その道具なりなんなりが、“自立”して行動をするの」

「……“意思”が道具に芽生えると?」

「そう。そんな感じ。だからちょっと手の込んだ料理も道具が勝手に作ってくれるわ」

「……特殊能力チートだな。でも、その能力をなんで“魔族”は狙う? “魔族”は力があるから誰かを操って戦わせることもないだろうし……。そういえばこれは、人間には使えるか?」

「使おうと思えば使えるけれど、でも、受け答えになるとぼろが出るからそんなに人間を操ってといった繊細な作業には向かないと思う」

「そうなのか。……いったい何に使おうとしているんだろうな?」

「もしくは、私の能力を“誤解”しているか」


 ミカがそう呟いて、口をつぐむ。

 そんな事もありそうだと俺は頭を抱えたくなったが、それ以上は今は分からない内容なので考えるのを止めて、代わりに、


「その力を使えば、料理もある程度信頼できるものが作れるのか」


 お姫様だから食事を作るのに慣れていないだろうという俺の懸念は消えた、とその時は俺は思ったのだが……。

 そこでミカが、


「? 料理に特殊能力チートは使わないわよ? 愛情がこもっていない気がするし」


 ミカが当然というかのようにそう答えたのを俺は聞きながら、やはりお姫様の食事は不安が募る、そう思ったのだった。



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