第40話(石の正体)
レーニアの取り出した青い石。
八面体のそれだが、深い青色をしていて、中が濁っていてよく見えない。
けれど俺は魔力の動きに“奇妙さ”をかんじる。
「見せてもらってもいいか? “解析”してみる」
「ど、どうぞ」
そう言って受け取った石に俺は特殊能力を使う。
魔力の流れから内部構造の把握、それによるこの石にどういった魔法が起動できる、もしくは断片として存在しているか。
天然に存在している石でも、あたかも人工物であるかのような綺麗に研ぎ澄まされた形のものも存在しているが、この物体は魔力の動きから見て明らかに人工物だ。
そしてすぐに内容が、光の板上になって表示がされるが、
「え~古代魔法文明の遺産、か。『この石は鍵であると同時に、“中心”である』と、内部に警告が書かれていて、どうやら何かの“古代魔法文明”の遺産を動かすものであるらしいな。あとは、“部屋”を開くための……それもどの部屋も開くことのできるような、マスターキーのようなものであるらしい。よくこんなものを見つけたな」
「ふ、ふ、ふえ。だ、だってそんな危険で凄そうなものだとは思わなかったんです。た、たまたま遺跡に入って、なんだかいいものないかな~と思って入り込んで魔物と戦闘して奥のほうまで行ってしまって、そこで転んだら壁に頭をぶつけてそうしたら壁が崩れて……中に埋め込まれたこれが出てきたんです」
などとレーニアは供述した。
偶然というか、彼女は財宝探究者に向いていないんじゃないかと思ったが、けれどこれを引き当てたのだから逆に才能があるのかもしれないと俺は思いなおした。
そしてこれを俺は見ながら、
「確かこれを“魔族”は探しているんだったな」
「……そうです」
「これを使って古代魔法文明の何かを手に入れようとしている、それで間違いないんだろうな……とりあえず発議にとりに来たときは、わざとらしくないようにこれを“魔族”の方に投げてくれ」
そう俺は言って、幾つか制限を付けたままこの青い石と同じものを作リア揚げる。
もしもの事を考えて二つ。
本物と区別がつくようにやや暗い青色にしたその二つのうち一つを俺はレーニアに渡して、
「いざとなったら俺がこれを使えば、レーニアは持っておらず、俺が持っていると思ってこちらに攻撃を仕掛けてくるだろう」
「! そうすれば私は狙われずに済む!」
「ただ接触してきたときだけの話だからな? そもそも俺、戦闘はしたくないし……身代わりをするつもりはないぞ?」
「は、はい、襲ってきて気づかれた時だけで十分ですので」
「もっとも、今渡した偽物を“魔族”に掴ませて帰らせれば大抵は終わりだけれどな」
そう俺は言って、もしその時が来たらどちらの方がうまく事が運ぶかを考えて選択しようと思う。
と、ソニアが今の話を聞いて、
「この辺の魔法文明は、結構戦闘に特化した危険なものが多かった気がするけれど大丈夫かしら」
「そうなのか?」
「ええ。まあ、リクには児戯に等しいものだから大丈夫だと思うけれど……興味があったら見てくるといいんじゃない?」
「そんな気楽な……」
「それに、高々頭がぶつかる程度で壁が崩れて“鍵”が出てくるのも気になるの。“この周辺”の時期に現れるよう、処置が施されていたとしたら面倒だと思っただけ」
ソニアが、あらかじめ見つけられるようにそう設定がされていたら、“何か意味”があるのではないかと言っているのだ。
しかもと俺は思って、
「“魔族”もそれを探しているから……“鍵”が出てくるのに気付いていたから、か?」
「そうね。ああもう、もう少しお姉ちゃんのお手伝いをしておけばよかったわ」
「あ……それでどうするか。スローライフととお座っていく気がするが、一応この石が見つかった遺跡を確認しておいた方がいいか?」
「手伝ってくれるの?」
「この石のち密さを見ていると、後々取り返しがつかないような面倒なことになって、俺が駆り出される羽目になりそうな気がするんだ。だから早めに打てる手は打っておきたい。……軽く視察をしてくるだけでも十分だしな」
「助かるわ。私も、明日はちょっと気になる魔法文明の遺跡に向かおうと思っているの。……“魔族”が出入りしていそうだから」
「その遺跡の名前は?」
「“蒼天を撃つ鏡の迷宮”よ」
その答えを聞いて今度はレーニアに俺は話を振る。
「遺跡の名前にレーニアは覚えがあるか?」
「あります。この石を拾った場所でした」
と、レーニアが予想通りの答えを口にしたのだった。
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