第4話 (美少女の事情にて)
この美少女の名前はミカ・ラルクロイドというらしい。
なんでもラルクロイド王国の二番目の姫だそうだ。
そんなお姫様がこんな山道を一人で歩いていて、ちょっと強そうな(俺比)魔物に襲われていて……これはどこかの小説か何かではと言っても過言ではない。
もしくは自分がお姫様だと思っているそういう人物か。
やはり騙されないようにするには論理能力が必要だよな、矛盾を一つづつ、つぶしていかないとと俺が思っているとそこでミカが、
「……今、私の事を“姫”? って思ったでしょう。リク」
「いえ、そんな事は……というか、やっぱり俺の名前は知っているんだな。いや、この場合は顔か」
ミカの言葉に俺は、確信めいたものを得る。
この場所は俺が“色々”とした場所からはちいょっと離れているので気づかれないと思ったのだ。
確かに風の噂であったり、ちょっとした新聞のようなものが発達しているがまだまだ吟遊詩人などという職業が幅を利かせている程度に、異国の情報は入りにくい。
情報伝達速度に難がある……だから俺は気づかれないと思っていたのだが、どうやらそういうわけでもないらしい。
けれど言葉だけでは分からないこともある。
それは、顔だ。
お世辞にも美形とは言いがいたいごく平凡な顔つき、そしてこの世界でもよく見る黒髪に黒目。
服装はこの世界のものに準拠している。
もちろん俺なりの強化は行っているが、はたから見るだけでは普通のものにしか見えないはずだ。
それなのにミカは俺だと気づいた。
また、諸事情により俺はこの世界の地理を叩きこまないといけなくなったのである。
理由に関しては俺は今は思い出したくないので割愛する。
けれどそこでさらに俺は気になることがある。
「ラルクロイド王国は俺の“活躍”していた場所からはかなり遠かったはずだが」
「たまたま会談があってその時に、このカダミア王国の王都の方に来ていたのよ。“リロディアの再来”を未然に防いだのは貴方でしょう? リク」
「……」
「確かにあの時何人もの転移者や魔法使い、騎士たちが戦っているのを見たわ。でも……貴方は見ていて“別格”だったもの」
「……やめてくれ。それで話をしてくれ。俺が話が振った部分もあるから悪いと思うが」
そう言って俺は話を変えようとした。
今はあまり思い出したくない出来事だからだ。
この世界に来て初めの頃は、俺だってそれなりに頑張っていたし、感情もあった。
だが、今になって思えば……という部分が多々あるのだ。
そう俺が過去に思いをはせているとそこでミカが、
「その、これは私の城と私の不祥事なの。城や国を守る結界として必要な、“四つ国の鏡”が何者かに奪われて、そのうちの一片が私の枕元に置かれていて……それと同時に、私の“親友”だった侍従のサキがいなくなってしまったの」
「そうなのか」
「それで奪われたものを探し出すのと……疑われて、一時的に私は軟禁されそうだったから、その破片のうちの一つを持って私は残りの三つを探すために城の外へ出てきたの! そしてサキの目撃の話を聞いてここまで来たのだけれど、その間に何度もさっきみたいな魔物に襲われて……」
「そうかそうか。それでここまで来るのに大体一週間くらいか?」
そこで俺は、ミカに問いかける。
それにミカは頷き、
「ええ。それくらいはかかっているわ」
「……一週間程度ならまだ持ちこたえられそうだな。それで、自分がそのラルクロイド王国の姫だと証明するものは?」
「……このメダルでは駄目かしら」
そういって円盤状の宝石の付いたメダルをミカは見せてくる。
断りを入れてそれに俺は触れて情報を読み取り、同時進行で、特殊能力を使って“遠距離音声接続”を行う。
断片的な情報と、ついでに肖像画も軽く確認してから、
「本人であるのは間違いなさそうだな」
「疑われるのは当然ね。でも、それだったら王族特有の能力みたいなものを見せた方が良かったのでは?」
「それは証拠にならない。変な能力を持つ人間は俺を含めて沢山いるからな」
「……そんなにいるものではないと思うけれど、納得してもらえてうれしいわ。それで……」
と、ミカが何かを言おうとしたところで俺は先手を打った。
「その盗まれた四つの破片のうちの三つ、それを取り戻すのが最優先でミカがしたいことなんだよな?」
「ええ、そうだけれど」
「わかった。一応、その破片は持っているか? 見せてもらっていいか?」
そう俺が言うとすぐに俺に彼女はその破片を差し出してくる。
丸いケーキを大きめにカットしたかのようなそれを見ながら俺は、
「素直に俺に渡してどうするんだ? 盗まれたら終わりだぞ?」
「……貴方の戦いを見た後、色々と貴方の話を聞いたの。だから、私は貴方がそう言ったことをしない人物だと知っているわ」
「人間幾らでも変わるダブルスタンダードな生き物なのに、簡単に信じるのは危険だぞ。というわけで、“情報操作”」
俺は特殊能力を使って、残りの破片三つを“再現”した。
唖然とした表情になったミカに俺は、その今作りだした三つと彼女から借りた一つを渡して、
「これで俺についてこなくてもよくなったな」
そう俺は言ったのだった。
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