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第38話(彼女の事情)

 とりあえずは久しぶりにやってきた知人? をもてなすために、俺はソニアを招き入れた。

 ちょうど多めに作った夕食が机の上に並んでいたので、


「ソニアも夕食を食べていくか?」

「ぜひいただくわ」


 そう答えるのを、すぐそばでミカが複雑そうな面持ちで聞いている。

 この雰囲気だとまず一番初めに、ミカの件を問いただしておかないといけなそうだ。

 答える気があるのならソニアはすぐにでも話すだろうが、答えたくないならけむに巻いて、どうやっても聞きだせないだろうことは俺自身の経験からわかっていた。


 ただ、ミカに会いに来たと言っている時点で、ある程度は弁明するだろうと俺は思っていた。

 だがこの雰囲気ではミカの隣に座らせるのモナンではあるので俺の隣に座ってもらう。

 けれどそうしたところ今度はミカがじ~っと俺の方を何かを訴えかけるように見ている。


 俺は何かを間違えているのだろうか、そう俺が思っているとソニアが、


「わ~“天ぷら”だ。おいしそ~」

「……妙に異世界について博学なのは分かったが、それで、どうしてミカにあんなことをしたんだ?」

「あんな事?」

「結界の魔道具を盗み出して、ミカに罪を擦り付けた事だ」

「ああ、あれは私じゃないわよ? ちょっと油断して、暗殺されかかった時に乗っ取りをされちゃってね~。今、その主犯格を追跡していたの。あ、この葉っぱ美味しいわね~」


 そう言ってソニアは“天ぷら”を食べて美味しい美味しい言っている。

 マイペースと言えば聞こえがいいが、こんなあっさりと言われても感情がついていかない。

 そういえばミカはどうしているのだろうと思っていると、


「……それは、いつの話?」

「う~ん、確か、ミカ姫に成りすました人物から手紙をもらって……それは筆跡ですぐにわかったんだけれど、なんていうのかな? ここの所人間の“フリ”をしすぎたせいで、つい油断して頭に衝撃を受けたと思ったら水の中に放り込まれちゃって。『これでもう生きてはいまい』と言って暗殺? をしてきた男たちが去るのを見て城に戻ったら……正確には、近づいたら大騒ぎになっていて、魔法で様子を見たら、結界の魔道具を私が盗んでミカ姫に罪が擦り付けられそうになっていてさ~」

「……そう」

「それで、犯人を追跡しようと思ってそのまま追いかけてきたの」


 ソニアがそう言ってまた一つ“天ぷら”を食べる。

 非常に幸せそうなのはいいが、そこでミカが、


「それを、私に信じろと?」

「好きにしていいわ。こんな話、私がしても普通は信じてくれないだろうし」

「……もう一つ聞きたいの。なり替わった人物が私に会いに来た、ということはある?」

「そうね。確か姫様に子守唄をうたってから、あの暗い場所に呼び出されたから……犯行は深夜になるわね。その時に会っていないなら、私ではないわ」

「そう、ね。みんなが貴方の姿を見たといっていたけれど……私はソニアの姿をあの後一度も見ていないのよね。……よかった」


 そこでほんの少しミカがほほ笑んで、それにソニアが、


「信じるの?」

「信じたいものを信じるのは簡単。けれど、私は、貴方がそんな人ではないと思って、でも、現実はこうでずっと悩んでいたの。でも今の話を聞いて納得できたからいいわ」

「……私への信頼度が高すぎて困るわ」


 珍しくソニアが本当に困った顔をした。

 本当に俺は珍しいなと思っているとそこでソニアが、


「ま、いいわ。ミカ姫には相変わらず使えたいと私は思えたし……でも今は気になることがあるから、もう少し私は一人で動くわ」

「なにをしているの?」


 ミカの言葉にソニアは、


「ミカ姫の力を利用しようとする人物がいるらしいから……それも魔王が絡んでいるみたいだから、もう少し探ってみようかと思って。まさか城を抜け出してこんな所にいると思わなかったわ」

「う……」

「でも、見つけた時には最高の護衛ボディーガードがついているから、私は私で暗躍できそうね」


 そう言ってソニアは俺の方をちらりと見る。

 それに俺はこういう奴だった、面倒ごとはすぐに押し付けてきやがると思いながら、


「全部人任せか」

「私が信頼できる相手はあまり多くないのよ?」


 俺の言葉にソニアは、そう肩をすくめたのだった。

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