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第33話(炎の粒)

 町を焦土化しよう、などというのを見過ごせない事実。

 そして、この状況ではスリーライフどころではないという事実。

 この二つの状況、つまり俺の利害が一致した。


 ようやく戦闘とは無縁な平穏生活を俺は手に入れようとした矢先にこれだ。

 “魔王討伐”の勇者の補助的役割をさせられそうになって依頼を受けるよう指示されて、それを解除したのは昨日の話。

 すべてから解放された自由さに、涙を流しそうに感動しながらこれから新しいスタートを切ろうとしたのだ。


 憧れのスローライフ。

 緩やかにのんびりと俺は暮らしたかったのに……それを……それを……。


「考えていたら段々に怒りが湧いてきた。俺は戦闘と関わらずに穏やかなスローライフを楽しむ予定だったのに、ここにきて二日目でこんな“魔族”と遭遇して……」

「聞き捨てならん。我々はこう見えても力を持つ……そう、お前たちよりもよほど強い“魔族”なのだぞ! それを“こんな”扱いとは……いいだろう、ここで殺すのを止める。まずは……我々の恐ろしい力をその目に焼き付けて、自分の言葉を公開するがいい! “一叢の炎”」


 そこで何かの魔法を“魔族”が使った。

 周囲に蛍が群がっているような、俺の親指の爪程度の炎の塊が百どころではない数が現れる。

 だがこれは見かけは小さいが、その一粒一粒には見かけに反する大きな魔力が備わっている。


 炎の塊して現在俺たちの目の前に現れている部分と魔力部分、それに炎に変換する個々の魔法……それらがこの一粒一粒全てに行われている。

 その魔力から炎に変換する過程の魔法自体は、炎が一定量生まれてそれが使用されるとさらに供給をするタイプのもののようだった。

 それらを特に特殊能力チートによる解析を行わずに、魔力の動きから感覚的に判断した俺。


 特殊能力チートに頼りすぎると、それでしか対応が出来なくなる危険があるからだ。

 アナログな方法もまだまだ必要で訓練しておいた方がいい、と俺はすでに学んでいた。

 そう思いつつ、それらの魔法を瞬時に転換して見せた“魔族”は、確かに“魔族”というだけあって魔法に関しては得意なのだろう。


 そう俺は思いながら、これらを一瞬で消して見せるのには、冷却系の魔法を使うといった方法が真っ先に思い付くが……。

 特殊能力チートの使い方は、何もそのまま使うだけではない。

 その能力がどういったものなのかを“特定”させずに不気味な能力として印象付ける方法がある。

 

 その“虚”をついた奇襲攻撃もまた、効果が高いことを俺は知っている。

 さて、どうしようか、そう俺が思っているとミカが、


「早くあの炎を消さないと。氷系の魔法、レーニアは使える?」

「は、はい」

「リクも……」


 といったような焦った声を聴きながら俺は小さく笑いながら、


「そうだな、そういった魔法もいいが、こういった魔法はどうだろうな?」


 と呟いて、その魔法を使い炎の粒が広がる範囲に指定して、自身の特殊能力チートを使う。

 上手くいくだろうか?

 駄目であれば普通に氷といった魔法を使えばいいのだが……そう考えていた俺だが、杞憂に終わった。


 目の前に広がっていた数多の炎の粒は、まるで初めから存在しなかったかのように消え失せたのだった。

 

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