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第32話(魔族の狙い)

 頭に黒い角と蝙蝠のような羽を持つ“魔族”。

 この世界での“魔王”の配下である。

 “魔王”を頂点とした支配階層を形成しているらしい。


 また、“魔族”には上級中級下級に別れており、上級の魔族は祖pの人物が一人年に現れるだけで壊滅状態に昔はなっていたらしい。

 だが今は、魔法技術の発達により、主要都市には強力な結界が張られるなどして、防御面は格段に高まっておりそう簡単にはぶち抜けない、といった触れ込みに俺が来た当初はなっていた。

 けれどそれはその後、現れた“中級”魔族によっていとも容易にその神話は崩れ去ることとなった。


 そしてその時現れた“中級”魔族複数に襲われたあの事件……ミカが俺を目撃したらしい“リロディアの再来”と同じことが起きそうだったのを俺達が防いだのだ。

 だが、このままだとまずいと思ってあの時、少し本気を出してしまったのもよくなかったのだろう。

 ただでさえ結界が破壊されて、しかも異世界人の手によって“魔族”が倒されたのである。


 国の魔法使いたちは何をしていたんだというような話も出ていて、予算を削るだのなんだのといった話に発展していた気がする。

 そういった目立つ行動をとったのも、実はあまりよくなかったのかもしれないと俺は思う。

 だが、誰かが死ぬのを見るのは嫌だ、そんな感情で俺は動いてしまって……もしも、それがこうなると分かっていてもあの時俺は同じように行動してしまったかもしれない。


 それでも力があるからと言って、自分を傷つけないためにももう少しうまく立ち回れるようにしないと、と俺は思う。

 などと感傷的な気持ちが一瞬脳裏に駆け巡り、すぐに敵としての“魔族”に目を移す。

 この“魔族”や“魔王”といったものは、この世界の“乗っ取り”を画策する勢力、といった意味合いが強い。


 自然発生的に存在し、人間と違う“魔王”や“魔族”そのものがこの世界そのものを奪い去ろうとするのだそうだ。

 そういった“魔王”や“魔族”は、“精霊”に存在が近く、一説にはこの“魔王”や“魔族”は古代の魔法文明の産物だといった話もあるそうだ。

 なんでも倒すことはできるもののどの人物もまた“復活”するものであるらしい。


 いわゆる“魂”のような“核”があり、今のところそれまで破壊するすべを人間も含めたすべてのものにとって持っていないからこの状況なのだそうだ。

 ただし倒された後、記憶が引き継げるかどうかは“魔族”の場合は難しいそうだが。

 そこで“魔族”のうちの一人が俺たちに、


「どうする? こんな所に人間がいたが」

「そうだな、騒がれては面倒だし、これからの街を消し去り、“魔王”様の力を見せつけるとともにこの周囲の“古代魔法文明”の遺産を我々の手で確保しておく……その計画をあの町の住人に知られては困るのでな。ここで死んでもらう」


 といった説明を目の前の“魔族”がしてくれた。

 これが俗にいう、“冥土の土産”というものなのだろう。

 物語の場合、状況の説明のシーンだなと俺は思っていたが、どうも現実としてこういった説明を彼らはしたいらしい。


 やはり自分たちがこれからする出来事を誰かに話したいという欲求があるのだろう、そう俺が思っているとそこで“魔族”の一人が、


「ん? そこにいるのは、ラルクロイド王国のミカ姫ではないか?」

「そのようだな。人間に気づかれずに手に入れて来いといった話ではあったが、ガルの奴らが手をこまねているようではあったが……こんな場所で見つけるとはな」

「たしかに。ここで捕らえてしまってもいいか……それに、そこの娘は、この周辺の“古代魔法文明”に詳しいレーニアという娘ではないか? 確かこちらの方にきて、“例の物”を手に入れたらしいといった報告があったとかなんとか」

「ああ、だが町中に仕込んだ“使い魔”が取り逃がしたとかなんとか。これは……ちょうどいいな。そこにいる男だけを殺して、そこの娘二人を連れ攫う……“精霊”は面倒だが、そうしようか」


 といった話をこの“魔族”達は俺にした。

 しかも、


「逃げてもまあ、すぐにあの町ごと焼き払う予定だ。ここで死ぬか少し後で死ぬかのどちらかだが……逃げる時間を我々が与えると思うなよ?」


 と言って笑っている。

 それを聞きながら俺は、あることに気づいて絶望した。つまり、


「スローライフ」

「ん? すろー……?」

「せっかく、俺がスローライフをしてゆっくりとしようとしていたのに、なんで俺がこの町に来たら突然それまで影も形もなかった“魔族”が襲ってくるんだ?」

「それは残念だったな。周りに“古代魔法文明”の遺産が眠っている町の候補は幾つかあったが、適当にダーツを投げて決めた。恨むんなら自分の不運さを恨むんだな」


 などとこの“魔族”は笑う。

 だが俺は笑えない。

 戦闘なんてやめてゆっくりするんだと思っていたら、気が付けば、“魔族”にとって重要であるらしいミカやレーニアの話が出てきて今は町が焦土化しようとして俺は殺されそうになっているらしい。

 

 明らかに何かの物語が始まっているとしか思えない。

 俺の誰も興味がないようなほのぼのスローライフの予定が完全に崩れている。

 だがここでこの絶望感に心を打ち砕かれそうになりながら俺はあることに気づいた。


 そう、つまり、


「ミカとレーニアの剣を知っているのはお前達だけ。そしてお前たちを倒せば町が焦土と化しなくなる。つまり……」

「つまり?」


 嘲笑うかのように聞いてくる“魔族”に向かって俺は嗤い返しながら、


「お前たちを今、倒せば、“俺のスローライフ”は守られる」


 そう告げたのだった。







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