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第31話(敵と遭遇)

 レーニアの言っている丘のような場所は、俺たちが“どらどら草”を探し当てた場所から程近い場所にあった。

 数分も歩かなかっただろう。

 唐突に森が開けて明るい場所に俺たちは辿り着いた。


 森自体はそれほど暗いというわけではなく、歩いている間も周りがよく見渡せる程度に明るかったが、こうした場所に出てみるとやはり木の枝葉に光がさえぎられていたとよく分かる。

 日の光もほどほどで風も心地いい。

 しかもレーニアが言った通り町がこの場所では一望できる。


 立ち並ぶ赤などの屋根が色とりどり、美しい街。

 ところどころに煙突から煙が出ている。

 今が昼食の時間なのかもしれない。そういえば、


「レーニアは朝と同じ食事だったよな。いいか?」

「もちろんです! それにあの“おにぎり”はおいしかったですし」


 そうレーニアが言ってくれる。

 どうやら気に入ってもらえたようだった。

 そしてミカやセリアも興味があるらしく、早くと俺をせかしてくる。


 だから紙で包んだおにぎりをそれぞれ渡しつつ、持ってきたカップにお茶を入れて人数分……たまたまカップももしもの事を考えて一つ余分に持ってきたので、それにお茶を入れて全員に渡す。

 こうして準備ができたので、


「では、いただきま~す」


 と俺は言って、それを合図にするかのように食事を俺たちはとり始める。

 初めに食べたものは梅干しのおにぎりだった。

 塩辛くてすっぱい梅干しが冷めてうまみを閉じ込めた米と混ざり合う感覚。

 

 このうま味は持ちお運んで歩き回った後に食べた瞬間に発揮される、そう俺が思いながら食べる。

 と、ミカが、


「このすっぱくてしょっぱい果実のようなものっていったいなんなの?」

「この世界では“メルの果実”と呼ばれている。それの塩漬けだ。保存食として、最近では異国の物を売るお店? チェーン店“イセカイ商会”でも取り扱いを始めたそうだ。おかげで俺は手に入りやすくて助かる」

「そうなんだ~、確かそのお店、私の国の城下町にもあったからそのうちそこに行ってみようかな」

「気に入ったのか?」

「うん、果実の塩漬けがこんなに美味しいなんて知らなかったわ」


 そう言って嬉しそうに食べているミカ。

 レーニアやセリアも気に入っており、セリアは懐かしい味だといっている。

 あちらの方に俺の故郷に似たような場所があるので、食材も似ているのかもしれない。


 他にも昆布や鰹節のおにぎりを食して楽しみつつ、これからもう少し食材を採ってから町に戻るかなどと話して、次にどの方角にしようか、木の棒で決めるか? といった話や、セリアにレーニアおすすめの食材を聞いて探してもらおうか、などと楽しく昼食を終えたその時だった。

 何かが遠くからこちらの方に向かっているのを俺は察知した。

 魔力を隠しているのと、姿を見えないようにしている魔法の起動を感じる。


 こういった外であるため、そういったものを探知しやすい状態にあったのも理由の一つだろう。

 ミカとセリアもすぐに気付いたらしい。

 レーニアだけが、え、え、何事ですか? といったように周りを見回して焦っているが、現在はそれを気にかけている余裕はない。


 だがその一方で飛んでくるその存在が、もしかしたなら……自身の力を“過信”しているのではと思いあたる。

 今までもそうだったからだ。

 その油断は利用できるが、その自信に裏打ちされた実力が彼らにはあるのも事実であるため、そこまでは上手くいかない事が多かったらしい。


 喩えるなら、金属の剣を持った剣士に木の棒で挑むようなもの、それが彼らと人間の“力”の差だった。

 といった話を思い出しているとそこで、空から何かが俺たちの数十メートル手前に降りてくる。

 存在が見えなくとも周囲の風が渦を巻くように、周囲の草を巻き込んで上へと上がっているのが見て取れる。


 そこでそれは魔法を解いたらしく、姿を現す。

 

「ふう、まったく面倒な任務だ」

「ああ、そうだな、あの町をまずは焼け野原にしないといけない……ん?」


 と、姿を現した二人の男性と思しき存在はそこで俺達にようやく気付いたようだった。

 なんだ、こんな所に人間がいるのかといった風な、町中で猫を見かけたような雰囲気である。

 だが彼らにとってはその程度の存在であるのだろう。


 そう思っているとそこでミカが小さくつぶやいた。


「なんで“魔族”がここに」


 人とは違う、黒い羽と黒い角、人と世界に害をなす存在が、俺たちの前に現れたのだった。


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