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第29話(この世界の女神さまは)

 この世界の“神様”がどんな人物か知らない。

 自称“神”とやらには出会ったが、“本物”とは遭遇していない。

 そこで、それを聞いたミカが不思議そうに、


「“女神様”に会わずにこの世界に来たの?」

「ああ。今回は、自称“神”を名乗る召喚士によって俺たちは召喚されたらしい」

「……どうしてわかったの?」

「“女神”の類と言えるほど能力がなさそうだったからだ。だが呼ばれた人間のほとんどが信じていそうだったよな……」

「それは伝えたの?」

「何人かには。でも、信じなかった。とはいえ能力にも差があるし、呼ばれた人間の多くが戦闘に使えるものでなければ、滞在して別の仕事を割り当てられていた気がする」


 そう、この前までいた国の事を俺は思い出しながらミカにそう答えた。

 あまりあの場所も居心地がいいとは言えないものだった。

 人間は誰もが“ヒーロー”かそれに準ずる何かだと思いたいものらしい。


 そう煽っていた人物たちも何人もいたので、それの影響もあるのだろう。

 闘争心を煽り能力を開花させて、さらに強力な“兵”を育てる。

 果たして、魔王を倒した後にそう言った異世界人はどうなるのだろう?


 元の世界の座標等が現時点で特定できず、あの偽物の“神”は知っているだの魔王を倒せば元の世界に戻すといっていたが……どこまで本当かは分からない。

 それにうすうす感づいていそうな人物も何人かいたが……現状では彼らの庇護に収まるしかなかったのだろう。

 未知の魔法のあるこの世界、そこに国家の庇護がない状態で滞在できるとは思えなかったのだろう。


 もっとも、俺は逃げたが。


「あとで元の世界の座標を教えてもらって、それから全員回収するか」


 俺がそう呟くとミカが、


「その“ざひょう”さえ分かれば元の世界に戻れるの?」

「ああ、その程度は俺の特殊能力チートで何とかなる。だからそのうちセリアに【コミケ】について知っている人物を紹介してもらおうと思う」

「今すぐでなくていいの?」

「少し休む。スローライフもしたいし。それに、セリア、今はその人物がどこにいるのか分からないだろう?」


 そう俺が聞くとセリアが、


『調べればいるかいないかはすぐにわかりますよ?』

「検索にどれくらい魔力を消費する?」

『遠いのもあるので半分くらいでしょうか』

「じゃあ、一日中家にいるときにしよう。何かあったら嫌だし」

『そんな私の魔力を半分くらい使うような“何か”があったらそれはそれで嫌ですよ~』

「そうか? じゃあ、今すぐ調べてもらっていいか?」

『いいですよ~』


 といった軽い感じでセリアに調べてもらう。

 思いついた時にやらないと忘れてしまう、と俺は思ったのだが……すぐに結果は分かった。


『う~ん、私たちの国周辺にはいませんね。この世界の何処かを旅しているのなら別の検索が必要ですが……』

「いや、いい、ありがとう。気長に待つさ。結構この世界には行き来していたんだろう?」

『ひと月に一回くらいですね~』

「結構来ているな。だったら気長に待ってもいいだろう。それで、話はそれたが、この世界の神様はどんな人物なんだ?」


 俺がそう問いかけるとそこでセリアが少し黙ってから、


『確か、異世界に好きな人が出来たからしばらくこの世界を留守にするって言っていなくなって……その頃から魔王が活発になり始めたのよね。封印してあるから大丈夫って話だったけれど、力を蓄えていたらしくてね……でも、私が囚われる前はまだそんなに活動的ではなかったはず。今だってそんなに活発でなくて……魔王退治の討伐隊、勇者パーティは組まれたりしていたのかしら?』


 そこで最近の事に疎いらしいセリアがそう首をかしげるのを見ながら俺は、


「その魔王を倒す勇者パーティにいて、昨日、“追放”されたので喜んで依頼をキャンセルしたのが、俺だ」

『そうだったのですか。……正気ですか? ご主人様、SSSランクですよね?』

「ご主人様呼びに戻っているのは置いておいて、そうだよな……うん。どう考えてもあいつらは頭がおかしい」


 そう呟いて俺が憂鬱な気持ちになった所でレーニアが、


「そ、そろそろ果物も回収しましたし、次の草を手に入れませんか?」

「そうだな、そうしよう。……もう終わったことを考えるのはやめよう」


 そう俺は呟き、歩き出したのだった。

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