第24話(行き倒れ少女その2)
昨日の今日で俺たちの前に倒れ込んだレーニア。
またお腹を空かせているのだろうかと思ったが、どうやらその通りだったらしい。
「うう、おなかが空いた……」
「……昨日、案内料を渡したよな? なんでまた倒れているんだ?」
「うう、おなかが空いた……」
だがこのレーニア、俺の問いに一切答える気はないらしい。
そしてお腹が空いて動けないようだ。
まるで俺に狙いを定めたかのような倒れ方をしているが、これはひょっとして演技なのだろうか?
そう俺が思っいつつも、とりあえずこのギルドの出入り口にいるのは邪魔になるので移動することに。
だから腕を掴んで引きあげようとすると、
『どうされましたか~、あ、また女の子。つまりこれはハーレム要員?』
「……俺たちの世界の間違っているようでいない知識を口走るのはやめていただければと思います、はい」
俺は精霊のセリアの言葉に俺はそう返すとセリアが楽しそうに笑って、
『そうなの? そういえばそれを言うとあの異世界人さんも……といった話は置いておくとして、この子を持ち上げるだけでも大変でしょう。とりあえず、とりついて移動させますね』
「……とり付けるのか?」
『私くらいの精霊となると、この程度のレベルの子なら問題ないですよ。それにこの子、そういった“精霊”との相性が良さそうなので……他の“精霊(女)”の気配が……この浮気者が……』
ここで俺は何かを突っ込んだら負けのような気がして、沈黙することに。
代わりに早く移動させてくれとセリアにお願いをして、まるで“亡霊”のように真っ青な顔をしたレーニアがふらふらと立ち上がり歩いていく。
心なしかレーニアも疲れているようだ。
やがて道の端のような場所に移動した所でセリアが、
『このこ、すごくお腹が空いています』
「だが、昨日俺は部屋を案内した駄賃を払ったぞ? あれくらいあれば宿にだって泊まれるし、食事だってできるぞ?」
『……途中で落としたらしいです。なんでも猫に追いかけられている最中に落としたらしいですよ?』
「……精霊は記憶が読めるのか?」
『人によりますけれどね。この子は特に親和性がいいですからね……』
「でも、猫?」
『可愛いですよね、猫』
そうセリアが言った所で、視界の端に黒猫が歩いていくのが見える。
俺たちの世界の猫とやはり同じで可愛い。
ただそれを見ていると俺としては、どうしてそんなものに追われる羽目になったのかといった疑問も浮かぶが、とりあえずお腹を空かせているのは事実のようなので、背負っていたナップザックからおにぎりを一つ取り出して、
「お~い、食事だぞ」
「食事!」
目を輝かせるように開いたレーニア。
とりあえずおにぎりの一つを渡すと、それを怪訝そうに見てから、
「これは何ですか?」
「米を炊いて握ったものだ。中の具はどれに当たるか分からない」
「はあ……この際贅沢は言って至れません。では、いただきま~す。はむ!」
そこで一つのおにぎりの半分近くをレーニアは一口で口の中に入れた。
よほどお腹が空いていたのだと思うが、そんなに一気に食べて大丈夫だろうかと俺は思う。
だが、問題はないようだった。
一生懸命咀嚼して、
「なんだかお魚のようなうまみが」
「“オツカ”という魚を乾燥させたものをスライスして、醤油と混ぜたものだ。俺は結構好きだな。他にもマヨネーズとあえておにぎりの芯にしたりする」
「へ~、そんな変わった食材と食べ物が。まだまだこの世界には私の知らない美食が……もぐもぐ」
そう言って夢中でレーニアは食べて、大目に作っていたから問題ないが、さらに三つほど、数分で食べ上げてしまったのだった。
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