第19話(精霊さんのお話)
この“幽霊”、もとい“精霊”が恩返しをしてくれるらしい。
ただ気持ちは嬉しいが、
「そうすると“精霊使い”と間違われそうだから、遠慮しておく。“精霊使い”は希少なのもあるが、出会った“精霊使い”が“精霊”を酷使しているイメージが強くて嫌なんだ」
『あ~、“精霊虐待”ですね。結構前からそのあたりを気を付けようといった話になって、契約にその話も盛り込むようになっているんですよ。段階的に術者である“精霊使い”も、“精霊”に課した“負荷”と同様のペナルティが与えられています。もちろん“精霊国”の住人の場合そういった措置が取られていますが、新しい精霊や風来坊、追放者となると……悪質な“精霊使い”に引っかかるといった話もあって、時々見回りに行って保護をする形ですね』
といった話を聞いた。
確かにこの世界では“精霊”達の住む国があると聞いたことがあるが、“魔王”のいる場所から遠い辺境にあるため、そして“精霊使い”も少ないし“精霊”との接触もすくないためその実態はあまり知られていない。
そして今は目下、ここはまだ離れているとはいえ“魔王”の脅威の方が優先されている部分もあって、“精霊国”の話はこちらに来ていない死興味を示さない。
しかも“精霊”は強力な力を持つ者もいるのでそう簡単に手出しできないというのもあるのだろう。
といった事情を踏まえつつ、
「それで……恩返しの事は考えなくていい。こういった場所に拘束されて、人間を恨んで暴れないだけでもましだし」
『ああ、“幽霊”ごっこは楽しいですよ?』
「……部屋に人が入らなくなるのですが」
『どういう人なのかの様子も見ているのです。危険な人だったら、力を封じられた状態でも、戦わないといけないですし』
「そういえばどうしてこんな所にいることになったんだ?」
『いや~、久しぶりに“旅行”に行こうかと思って漂っていたら、とっても美味しそうなケーキがあったので近づいたらつかまりました』
どうやら罠に引っかかってつられたらしい。
俺が沈黙していると、
『あ、“精霊”といっても、確かに何も食べなくてもいいのですが美味しいので食べたりします』
「食事を出来る精霊は、結構高位の精霊と聞いたが」
俺がそう疑問を呈すると彼女は、
『そうなのですよ、こう見えても高位の精霊です。そんな強くて怖~い精霊なので……私を前にして、泣けわめけ、そして絶望しろ!』
「ウケタ(´・ω・`)」
『とまあ、本来ならそんな罠に引っかからないのですが、そのケーキがあまりにも美味しくてついていったら、何重にも魔法をかけられて実験台というか拘束されてしまったのです。そして私に魔法をかけた人物は、私の事は放置してどこかに行ってしまい、住人もどんどん変わって……そろそろこのニートライフも飽きたし“イベント”に行きたいなと思った所で、あなた方が来たのです! お礼に何かをするといった気持ちもあるのですが、ぜひ、本場の“コミケ”を味わってみたいのでとりつきたいなと』
などと彼女は言いだしたのだった。
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