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バスの中

作者: ゆうり

 ここはバスの中。周りは真っ暗、混沌と言える黒、色を混ぜて最後になる色、黒で塗りつぶした夜空、そこにライトの人工的な光一つ。ひとつだけほぼ一定速度で走っている。音は不思議なことに全然なっていない。…いや、多分鳴っていない訳じゃない。うるさすぎるんだ、人の声が。


 「それでねっ、昨日すごい夢を見てたの!」


 例えばこいつ。目の前で女子らしい大きな目をした、その目をキラキラさせてこっちを見るこいつ。

地味に犬感が伝わってくるこいつ。


 「へー、何があったんだ?」


 ぶっちゃけ自分は他人の夢の話に興味はない。夢なんか寝たうちに見て寝たうちに忘れるもんだろう。基本夢なんかすぐに忘れる超深い睡眠を主として来た自分には夢の話なんて関係のない話だった。


 「なにそのいかにも「キョーミありません」って顔!」

 「わりぃか、事実そう思ってるからしょうがないだろ。」

 「否定もしないと⁉」

 「しない。っつかさっさとしろ。」


 いつもなら「へー、あっそう」で終わらせるだろう。ただ今は手が結構濡れていつも持っている本も読めない。スマホは今は使えない。月末といえばピンとくる人がいそうな理由だ。察してください。だからどうにもこうにも暇なのだ。本当に。

 それなら、それならいつもなら無視するであろう人の話でも聞こう。え?寝たら?…出来るならとっくにしてる!


「えっとね、私初め飛び降りちゃおうと思ってたの!」

「前提がとても異常」

「それな!」


のっけから何言ってくれてんだコイツ。頭を抱えた。頭を抱えた時に少し外を見れば星らしきものが見える。ゆらゆらと煌めく星らしきものは炎のようで、結構寒い自分には当たりたい、とか思えた。


「それで、ビルの屋上に行ったの!」

「へぇ、じゃあそれなりの高さいるだろう?」


確か本で読んだ事がある。とても高い必要があると。確かビル25階分相当だったか。もうちょっと低い?どちらにしろ二桁はいった筈。自分としてはこれはやる気になる日は来ないと思った。だいたい高所恐怖症にこれを強いる?大丈夫だ、降りるなんて必要ない、登るだけで死ねる。お手軽だ。こんなお手軽さいらない。


「うん!その高さが…えっと…6,000キロ!」

「地球もう一個作る気か!!」


 アホの子だ。こいつ決定的アホの子だ。何をどうしてその大きさが出てきた。ん?これ真面目に考えたら何階相当?取り敢えず私の村の住人は楽に入る。いや、県内の住民全員入る。それ以前にビルを作っただけであらゆる場所が荒野へとビフォーアフターかますだろう。そう思ったせいで自分の頭には有名ピアノ曲が。やめろ。切実にやめろ。


「え?あぁ…違う違う!それ数学で聞いたやつだ!えっと…二十階のビル!私の家があるの!」

「びっくりした…へー、それで屋上から?」

「うん!屋上テラスがあって誰でも入れるから!」


偉く豪華だな…と思った。こっちは元々生粋の田舎人であり、都会に出ようものならビル(自分の中のビルは8階からとする)をみると大概、大概見上げてしまう。それは多分田舎人の摂理だろうか。違う方がいたとしたらそこは謝ることにする。ゴメンなさい。


「それでいざ人生からエスケープしようと思ったんだけど…」

「よくお前エスケープって単語知ってたな…⁉」

「知ってるもん!!この人失礼!!めっちゃ失礼!」

「うるさい。」


素直に感心した。褒めてる。褒めてる。多分。決して馬鹿にはしていない。する気があったとしてもしていない。多分。


「まぁ…それで飛び降りようとしたの。だけど…そのひすっっごく日当たりが良くて…」

「寝たと?」

「あたり!」

「まじか。」


ふざけ半分で言ったのに当たってしまった。だめだ、ここまで本題に入っていないのにツッコミし続けたせいですごく時間を消費した。なにやってんだ。


「そしたらあら不思議!私の死んだあとの夢を見たの!」

「…走馬灯の逆バージョンみたいだな。」

「…ソーマトウ?」

「…悪かった。悪かったから続き言え。」


謝るからそのキョトンとした目でこっちを見るな。見るんじゃねぇ。悪いことしたみたいじゃんか。


「そう?まぁいいや!」


よくねぇわ。という言葉は飲み込むことにする。


「私ね、死んでも誰も悲しまないと思ってたの。だから、自分勝手に死のうと大丈夫だって。」


急にさっきまで面白そうに見開かれた目が伏せられた。悲しそうに。この表情は見た覚えがなくて少し息を飲んだ。


「でも、泣いてた。皆みんな、泣いてた。…でも、死んでるから、声は出なくて。」


夢の中で自分の葬式を見たらしい。そんな事になったんだなんて、口を開きたいと思っても、死人に口はない。


「…じゃあ…()()()()

「気になるっ?気になるよねぇ、わかる!」


キラキラッという効果音が聞こえた。これは不味い。


「起きたらね!寝返りうって落ちてた!」

「あほう!!!!」


アホの子どころではない。アホだ。ただのアホだ。


「だからお前この()()()()()()にいるのか!」

「ご明察!!名探偵!」

「うるっせぇ!!!」

でもでもとこの人は続ける。


「転生ルートあるからいいかなって!」

「あってもお前みたいなやついけるかぁ!!」


久しぶりの大声の原因はこれだった。


ここは【死人専用】バスの中。周りは真っ暗、混沌と言える黒、色を混ぜて最後になる色、黒で塗りつぶした夜空、そこにライトの人工的な光一つ。ひとつだけほぼ一定速度で走っている。音は不思議なことに全然なっていない。…いや、多分鳴っていない訳じゃない。うるさすぎるんだ、人の【叫び声や泣き声】が。


誰もがいつか乗るバスに、この存在を知ったんなら

少し前に乗り込んだ私からアドバイス。


「耳栓付けてくる事をおすすめします。」

一応飛び降りなどを書いているので

R15に指定しておきました。

ただそんな暗い話は1つも書いていません。

私的にはR15詐欺のような気がしています(苦笑)

序盤の方を読んで感の良い人なら結末を予想したでしょうか。主人公がなぜこのバスにいるかももしかしたらわかるかもしれません。

友人の夢の話から自分で設定を探して書かせて頂いたものです。

ネタをくれた友人に感謝して。

明日から2018年。まだまだ寒い冬が続きますが

お体気を付けてお過ごしください。

ありがとうございました。


2017/12/31 14:43 

こたつが大活躍する大晦日、ゆうりより。

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