刺し入れ
「バイバイ、みのる。だって、しょうがないじゃん?あの人の方がかっこいいんだもん。優しいしスタイルいいし 、周りからの見栄えもいいしさ。」
「いや、そんな待てよ!」
「だから、バイバイ。」
「おい…おい!!」
「りく〜!話終わったよ!早く遊園地行こ!ふふ!楽しみだな〜!」
「やめろってぇっ!!!!」
「ハァ…ハァ…夢かよ。」
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朝から嫌な夢を見た。
実際あんな別れ方はしてないけど、多分めぐりの中ではああいう風に思ってたんじゃないかと、ずっと疑心暗鬼になっている。
朝から非常に憂鬱な気分のせいで、やけにテンション高く起きてきた妹の声が頭に響く。
「…うるさいなぁ。」
「なに?兄ちゃんなんか言った?」
答えるのもめんどくさい俺は、手で何にもとジェスチャーもする。
「はぁ〜ん、なんか嫌なことでもあったんでしょ?なになに?この私チョーかわいい妹 春様に相談してもよろしくってよ?」
「たく…いいよ。早く飯食え。学校遅れるぞ」
「また誤魔化して、まあいいけど」
俺は準備をして家を出る。
最近少し暖かくなってきた。
これは、中間テストが近付いている事も意味している。
学校につき、席に座る。
すると後ろから急に背中を叩かれた。
「おっはよーーー!!」
「弥生もテンション高いんだな。」
「何よ“も”って、私は朝練あったからもう目が覚めてんのよ。大体あんた朝はテンション低すぎなのよ。もっとイキイキしなさい。」
「ハイハイ」
「何よその返事。あ、そういえば、中間テスト近いけどあのゲームオタクは大丈夫なの?」
「知らないよ。あいつ頭いいんだろ?相手が誰かも知ってて、何も対策しないとは思えないけど。」
「でも、正直あいつはもし負けても何も失わないじゃん?あんたが退学するだけだしさ。なんか信頼性に欠けるのよね〜」
それは確かに弥生の言う通りだった。
「今日弥生 部活オフだよな?帰りさ」
「何!!もしかして一緒に帰っ」
「図書館委員長のかれんさん誘ってコンピューター部よらないか?羅生ヒラキと話をしたいし。」
「あっ、そう?別にいいわよ」
「なんだよ。なんで機嫌悪いんだよ?」
「もういいよ!私も寝取られてやる〜!」
わけわからない事を言いながら弥生は教室を飛び出たが、数秒後HR開始のチャイムが鳴り
顔を真っ赤にしながら帰ってきた。
「弥生、今の飛び出た理由は分からないけど、そのはりきり具合で出たのに秒で戻ってくるのは、、、、、、、恥ずかしいな。」
「言うなー!!」
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放課後、一学年上のかれんさんを誘ったが生憎部活だとのことで今日は参加できず。
俺と弥生でコンピューター室へと向かった。
「何弥生、ニヤニヤしてんだよ。お前かれん嫌いなのか?」
「なんでもないわよ。てかあんたこそかれんさんかれんさんキモイわ。多分今日断られたのもそれよ。そのキモさよ」
「本人の前では、そんな粘質して呼んでねぇよ!?」
「どうだかね」
機嫌良かったり悪かったりと情緒不安定な弥生さんを連れてコンピューター室へ
「「失礼しまーす。」」
「ん?ああ、お前らか。どうした?何の用だ」
「いや、大した話じゃないんだけどさ」
羅生ヒラキの近くへ行き椅子に座る。
「お前さ、この勝負正直負けても損はしないじゃん?失礼なこと言うけどさ、本気で挑んでくれるのかなぁって」
「はぁ?俺は神童とかなんとか言われてるけどな。ボンヤリしてゲームぴこぴこして勝ったわけじゃない。負けず嫌いと努力と才能だよ。
負けず嫌いに関しちゃなんめなよって話。まあ要するに本気で挑むに決まってんだろバーカということだ」
「バーカはいらないよ。そうか、なんか疑ってごめん。俺もさ退学かけてるし、」
「いいよ。てかあの斎藤勢力は俺も嫌いなんだよ。偉そうに学校を牛耳りやがって、その幹部クラス潰せるなら俺も胸がスッキリすんだよ。」
「え?幹部?」
「あんた本当になんも知らないのね。あの斎藤陸のグループはどんどん大きくなって、斎藤陸のファンクラブのメンバーも合流して今 組織みたいなの作ってんのよ。要するに大人の真似事よ」
「ハハっ!お前言うなぁ。」とヒラキ
「それの五人の幹部の一人があのメガネの男 獅子岡 宗三よ。」
獅子岡財閥の御曹司。
キッチリ七三分けに学ランを上まで閉め黒眼鏡という絶対生徒会長目指しているだろうと言う出で立ちの男
「あいつ、そんな凄いのかよ」
「まあ、それを従えてんだから、お前が見返そうとしてる斎藤陸という男は余計エゲツない男だ」
「ふん!どうだか」
「あんた…あいつの話になると急にいじけんのね。」
「まあいいよ。とりあえずその獅子岡宗三を倒せるのか?」
「当たり前だ。俺は天才だ」
「その言葉信じてるぞ?」
「任せろ。キャプテン」
「え?」
「ん?」
「キャプテンっていうのは…?」
「いや、斎藤勢力に喧嘩売ったんだぜ?俺も勝つつもりだから斎藤勢力に目つけられるだろうが、だから俺はお前のグループに入るつもりだったんだが?」
「待って待って、なんの話??」
「あー、ごめん。ヒラキ君。こいつソロよ?」
「は!??!?お前一人であのグループに喧嘩売ったのかよ!?やばすぎだろ」
「そんな、いけないこと…なのか?弥生」
「普通はバックボーンあった上で喧嘩売るわよね…。まあここで結成しちゃえばいいんじゃないの?3人で」
「それあんまソロと変わんねけど、斎藤グループをいずれ潰すというなら手を組もうぜ?」
「わ、わかったよ。」
よくわからないが、俺は大河原 勢力なるものをたった今作ったようだ。
「待ってくださ〜い、」
振り返るとコンピューター室の扉に息を切らした かれんさんがいた。
「私も入れてくださいよぉ〜」
「あんたは無理よ。さようなら」
言いながら、弥生は教室の扉を閉めようとする。
「何やってんの!?」
と俺がツッコム。
「冗談よ。でもあんた斎藤グループに目を付けられるわよ。」
「大丈夫です!元は私の図書館を取り返す話ですよ?しかも目を付けられても、」
「目を付けられても?」と弥生
「私あんまり友達いないので!!」
「「「oh…」」」
ということで、ここで四人の大河原グループが誕生した。
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[中間テスト当日]
「さてと、今日は3科目かめんどくさいなぁ。」
「何言ってんのよ。あんたはやらないとはいえ普通に進級のために取らなきゃいけないんだから。」
「分かってるって」
俺と弥生がHR終わり会話していると急に教室の廊下側の窓から金髪ヘアの女の子が出てきた。
「あ!みのる君ですか??私みのる君のファンなんです!これ差し入れなんですが…受け取ってもらってもいいですか?」
突然の出来事に俺はおろかクラス全員が口を開ける。
「あ、ああああんたねぇ、今フリーだからって、かれんちゃんのことといい見境いなさすぎるんじゃないかしら?」
「いやいやいや!俺知らないよ。この人。」
「え?受け取ってくれないんですか…?」
「…もらいまひゅ」
鼻を伸ばして差し入れの飲み物を受け取る俺の後頭部に弥生の蹴りが炸裂した。
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ぐーーーきゅるきゅる
俺はテスト開始数分後 猛烈な便意によりテストを途中退出。
多分あの差し入れのせいだ…
くそぅ、怪しいと思ったんだよ!!!
あれ、斎藤グループの刺客じゃねぇかよ!!!!
毒盛りやがったぁぁぁっぁあああ!!!!
そんな絶叫もトイレの中では、滑稽なわけで。