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お掃除クエスト  作者: ちゃー!
異世界2週目
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黒金月殿

 私は渡の後に続いて、黒金月殿(クロガネツキデン)へと来ていた。

 黒と金の装飾の施された大きな広間の中心奥に、世にも美しい女が気怠そうに座している。

 銀の長い髪は澄んだ流れる川のようにキラキラと輝き、金の大きな目は全てを吸い込みそうな程吸引力があった。私がこの異世界で出会った中で一番美しいのは彼女だと自信を持って言えるだろう。


「私は輝夜。人の国で長をしているわ」

「柚子葉と申します。無職です」

「そう。柚子葉と言うの……そうなの……」


 輝夜は私の事を見て目を細めた。その目にどこか郷愁を感じたのは気のせいだろうか。


「で、渡。緊急の用事とは一体どうしたのかしら?」


 輝夜姫を目の前にして私と渡がいるのだが、何故か渡だけは檻の中へ入れられていた。

 渡は当たり前のように受け入れているため、これがここの常識なのだろうか。

 輝夜が少し身体を前に倒したところ、彼女の服が椅子に引っかかり、それが原因でバランスを崩しそのまま転倒してしまった。


「痛ったぁ……」


 転んだ拍子で輝夜の着物が肌蹴て、見事な大きさの双丘が白日に晒されていた。

 輝夜はそれに気が付き、急いで着物を手繰り寄せ白い肌を隠した。

 渡はその光景を自慢気にみている。


「拙者の能力は檻に閉じ込めたくらいで封じることは出来ぬでござるよ」


 渡は何故かラッキースケベを起こす体質を持っている。誰彼構わずというわけではないらしいが、女性に対して服を偶然脱がしたり、触ってしまったりすることが日常茶飯事で起きるらしい。


「くっ……」


 輝夜はキッと眉を上げ渡睨んだ。


「あんたがもし国で二番目に強かったらクビにしてるのにぃ!!」

「拙者は国一番の剣士でござるからなぁ」

「悔しいぃ」


 上半身を隠しながら、輝夜は下唇を噛んだ。最初に会った時の荘厳さはなく、感情を露わにする様に親近感を覚える。

 彼女と渡のやり取りを見ていると、輝夜が憎むべき敵だと言うことに疑問を感じてしまう自分がいた。


「で、今日は何なの!?」


 輝夜がさっさと渡と別れたいと言うかのように本題を急かしてきた。


「姫、命結びという術は知っておるか?」

「何故そんなことを?」

「そこの娘と拙者の命が結ばれたらしいのでござる。ただ聞いた事もない術故、姫なら何か知っているのではないかと思ったのでござるが」

「そうね……知っているわ。確かに結ばれているわね」


 輝夜が私達を見るとき、その目は一瞬赤くなった。何かの能力を使ったのだろうか。


「姫、どうしたら良いのでござるか?」

「蘭月の家に行きなさい。紹介状は書いてあげる。術についてもそこで詳しく説明してもらったらいいわ」

「は、はぁ。蘭月でござるか」


 渡は訝し気に顎を撫でた。私は初めて聞く名前のため違和感なく受け入れたが、渡には意外だったようだ。


「柚子葉。紹介状を用意するまで、ここで自由にしているといいわ」

「ありがとうございます」


 それから私と渡は広間から解放され、廊下へと出た。

 以前の時間軸で輝夜姫は真朱の身体を乗っ取り、鴇と瑠璃を殺した。そして、桃次郎に命令を下し私の命も奪った。

 輝夜姫は私達に死ぬ事を望んだ。理由は明確にはわからないが、以前の記憶を繋ぎ合わせるとヘンタイ先輩に関係があるのだろう。


「柚子葉」

「は、はい」

「どうかしたか、ぼーっとして」

「少し考え事を……」

「さようか。ところで、お主の職業は何でござるか?」

「無職です」

「そうではなく、適正の事でござる」

「それなら掃除婦です」

「掃除婦?」


 渡は、何か聞き違いでもしたのではないかと言うように、何度も職業適性は何かと尋ねて来た。私はそれに対して何回も自分は掃除婦であると宣言した。


「でも、あの水の魔法は」

「あれは掃除婦の技です」

「柚子葉……」

「何でしょう」

「少し待っていて欲しい」


 渡は走ってどこかへ行き、巻物を手に戻って来た。


「これを使って、念じるでござる」

「わかりました」


 私は巻物に自分の職業を表示させ、それを渡に見せた。


「これは……」


 渡は信じられないというように、まじまじとそれを凝視した。

 私は技の欄を出し、渡に己の能力について事細かに説明した。


「渡さんと私は今命を結ばれているので私の能力について詳しく説明しますね。さっきの水を高圧で出すのはこの技の事なのです」

「ほう……」


 私はまず高圧の技を指差し、水を生成しそれを高い圧力で飛ばす事が出来る事を解説した。

 そして、解毒の力があるため毒が効かない事、害虫駆除・害獣駆除 ・殺菌の能力で大抵の敵は一瞬で殺す事ができる事も打ち明けた。


「一瞬で命を奪えるのか……」

「はい。私にその技を使わせたくないと言ってくれた人がいたのでなるべく使うつもりはないですが、もし命に危険が及ぶような事があれば容赦なく使っていく予定です」


 私は掃除婦と命を結ばれ、不安そうにする渡を安心させるような笑顔を作った。

 渡は戸惑いながらも信じてくれたようで、苦笑いで返してくれた。


「まあ、簡単に殺られるような弱い娘ではないという事でござるな」

「そうです。渡さんと命が結ばれている間は絶対に死にません」


 渡だけは死なせない。私を最後まで守ってくれた恩を返すためにも。

 それから、紹介状を貰い、私と渡は欄月の家へと向かった。


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