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お掃除クエスト  作者: ちゃー!
異世界2週目
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異世界へ再び

 目を開けると、そこは木で出来た掘建小屋の中だった。家具はなく、壁や屋根には隙間が所々空いており、そこから光が射し込んでいる。


 起き上がると首に違和感が残っているような気がして、回したり、触れたりして確かめるが、無事何の問題もないようだった。




 私は立ち上がり、外へと出る。


 戸を開くと外の強い光に目が眩み、思わず目を閉じてしまった。慣らすようにゆっくりと目を開けると、黄金色の麦畑が一面に波打っていた。




 その景色を見て大きく伸びをする。この世界は現代に比べ空気がいい。美味しい空気をたらふく吸って、気持ちを切り替えた。






 私は試しにレモン汁を生成した。レモンの香りが鼻をくすぐり、唾液が口の中に次々と分泌される。


 記憶も能力も引き継ぎの強くてニューゲーム状態だ。しかし、これはゲーム。前回勝者の私にはいくつかのハンデが課せられているらしい。


 他の四人は誰か一人死ねば勝利なのに対して、私は違う。


 いくつかの条件を達成した上で生き残らなければ、誰かが死ぬと同時に未達成項目があった時点で神の意志の元、問答無用で殺される。




 その条件とは




 戦争の勃発を阻止せよ




 以上だ。


 どうやら、今、扶桑と曙は大きな戦が始まろうとしているらしい。神々はそれを阻止して欲しいようだ。


 一体何から始めたらいいのかピンと来ないがここでじっと考えていても仕方ない。情報を得るためにも人か鬼か話の通じる妖を探さなくてはならない。


 幸いここは農地のようだし、すぐに誰か見つかるだろう。


 人を探しながら道を歩いていると、遠くに高い建物の先端が見えた。




「塔……?」




 どうやら大きな町がありそうだ。


 私は目標を人探しから町へと切り替え、その方向へと足を早めようとした時、聞き慣れた声に呼び止められた。




「貴方も旅の方ですか?」




 前を見るとそこには、虚ろな目をしたお供を三人連れた同い年ぐらいの少年が笑っていた。




「桃次郎さん?」


「あぁ、有名人だと辛いですね。どこに行っても僕の事を知られているだなんて」




 前回の転移で彼に刀で刺された記憶が蘇り、少し身構えてしまう。


 先輩はクラスメイト達を助けるためには時を戻す必要があると言っていた。その結果今は私が最初にこの世界に辿り着いた時と同じ時間軸に戻っている。


 あの時、渡に刺された桃次郎もそのお陰で無事だ。


 桃次郎がこんな性格だから何ともなかったが、この世界の者達と私は初対面なのだ。


 今後、迂闊に名前を呼んだりしたら怪しまれる可能性があるだろう。




「ごめんなさい。私は旅と言いますか、少し迷子状態でして……ここがどこかもわからないのです」


「それは大変だ。僕が案内しましょう!」


「いや、でも、桃次郎さんも何か用事があるのでは……」




 正直、この人苦手だからできれば別行動がいいのだけれど。




「大丈夫です。ただの散歩ですから。で、どこへ行きたいのですか」


「一応、月都に……」


「月都ならすぐそこですよ」




 桃次郎が先程の塔が見えた方向を指差した。




「あそこが……」


「さあ、行きましょう! そういえば貴方のお名前は?」


「私は柚子葉です」


「柚子葉さん……、子は鼠か……残念」


「どうしました?」


「いえ、何でも」




 短い道程だが、桃次郎達と共に月都へと 歩みを進めた。


 私はその間、桃次郎の自慢という名のマシンガントークをひたすら聞かされる羽目になり、月都に着いた頃には精神的にクタクタだった。




「じゃあ、本当にここで結構なので、桃次郎さんありがとうございます」


「何かご馳走しますよ。長い休みを取っているので時間はあるのです。本当に柚子葉さんは幸運ですよ」


「本当、悪いのでいいです」


「気にしないでください。僕は心が広いので、全ての美しい女性を愛します。どっかの玉の輿にのることばかり考えている男とは違うのです」


「誰が玉の輿に乗る事ばかり考えているって?」




 突如現れた男によって、桃次郎の頭が鷲掴みにされる。


 高い身長に凛々しい眉に少し幼い顔立ちで、真っ直ぐの黒髪。それはまさに私の愛しい人だった。




「渡……」


「桃次郎またお主は女の尻追いかけていたのでござるか?」


「僕は彼女に道案内を頼まれただけだよ。運命の出会いなんだ。邪魔しないでくれないか?」


「鬼の国に連れ去られた幼馴染を取り返すと思い出したように言って旅立ったのではなかったか?」


「彼女はきっと鬼の国で幸せにやっているだろう。僕はこの出会いを大切にすることにした」




 桃次郎が私の肩に手を乗せる。もう自分の物だと言わんばかりの態度だ。




「さようでござるか。行かないのであれば仕事しろ」




 渡は桃次郎を私から引き剥がした。渡の腕の中で桃次郎はじたばたとしている。




「そこの女。拙者の部下が失礼した。もう行っていいぞ」


「あ、あの」


「何でござるか……?」


「な、何でもないです。ありがとうございます」




 私は渡と桃次郎一派に笑顔で手を振った。


 そのまま渡はどんどん小さくなり、行ってしまった。


 月都に来れば彼がいるのではないかと思ったが、やはり居たようだ。




「うん、元気出た」




 一目見る事が出来れば充分だ。


 下手に絡んで彼を私の戦いに巻き込むつもりはない。




「さよなら」




 私は彼等とは反対方向に歩き出した。

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