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お掃除クエスト  作者: ちゃー!
鬼ヶ島編
39/107

厨房清掃

 出勤すると、そこでも珠晴達に牡丹とのことを根掘り葉掘りと聞かれる羽目になった。


「柚子葉ちゃん、太師と恋仲なんだって? 詳しくおーしーえーてー」


 珠晴と鈴雨が美雲を窘めるが、それは私に押し倒さんばかりの勢いで迫ったことに対してであって、話題自体を止めるものではなかった。

 出会いや馴れ初め等聞かれたが、牡丹に止められているから詳しくは話せないことにして、大雑把なことを曖昧に答えやり過ごした。

 あまり詳しく言うと嘘がバレてしまうからね。


「でも、まさかあの太師が白姫様以外を好きになる日が来るとはねぇ」


 話題が落ち着いた際に、珠晴が感慨深げに呟いた。

 白姫? 今白姫様って言ったよね。


「白姫様?」

「そう。あれ、知らなかった? 太師と白姫様は旧くから恋仲なんだよ。有名な話なんだけど」


 太師、有名な話らしいですよ。


「太師から聞いてはいたけど、みなさんが知ってるなんて思わなくて」

「知ってるよ、バレバレだもん」


 これは、本人だけが上手く隠せていると思っているパターンか、周知の事実だから、北尚書は私に“牡丹には百合がいる”とあっさり言ったのか。ここではそれが常識なのだ。

 一応百合との仲を秘密にしておく変わりに雇ってもらっているから、もし牡丹がこのことを知ったらクビになる可能性が高いな。今まで見て見ぬ振りをしていた皆が私の登場で牡丹に何か吹き込む可能性は充分ある。

 それまでに掃除婦としてなくてはなない存在にならなければ、無職、家なしになる未来しか見えない。


「柚子葉さん」


 鈴雨が私にこっそりと耳打ちしてきた。


「なんでしょう?」

「北尚書には気を付けた方がいいですよ、あの方は太師のこととなると気が立つところがあるから、もしかしたら意地悪なことを言われる可能性があります」

「ありがとうございます、気を付けます」


 もう、遅い。今朝喧嘩をふっかけられてしまった。

 でも、花梨は牡丹付きの女官だから、主の女関係に厳しいのは仕方ないだろう。

 こんなどこの馬の骨ともわからない女、普通警戒するよね。


 私達はこの話題がひと段落した後も雑談に花を咲かせながら仕事の準備をした。

 準備が整い、それぞれの担当の清掃場所へ向かう。

 私は今日は鈴雨と一緒に厨房の清掃をすることになった。


「すごい汚れですね……」

「そうなのよ、このお屋敷だけでお台所が二つあってね、もう一つのお台所を使っているときに片方をお掃除するのだけどいつもこんな感じで一日中かかって大変なの」


 天井には煤があり、壁は所々カビが生えているところもある。床は油でベトベトだ。

 この世界でも揚げ物をするのだろうか?魚を焼いた油だけじゃこうはならないよね……。料理なんて調理実習くらいだからよくわからないけれど。


 まずは大量にお湯を沸かして漬け洗いできるものはお湯と洗剤漬けにして放置しておく。

 次は壁や天井についた汚れだ。天井や壁の黒ずんでいる汚れで固形物となっているものは片っ端からこそげ落としていき、その後はアルカリ洗剤を塗布していく。少し放置した後にそれを高圧でこそげ落としていった。その時に出る汚水は、鈴雨に都度水の動きを操作し窓から排水溝まで落としてもらった。

 仕上げに雑巾で汚れを拭き取り天井と壁の掃除は終わらせた。

 水周りのカビは、私の殺菌の能力ですべて一瞬で始末し漂白剤で綺麗にした。

 そんな感じで掃除して行き、残りは床だけになった。

 洗剤を塗り、柔らか目のタワシをつかって汚れを落とし、その汚れはバキュームの能力でゴミ袋に吸い取った。

 仕上げに床にはワックスを塗り完成だ。

 ここは汚れが酷いからワックスを塗った方が床を保護出来ていいだろう。

 私は掃除し終わった部屋を見渡した。厨房は見違えたようにピカピカになっている。


「柚子葉さんすごいわぁ~、こんなに綺麗になったのに時間が全然掛かってない」

「そんな! 鈴雨さんと一緒だからですよ、私なんて全然」

「ねぇ、柚子葉さんが最後に塗っていたものは何なの?」

「あぁ、ワックスです。透明な膜で表面を固めるものといいますか。ここは油汚れが酷いので床を保護しようと思って使いました。あとつやも出てパッと見綺麗に見えますし」

「わっくす……、そんなものもあるのね」


 鈴雨は不思議そうな顔で床を見ていた。

 この世界は魔法が盛んな世界のため、化学的な知識が乏しい傾向にある。化学を進化させるより魔法の技術を深めた方が良いのだ。

 実際魔法で冷房や暖房の変わりになるものもあるし、水道や下水もあり、明かりも火の魔法の道具で簡単に付く。

 エネルギーの調達に苦労することもないこの世界は、私から見てもとても便利で暮らしやすい。

 しかしその分科学や化学が進化しなかった。だから日本基準の私の能力はかなり珍しがられるのだ。


「じゃあ、ここは終わったから二人を手伝いに行きましょうか」

「はい」


 厨房を出ようとした時に、鈴雨の服が調理道具を掛ける金具に引っかかってしまった。

 鈴雨はそのまま体勢を崩し、尻餅をついてしまったが、その時に服が思い切り引っ張られ彼女の大きな胸が外気に晒されてしまった。


「いやぁあぁぁぁ」

「大丈夫ですか!?」


 私は鈴雨の服を金具から外して元に戻してあげる。


「柚子葉さん、ありがとうございます、殿方がいなくて良かったわ」

「ええ、本当に」


 そこで、私は気がつくべきだった。そうすればこの後に起こる悲劇を防ぐことが出来たのに……。


 その後、珠晴と美雲と合流してからがさらに酷かった。

 二人は庭で枯葉掃除をしていたため、それを手伝ったのだが、その最中に突然、私以外の三人のズボンが地に落ちた。どうやら偶然三人ともベルトが緩んでいたらしい。

 美雲は地に落ちたズボンが足に引っかかり大股開きでそのままこけてしまい、珠晴は鈴雨の上に覆い被さるように倒れこんでしまった。その際に珠晴の手が鈴雨の双丘をがっちりと掴んでおり、それが変形して非常にエロい。

 思わず美少女達の痴態に見入ってしまったが、助けを求める声に我に返り即座に彼女達の元へ駆けつけた。

 仲間達の体制を整えるのを手伝い、数分かけ元の通りの格好へ無事戻すことが出来た。


 そこで私はポケットの中にいる、どす黒いオーラを放つ奴の存在に気が付いた。

 渡だ。

 すっかり忘れていたけれど、渡は何故かラッキースケベを引き起こしやすい体質なのだった。

 多分これも、奴が私のポケットにいるからこそ起こった事故なのだろう。

 申し訳ないけれど、明日以降渡は留守番だな。





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