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お掃除クエスト  作者: ちゃー!
異世界へ
30/107

死因の考察

 あれから三人は落ちつかない様子で一夜を過ごした。

 真朱の悲鳴を聞きつけて来た宿の従業員には、虫が出たと瑠璃が言って誤魔化した。

 事を大きくしたくないため、鴇の遺体の処理を夕霧と瑠璃で粛々と行った。真朱は泣きやまず、使い物にならないため、瑠璃の部屋で休ませておいた。

 夕霧は瑠璃も部屋で休むように促したが、瑠璃がどうしても手伝いたいと食い下がり、夕霧は仕方なく手伝いを許可をした。ただし、気分が悪くなったらすぐに言うように忠告をして。


 夕霧が鴇の肉片を一つ一つ火の魔法で燃やし、瑠璃が血液の跡を拭き取っていく。一気に燃やすと部屋にまで被害が及ぶので地道にこなしていく。

 鴇の首は布で包んである。これだけはどこかに埋めてあげたいと皆が思ったからだ。


「これは……?」


 床に這い蹲り、血の処理をしていた瑠璃が金色に輝く米粒くらいの塊をみつけた。

 何かの欠片だろうか? それを見て何か引っかかりを覚えた瑠璃は、それを黙って懐に忍ばせた。


 全ての片付けが終わったのが、発見から数時間後。

 死体処理後は真朱も呼び、残った汚れを魔法を駆使して取り除き、なんとか部屋を違和感のない状態にまで戻すことが出来た。


 次の日は早々に宿を出て、鴇の埋葬に向かった。みな力がなく俯き加減で、そこに会話はなかった。

 真朱が土の魔法で土を掘り、その中に鴇の首を包んだ布ごと入れた。

 そこで、真朱がまた泣き出した。


「鴇君、ごめん、一人にしたばっかりに」


 瑠璃が真朱の背中をゆっくりとさすってあげる。

 ただ、今はあまりのんびりもしていられないため、真朱を促し土を戻させ、すぐにその場を後にした。

 昨晩は休む間もなかったため、みな目の下にクマを作り、げっそりとしていた。

 体を休ませ、早急に体力を回復しないとならないため、次の町の宿を目指して、涙枯れぬうちに、皆はその場を後にした。


 ※


 次の町に辿り着き、一行はまず宿へと入った。

 それぞれが部屋で休み、落ち着いた後に、三人は一部屋に集まり今回の件について話し合っていた。


「鴇君は鬼に殺られたんだよ! 僕達が敵だってバレていたんだ」


 真朱が震えて、頭を抱えながら呟いた。


「私は違うと思う」


 瑠璃は、冷静な眼差しで真朱の考えを否定した。


「鴇君の部屋の扉の鍵は壊されていなかった。宿の戸は私達の世界でいうオートロック。土の魔法の応用で鍵が自動に掛かるようになっていて、鴇君が自ら開けない限り部屋に入ることは、スペアの鍵を使わない限り不可能。扉を壊してしまえば進入も可能かもしれないけれど、傷一つ付いていなかったし、部屋も鴇君の遺体以外に乱れはなく、争った形跡が一つもなかった。だからこれは鴇君の顔見知りの犯行である可能性が非常に高いと私は思うの」

「でも、顔見知りって言ったら、ここにいる三人の誰かがってことになっちゃうよね……」

「そうとも限らないよ、例えば宿の人や今まで私達が出会った人が訪ねてきたら、鴇君は鍵を開けると思う」

「そ、その可能性もあるか……」


 真朱は俯いて、右手を額に当てながらゆっくりと首を振った。

 押し黙った真朱を一瞥し、瑠璃は顔を夕霧へと向けた。


「夕霧はどう思う?鴇君が何の抵抗もなしに簡単に殺されてしまうなんてあり得るのかな?」

「どうでしょうね、鴇君の遺体は全て千切られたかのように断面が不揃いでした。もたもたと手で千切るわけがないのでおそらく魔法の類いでしょう。しかし、真朱さんのトップレベルの魔法ですら、鴇さんは耐えますし、攻撃をされれば抵抗します。複数人に囲まれたというなら別ですが、あの部屋ですからね……」

「私も複数犯はないと思う。二人ならともかく、それ以上の人数をあの部屋に招き入れるとは思えない。知り合いだとしても一旦部屋からは出るはず。鴇君が亡くなったのは部屋の布団の上で、それも抵抗の余儀なく一瞬の出来事だたと予想出来るから多分犯人は単独もしくは二人程度なんじゃないかな」

「では、従業員に成り済まし、部屋の点検のためにと言い、複数人で訪れた可能性はどうでしょう」

「でも、それなら何故鴇君は、部屋の真ん中の布団の上で亡くなっていたか理由がわからない。血の位置からその場所で破裂するように亡くなったのはほぼ間違いないよ。普通はそういう場合、邪魔にならないように隅の方にいるか、部屋を出るかするよね」

「作業を手伝ってくれといわれたのかも」

「でも魔法なら部屋の隅にいようが、中心にいようがあの程度の距離感なら威力に違いは出ないでしょう? わざわざ部屋の中心に呼ぶ必要はないと思う」

「確かに、それもそうですね。複数犯はあり得ないと。しかし、単独で鴇君を内側から破裂させる程の魔法ですか……、想像もつきませんね」


 真朱は、二人のやり取りを茫然と聞いていた。

 仲間があんなやられ方をしたのに、冷静に犯人の推理合戦に花を咲かせている二人の図太い精神力に驚いたのだ。

 身の安全のためには早急に犯人を特定すべきなのだが、精神が疲弊しており何も考える気にならないのは真朱だけのようだ。


「ねぇ、真朱っち。ちょっと聞いていい?」

「えっ? な、何?」


 いきなり声を掛けられて真朱は動揺し、体が仰け反ってしまった。


「大丈夫?」

「う、うん、平気。何?瑠璃ちゃん」

「魔法のことなのだけど、真朱っちは鴇君を首だけ残して破裂させることが出来る魔法に心当たりある?」

「え、どうだろう……」


 真朱は瑠璃のいきなりの問いかけに、未だに呆けている頭を回転させながらぽつぽつと答えた。


「金の魔法はただの銀行魔法だから除外するとして、そうだな……水や土の魔法は瞬発的な破壊力を出せないからあんな殺し方はできないだろうな。一番可能性が高い火の魔法だけど、使ったら必ず焦げた臭いが必ずするし……残るは木の魔法か…………あっ!」

「木の魔法?」

「うん、そうだ……木の魔法なら……」


 真朱は何かに気が付いたように顔を上げた。


「体の中に木の魔法の核となる種を仕込んで、それを一気に成長させれば体の中から破壊出来る。しかもバラバラに……鴇君の首はその時の樹の角度で上手く千切れたと考えれば辻褄が合わないかな」

「でも、いつどのタイミングで種を植えたのかな?」

「確かに、種を植えるのは痛みを伴います、真朱さんの説も納得できますが、普通に眠ったくらいでは、鴇君に気付かれてしまうのでは?」


 夕霧も瑠璃に続いて疑問を呈す。

 木の魔法は樹木を発生させることが出来る魔法だ。戦闘では妨害ぐらいでしか使えない魔法だが、強力な“種”を植えつけることが出来れば話は別だ。

 魔力を蓄えた種を体内に埋め込み、それが時限式で暴発するのを待つ。威力が強ければ強い程、暴発までの時間は掛かる。簡単なものなら数時間、高威力のものだと発動までに何年も掛かることがある。

 しかし、この種は埋め込む時に痛みを伴い、相手を気絶や昏睡状態にしてからでないと発動しない、かなり使い勝手の悪い魔法なのだ。


「僕達がこの世界に来た時はどうかな?」

「私達が来た時?」

「そう、あの時なら気絶していたし、種を埋めることも可能なのではないかな」

「でも、それだと何でその場で首を切らずに、こんな回りくどい殺し方したのかわからないよ」

「それもそうなのだけど、後は、ただのイタズラの可能性もあるよ」

「イタズラ?」

「そう、ただそこに人がいたからやる。あまり認めたくはないけれど、遊び心で人を殺す人もいるし……」

「うーん……、そうだよねぇ……、ああーダメだ」


 瑠璃は頭を抱え、左右に首を振り、そして大きな溜め息を一つついた。


「情報が少な過ぎて、可能性の取捨選択ができない」


 瑠璃は悔しそうに下唇を噛んだ。“可愛い瑠璃ちゃん”の皮はもう被ってはいない。

 冷静に見えてそれだけ瑠璃も追い詰められているのだろう。


「夕霧、私達これからどうしたらいい?正直犯人の特定が出来ない今、私はなるべく安全なところに引き返したいのだけれど?」

「ぼ、僕もそうしたい。鴇君なしで鬼退治なんて出来っこないし」


 瑠璃と真朱の意見に、夕霧もゆっくりと頷いた。


「そうですね、一度、(ひとのくに)へ戻り、体制を整えてから再度雪羅へ挑むことにしましょう。」


 全員の意見が一致し、三人は人の領地へ引き返す方向で準備を進めた。


 しかし、翌日、彼らは再度行き先を鬼ヶ島へと設定し直した。

 それは彼らが、宿の食堂で朝食を取っている時に、隣のテーブルの旅人達の会話から、ある噂を耳にしたからだ。




 鬼ヶ島の時雨氏の屋敷で凄腕の掃除婦がいる――、その名をユズハというと――









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