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お掃除クエスト  作者: ちゃー!
異世界へ
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犠牲~ある少女の本心

 瑠璃達は星の村に帰って、村長の家に集まっていた。


「畜生、俺のせいだ。俺があんなこと言わなければ……」


 柚子葉が妖に食べられてから、鴇はずっと涙を浮かべながら、己の行動を責めていた。


「そんなことないよ、あれは事故だったんだよ!」


 瑠璃は鴇の横で、こんな感じに今日はずっと慰め続けていた。

 日は暮れ、外は美しい星空が広がっている。瑠璃は面倒臭くて仕方がなかったが、“クラスのアイドルでみんなに好かれる優しい良い子な瑠璃ちゃん”のイメージを崩すわけにはいかないため、嫌々ながらも鴇を見捨てず、傍らで慰め続けた。


 いつまで、この男はこんなうじうじしているのだろう。仲間がいなくなったのはショックだけれど、過ぎたことをとやかく言っても無意味なのに。

 せめて、真朱のように黙って膝を抱えて落ち込んでくれれば、とても静かで有難いと瑠璃は思った。

 鴇を慰めながら、瑠璃は柚子葉が妖に食べられた時のことを思い出した。


 瑠璃と真朱が夕霧に連れられ、高台から妖を倒し降りてきたときだった。瑠璃は、柚子葉が一人でどこかに行こうとしていることに気がついた。

 瑠璃は、掃除婦とかいうダサくて弱い職業の柚子葉が、何故輪から外れて勝手に行動するのかまったく理解ができなかった。

 面倒だけど仕方がない。

 瑠璃は優しいし皆んなのまとめ役なのだから。瑠璃は柚子葉にどこに行くのかと声をかけた。

 その瞬間、去って行こうとする柚子葉の前に、とても大きな蛙の妖がどこかから飛んできて現れた。

 夕霧が言うには、どうやら“大王蛙”という妖らしい。

 その直後、大王蛙は、柚子葉を一口でペロリと食べてしまった。

 唐突な出来事に、みんなすぐに反応することが出来ず、大王蛙は柚子葉を食し満足したのか、踵を返し、すぐにどこかへ飛んで去っていってしまっていた。


 最初に動いたのは、鴇だった。

 鴇が雄叫びを上げ、大王蛙を追うように走り出そうとしたが、夕霧が鴇を羽交い締めにして止めた。


「いけません、鴇君。大王蛙はここにいる者ではまだ倒せません。返り討ちに合うのが関の山です」

「離せ!! 唐金助けないと死んじまう!!!」

「もう、無理です!! 柚子葉さんが食べられたの見たでしょう! 助けることは不可能です!」

「!!」


 鴇は、夕霧の不可能という言葉に反応し、膝から地面へ崩れ落ちた。


「俺のせいだ……俺があんなこと言わなきゃ……」


 瑠璃は、鴇が柚子葉に何を言ったのかはわからなかったが、多分何か酷いことでも言ったのだろうとその様子から理解した。それが原因で柚子葉は、さっき一人で勝手に行動したのか。

 瑠璃は柚子葉の行動が腑に落ちた。


「俺が殺したんだ!!俺がぁあぁぁ」


(あー、うるさいなぁ……)


 柚子葉が食い殺されて瑠璃はとても悲しかったが、騒ぐ鴇を見ていたら、何だか悲しい気持ちも冷めてしまった。


 それから、ずっと鴇はこんな感じで、自分の行動を後悔して泣き喚いている。悲劇のヒーローぶって鬱陶しい。

 大王蛙が食べたのが、柚子葉ではなく鴇だったら良かったのにと、この時、瑠璃は心底思った。

 鴇は瑠璃にとって、この中では一番邪魔な存在だった。


 瑠璃は昔から、好きでもない男に好かれることがよくあった。

 瑠璃は可愛いから好かれるのは仕方ないことだし、それは美しく生まれた者の使命だと考えていたが、それでも、不愉快だし、面倒臭いし、迷惑なことには変わりはなかった。

 瑠璃のイメージを崩さないように、興味のない男子達からの告白を断るのは、とても骨が折れる作業だった。

 周りが、瑠璃に片思いしている相手の応援をし出したら、余計大変だ。

 振ってしまうとその一派を敵に回してしまう可能性がある。だから、そういう時はその一派にだけ、好きな相手がいると嘘をつくのだ。

 好きな相手は身近な者ではダメだ。遠くに引っ越した幼馴染とか、他校の先輩とかふわっとした相手がいい。

 その方が丸く治めやすいのだ。


 瑠璃は鴇が自分に思いを寄せていることは知っていた。だから鴇が消えてくれれば、この疲れる一連の作業をしなくて済んだのに、と心の中で残念がった。


 夜も遅くなったので、落ち込んだ鴇を部屋まで連れて行き、あとは同室の真朱と夕霧に任せた。

 瑠璃は、やっと鴇から解放された。


 真朱と夕霧で明日までに鴇を使えるようにしてくれることを瑠璃は願って、その日は眠りについた。


 しかし、次の日も鴇は暗く落ち込んでいた。

 真朱と夕霧は役に立たなかったようだ、面倒だが仕方がないので瑠璃が行動する。


「鴇君……」


 瑠璃は鴇の前に立ち、彼の顔を思い切り平手打ちした。頬を叩く音が部屋の中にこだました。


「鴇君いい加減にして! 後悔したってユズちゃんは帰って来ないんだよ!! そんなことより今後ユズちゃんのような目に誰も合わせないように強くなろうよ!」


 瑠璃は、上手く優等生的意見を言えたと、我ながら感心していた。

 鴇は突然のことに驚いている。鴇を元気付けるには、あと一押しだ。


「ねぇ、鴇君……、出発する前言ってくれたよね。私のことを守ってくれるって、私すごく嬉しかったんだよ。ねぇ、鴇君、前を向いて? 私を見て」


 瑠璃は鴇の両頬を両手で包み込んだ。

 鴇の目からは涙が流れている。


「杜若……」

「ユズちゃんを守れなかった分、私を、みんなを守って。私はそうするよ。前を向いて強くなって、より沢山の人を助けたい。ユズちゃんの犠牲を決して無駄にはしない」


 鴇は無言で瑠璃の言葉に頷いた。

 完全に立ち直るかはわからないが、これで使えるようにはなるだろう。

 ずっと暗かった真朱も、そのやり取りを隣で聞いていて気分が回復したのか、瑠璃と鴇の方へ歩み寄ってきた。


「その……提案があるんだけど、瑠璃ちゃん、鴇君」


「なに? 真朱」

(面倒なこと言わないでよ)


「あのさ、柚子葉ちゃんのお墓を作ろうよ」


 真朱は二人を真っ直ぐ見つめ、力強く言った。


「そう……だな」

「それなら、私も賛成するよ」


 真朱の提案を瑠璃も鴇も受け入れた。

 瑠璃はそんなことしなくても気持ちの切り替えが出来るが、他の二人がその程度で気が済むのであれば、その方がいい。


 夕霧に村長と交渉してもらい、星の村の墓地に無償でお墓を建てていいということになった。

 瑠璃達はそのお言葉に甘え、そこに柚子葉のお墓を建てさせてもらった。亡骸は大王蛙が食べてしまったため形だけのお墓だけれど……


 みんなで柚子葉のお墓に合掌し、思い思いに天国の柚子葉へ祈りを捧げた。


 死者を出してしまった責任をとるといい、夕霧も私達の旅へついてくることになった。


 実は、夕霧のことがちょっと気になっていた瑠璃は小さくガッツポーズをとった。

 夕霧と近づくチャンスをくれた柚子葉には、とても感謝しなければいけない。




 妖に食べられてくれて有難う、ユズちゃん




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