表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お掃除クエスト  作者: ちゃー!
異世界2週目
104/107

女体化

「上手くいったな」


 桃次郎はうんうんと首を二回縦に振った。


「何で!? 女? 俺が?」


 鴇は混乱し、涙目だ。

 スポーツマンらしく筋肉の付いた直線的な大きな身体が、守ってあげたくなるような華奢で曲線的なものになり、男らしい突き刺すような短髪が長い絹のような細い髪になってしまったのだから。


「中々美人じゃないか。連れて歩くには申し分がない」


 桃次郎は鴇を上から見下ろし、品定めするかのように顎を撫でた。


「ふざけんな! 俺を元に戻せ!!」


 鴇は桃次郎に向かって飛びかかろうとするも、身体が動かないらしく悔しそうに口だけで文句を続けた。


「お前が僕より強くなったらな、そうしたら下僕達も解放するし、お前も元の身体に戻そうじゃないか」

「くっ……」


 桃次郎に呆気なく敗北した鴇は、言い返せなくなってしまったようだ。

 鴇は見た目こそ軟派だが根は真面目だ。強さを理由にされてしまうと、強くなればいいという方向に思考がシフトしてしまうのだろう。


「そうかよ、受けて立とうじゃないか。俺が強くなればいいんだろ」

「なれればね」


 桃次郎と鴇が睨み合う。

 二人の中で話がまとまってしまったようだ。

 しかし、何と鴇を助けたい私は肩の上の渡に助けを求めた。


「渡、どうしよう。鴇君が……」

「己から勝負を仕掛けて敗北した男の行く末でござる。命があるだけマシでござろう」

「それはそうだけど……」

「それに一人でこの世界を旅するよりかは安全でござろう。桃次郎はそんな簡単に家来を捨て駒にはしない。家来の条件に見合うものが中々いないからな」

「うーん、そういう考え方もあるかな」


 鴇一人で行動するよりは、この世界の住人が付いて回ってくれるなら、確かにその方が安全かもしれない。

 仲間の捜索は頼めなさそうだけれど、それは当初の予定通り私が一人でやればいいだけの話だ。


「鴇君!」

「唐金……」


 鴇は私を見ると申し訳なさそうに、頭を下げた。


「鴇君……どうする?」

「俺の事は心配すんな。強くなって見返してやるさ」

「助けなくていい? アテがないわけではないのだけど」

「いい、負けっぱなしは悔しいからな。正々堂々とやるだけさ」


 桃次郎は輝夜の命令ならば聞く耳を持つ。鴇が望むのなら輝夜に交渉してみようと思ったけれど、余計なお世話だったようだ。


「桃次郎」鴇は桃次郎をキッと睨みつけた。「約束だぞ」

「ああ、勿論だ。できればな」



 桃次郎と鴇の間に再度火花が散った。


「柚子葉、行くでござる。拙者達もあまり時間がない」

「そうだね」


 どうしても鴇が気になってしまうが、今私が鴇に対してできることは何もない。


「鴇君……鴇ちゃん?」

「鴇ちゃんはやめろ」

「ごめん、あまりにも可愛いくなっちゃったから」

「可愛い言うな」


 目の前の美少女は、迫力のない声で頬を膨らませた。

 小動物的な庇護欲をかきたてる強気な美少女に、私の頬は緩みそうになる。

 可愛い子を見るとデレデレしそうになるのは、私の悪い癖だ。


「私、そろそろ行くけど、大丈夫?」

「いいよ、こっちはこっちで何とかすっから」


 言動は鴇なのだけど、見た目が美少女だから男言葉に違和感を覚えてしまう。

 こんな事言ったら怒られてしまいそうだ。


「柚子葉さんも僕と一緒に旅に出ませんか? そこの小さい男よりは役に立ちます」


 桃次郎が、私と鴇の間に入り、私の手を取って言った。


「しばくぞ」


 渡が聞いたことないようなドスの効いた声で、桃次郎を威嚇した。

 桃次郎は「お前には聞いていない」とこれまた負けずに睨みつけた。


「ご、ごめんなさい、桃次郎さん。私は渡と命を切り離さないといけないから」

「ああ、確かに、こんな小さい男と命が繋がっているのは不安ですよね」

「小さいだと!?」


 渡は私の肩から飛び降り、元の人間の大きさに戻った。


「拙者の本来の大きさはこれでござる。桃次郎の頭が下に見えるでござるなー」

「ふんっ、小さい時と足して割ったら僕よりチビだろ」

「ま、まあ、二人とも」


 私は睨み合う渡と桃次郎の間に割って入った。

 このままだと言い争いが始まりそうなので、私は無理やり渡の手を取り、行先へと引っ張っていった。


「ゆ、柚子葉」

「渡、行こう。急がなきゃならないし」


 私は去り際に鴇を一瞥した。軽く手を振ると彼も手を振り返してくれた。


「またな、唐金」


 桃次郎に連れられて、鴇は私達と反対方向の月都へと旅立っていった。


 私と渡は妖を倒しつつ鬼ヶ島まで続く地下道を目掛け再度森を進んで行く。


「地下道の入り口はここら辺のはずでござる」


 小さくなった渡は私の肩の上から、私が広げた地図を覗き込んだ。

 周囲を見渡すも、出入り口になりそうな場所はない。ただ、草木が鬱蒼と茂っている森だ。草木に隠れて一見してわからない可能性がある。

 私が探そうと一歩を踏み出したとき、踏み出した右足が落ち葉の中へと沈んでいった。


「きゃっ」


 落ち葉の下は人体を支える力がある足場がなく、落とし穴のようになっていたようだ。


「柚子葉!?」

「ヤバっ……いやーーーー」


 気がついた時にはもう遅く、バランスを崩した私はそのまま落とし穴へと落ちていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ